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Victor ZERO-L10
4WAY SPEAKER SYSTEM ¥800,000ビクターが1985年に発売した大型のスピーカーシステム。1979年以来の「Zeroシリーズ」の歴史の
中でも最高峰といえる機種で,「Zeroシリーズ」の到達点ともいえる逸品でした。「Laboratoryシリーズ」
の1台として,受注生産で販売されていました。ZERO-L10は,大型の4ウェイスピーカーで,各ユニットをセラミック系の素材で揃えた点が大きな特徴
でした。
ウーファーは,39cm口径で,ファインセラミック・ファイバーをカーボン・クロスでサンドイッチした3層構造
のコーンで,高い剛性と適度な内部損失を両立していました。ミッドバスには,同じくファインセラミック・フ
ァイバーとカーボン・クロスによる3層構造の21cm口径のコーン型ユニットを搭載し,中音域のフラットなレ
スポンスを実現していました。
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スコーカーには,多結晶人工宝石振動板,ピュア・ファインセラミック・ダイアフラムによる6.5cm口径のドーム
型ユニットを搭載していました。この振動板は,世界で初めて金属素材を用いていない単層構造の高剛性・高
音速のセラミックドームで,ハードドームに従来使われていた金属よりも,ルビーやサファイアに近い物性を持ち
金属臭のない純度の高い音を実現していました。トゥイーターには,同じくピュア・ファインセラミック・ダイアフラ
ムによる3.0cm口径のドーム型ユニットを搭載していました。エンクロージャーは,高さ1mを超える大型のものとなっていました。フロントバッフルは,カラ松20積層による
板厚38mmに及ぶもので,それにローズウッドの単板を真空貼りした美しいものでした。さらに形状的にラウン
ドバッフルをしのぐ優れた回折特性を持つというスーパー楕円バッフルを採用していました。ユニットの配列と
相互の間隔は,コンピュータ回析にもとづいたもので,なめらかな曲線を描く「G(Gliding)ライン」と称していま
した。スーパー楕円バッフルとGライン配置により半球状の美しい音の放射パターンとなり,音像定位と音場再
現性を高めていました。
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ネットワークは外乱に強い平衡型とし,厳選された素子により構成されていました。内部配線材も極太のOFC配
線材が使われ,ハンダを排したカシメ接続としていました。吸音材も振動によるノイズの少ない100%ウールが
使われていました。
背面の入力端子は金メッキが施され,ストラッピングバーで2つの端子を結合した形で,ウーファーと他のユニット
の端子が独立している,バイワイヤリング,バイアンプ対応となっていました。
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以上のように,ZERO-L10は,ZEROシリーズの集大成といえるモデルで,W&D(ワイド&ダイナミック)思想の
もと,セラミック技術を投入したユニットをはじめ,凝りに凝った内容を持ったスピーカーシステムでした。大型のスピ
ーカですが,まとまりがよくくせのないクリアーな音を持った高性能スピーカーでした。ZEROシリーズの頂点として
記憶に残る1台だと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎先端素材振動技術の粋,
世界初のピュア・ファインセラミック
ダイアフラム・ツィーター&スコーカー。
◎スーパー楕円バッフルと
Gライン配列ユニットによる
クリアーな音像定位,音場再現。
◎バイアンプ駆動にも対応,
2ウェイの金メッキ入力端子。
◎高S/N・低歪率の平衡型ネットワーク
など細部まで周到な音質追求。
型式 | 4ウェイ・密閉型 |
スピーカー・ユニット | ウーハー :39cmファインセラミック
ミッドバス :21cmファインセラミック スコーカー:6.5cmピュア・ファインセラミック・ドーム ツィーター:3.0cmピュア・ファインセラミック・ドーム |
最大許容入力 | 250W |
瞬間最大入力 | 500W |
再生周波数帯域 | 20Hz〜50,000Hz |
出力音圧レベル | 93dB/W(1m) |
定格インピーダンス | 6Ω |
クロスオーバー周波数 | 230Hz/950Hz/6,600Hz |
寸法 | 1005H×580W×470Dmm |
重量 | 105.0kg |
※本ページに掲載したZERO-L10の写真・仕様表等は1986年3月
のVictorのカタログより抜粋したもので,日本ビクター株式会社に著作
権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をす
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