TU-9900の写真
SANSUI TU-9900
AM/FM STEREO TUNER ¥89,800

1975年にサンスイが発売したFM/AMチューナー。同社のプリメインアンプAU-20000AU-10000
AU-9900,セパレートアンプCA-2000,BA-2000等とのペアを想定したチューナーで,ブラックパネ
ルに白いメーターパネルといったサンスイらしいデザインをもつ精悍なチューナーでした。

フロントエンドは,高周波2段,混合段に低雑音デュアルゲートMOS型FETを使用し,同調回路には周波
数直線型5連バリコンや複同調回路を設け,高感度と高選択度を確保していました。また,近距離受信地
域などの過大入力に対しては,フロントパネルにアンテナアッテネータースイッチが備えられており,最大
許容入力は130dB以上を確保していました。

TU-9900のフロントエンド

IF部は,差動IC6段,ディスクリート差動1段による全段差動増幅回路を採用していました。低歪率と高選択
度を両立させるために,IF部に選択度切替スイッチが設けられ,群遅延がフラットな6極ブロックフィルター2段
によるワイドバンド(広帯域)と,高性能4極セラミックフィルターによるナローバンド(狭帯域)とが選択できるよ
うになっていました。この選択度切替は,入力インピーダンスと位相特性を一定に保つため,ダイオードスイッ
チによる切替となっていました。

検波回路は,Sカーブの直線性がよい広帯域レシオ検波を採用し,高い安定度を確保していました。また,検
波出力レベル,SN比向上のため,高周波用パワートランジスターを使用し,ディスクリコイルをドライブしていま
した。ワイドバンド(広帯域)時の歪率(1kHz)は,0.06%以下(MONO),0.08%以下(STEREO)を実
現していました。

MPX復調回路には,差動復調回路とPLL(Phase Lock Loop)を採用していました。PLLはキャリア回路
に使用され,温度変化に左右されず正確な位相特性を得るとともに,差動復調回路との組み合わせにより,
高セパレーション,低歪率を実現していました。

AM部は,精密3連バリコン