TU−X1の写真
SANSUI TU-X1
Super Integrated AM/FM Stereo Tuner ¥135,000
サンスイが1979年に発売した高級アナログチューナー。ヘビー級の高級プリメインアンプAU−X1と
ペアとなる高級チューナーとして発売され,その外形寸法はAU−X1と同じという,大型のチューナー
でした。重量も何と16.2kgもあるというヘビー級でした。そして,サンスイ最後の高級アナログチュー
ナーとなった1台でした。

TU−X1の大きな特徴は,FMチューナーとAMチューナーが完全に独立した設計で,AMチューナー部
に対しても並々ならぬこだわりが見られることでした。何とチューニングノブからダイヤル指針まで完全
に2系統ありました。写真の左側のノブがAM専用で,下側のダイヤルスケールとスケールの下部の赤
い指針がAM専用でした。右側のノブがFM専用で,上側のダイヤルスケールとスケールの上部の緑色
の指針がFM専用になっているという設計でした。4つあるメーターも,AM/FMそれぞれ独立で,左側
2つがAM用のチューニングメーターとシグナルメーターで右側2つがFM用のチューニングメーターとシグ
ナルメーターになっていました。このように,完全に2つのチューナーを1体化した設計で,内部も上半分
がFMチューナーで,下半分がAMチューナーという形に完全に分離されていました。

AMチューナー部,FMチューナー部独立の内部

FMチューナー部は,フロントエンドが,デュアルゲートMOS FETの2段RF増幅回路,デュアルゲート
MOS FETミキサー,2段バッファーアンプ付きの局部発振器,ミキサー用のバッファーアンプで構成さ
れていました。FETに対しては,広帯域AGC回路を組み合わせてダイナミックレンジを拡大し,FETの
クリップによる混変調や相互変調を防いでいました。また,局部発振回路のブロックは湿度に対する安
定度を高めるため,ガラスエポキシ基板にマウントされ,さらに厳重に二重のシールドを施され,局発の
漏れなどを徹底的に防止していました。高周波同調回路には,羽を一枚ごとに調整してトラッキングエ
ラーを皆無にした高精度な周波数直線型7連バリコンを搭載し,2つの段間同調回路を結合したダブル
チューン方式として高周波段での群遅延特性のフラット化を図っていました。
 

周波数直線型7連バリコン
FMチューナーのIF回路は,トリプルベース・ダーリントン差動ICを採用し,IF10段,全段をダーリントン
差動で構成してSN比を高め,高性能4ポールLCフィルター4個との組み合わせで位相伝達特性を改善
していました。IF帯域は,NARROW/WIDEの2段切換となっていて,NARROWポジションには,LC
フィルターと特性がシャープで位相特性の良いSAWフィルターを搭載し,85dB(400kHz離調時)の高
選択度を実現していました。WIDEポジションには,LCフィルターを3段接続して,55dB(400kHz離調
時)の選択度を実現していました。

TU−X1では,AM放送に対してもFMと同格に扱い,高性能通信機並の非常に凝った設計が施されて
いました。オーディオチューナーとしては,世界初のPLL方式による同期検波方式を採用し,優れたSN
比を実現していました。同期検波は,希望放送局の周波数に,周波数と位相を同期させて検波する方式
で,隣接した妨害局の排除特性に優れ,帯域を広く取ることができるので優れた音質を実現していました。
TU−X1では,2組のPLL回路を用い,入力のIF信号に全く同期したスイッチング信号を引くことで検波し
ていました。この方式により,2基ある位相比較器からの出力はUSB(上側波帯)とLSB(下側波帯)に
分かれており,混信のない周波数がある方の側波帯を選択することで効果的に混信を除去できるビート
キャンセラーがついていました。AM高周波部には,FM部と同様のダブルバランス型ミキサーを採用し,
大型の精密3連バリコンを搭載していました。また,スタティックシールドという厳重なシールドが施された
高感度のバーアンテナを装備し,蛍光灯などの雑音にも強い設計でした。

オーディオ出力には,FM/AMそれぞれ専用のプッシュプル・ドライブDCアンプを搭載し,高音質化を図
っていました。このように,TU−X1はFMだけでなく,おまけ的存在になりがちなAMに対しても徹底して
こだわり高性能高音質のFMチューナーとAMチューナーを一体化したといえるチューナーでした。サンス
イの渾身の力作で名機だったと思います。これほどこだわったチューナーは2度と現れないでしょう。            
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


 

音質の徹底追及。真のHi-Fiチューナー。
 

●FMチューナー部●


◎フロントエンドに,リニアリティ最適化回路を採用。
◎高周波同調段から検波段に至るまでの総合群遅
  延特性を平坦化。
◎音の決め手,動的群遅延特性を改善したIF部。
◎Wide/Narrow2段切換え。狭帯域回路に
  SAWフィルターを採用。
◎超広帯域ハイパワードライブ・レシオ検波器と
  新開発の検波コイルを採用。
◎スルーレイト±200V/μsのプッシュプル・ドライブ
  DCアンプをコンポジェットアンプに搭載。
◎多局化に備え,アジャセント・チャンネルフィルター。
◎パイロットキャンセラー回路を採用。
◎オートマチックノイズフィルターを新開発。

 
 
 

●AMチューナー部●


◎AM同期検波方式により
  Hi-Fi受信と混信排除能力を両立。
◎画期的なビートキャンセラー。
◎スタティックシールド型バーアンテナを採用。  
      
 
 
 

●TU-X1の規格●
 
 

●FM部●


実用感度(IHF) MONO   8.7dBf(旧IHF1.5μV) 
STEREO 14.5dBf
50dBクワイティング感度(IHF) MONO   12.5dBf 
STEREO 34dBf
SN比 MONO   86dB以上 
STEREO 83dB以上
ハム&ノイズ(65dBf) 80dB以上
周波数特性 MONO   20Hz〜15kHz(+0.2dB,−0.5dB) 
STEREO 20Hz〜15kHz(+0.2dB,−0.5dB)
歪率(IHF,50dBクワイティング) MONO  100Hz  0.7%以下 
        1kHz    0.7%以下 
       6kHz   1%以下 
STEREO 100Hz  0.7%以下 
        1kHz    0.7%以下 
       6kHz   1%以下
歪率(IHF65dBf) MONO  100Hz  0.03%以下 
        1kHz    0.02%以下 
       6kHz   0.04%以下 
STEREO 100Hz  0.04%以下 
        1kHz    0.03%以下 
       6kHz   0.05%以下
キャプチュアレシオ(WIDE) 0.9dB以下
選択度(IHF,400kHz) 55dB以上(WIDE) 
80dB以上(NARROW)
スプリアスレスポンス比(IHF) 130dB以上(83MHz)
イメージレスポンス比(IHF) 130dB以上(83MHz)
IFレスポンス比(IHF) 平衡   130dB以上(83MHz) 
不平衡 130dB以上(83MHz) 
RF相互変調(IHF) 70dB(83MHz)
AM抑圧比(IHF) 65dB以上(83MHz)
ステレオセパレーション 100Hz  45dB以上 
1kHz   50dB以上 
10kHz  45dB以上
サブキャリア成分比 70dB以上(固定出力)
出力電圧/インピーダンス 固定出力  200mV 
可変出力  0〜1.5V(2.5kΩ)

 
 

●AM部●


実用感度(IHF,バーアンテナ) 50dB/m(NARROW,1MHz)
選択度(±9kHz) −3dB以上
2信号選択度(±9kHz) −35dB以上(NARROW)
SN比(入力100dB/m) 65dB以上
周波数特性 40Hz〜7kHz(+0dB,−3dB)
歪率 0.2%以下(30%変調,90dB/m) 
0.25%以下(90%変調,90dB/m)
ビートキャンセラー(8kHz) −40dB
イメージレスポンス比(IHF) 70dB以上(1000kHz)
ミューティング動作レベル 50dB/m
IFレスポンス比(IHF) 70dB以上(1000kHz)
AM出力レベル 600mV以上(30%変調)

 
 

●その他●


定格消費電力(電気用品取締法) 25W
寸法 480W×197H×450Dmm
重量 16.2kg
※本ページに掲載したTU−X1の写真,仕様表等は1981年2月のSANSUIのカタログ
 より抜粋したもので,山水電気株式会社に著作権があります。したがって,これらの写
 真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
 
 

★メニューにもどる       
 
 

★チューナーのページにもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp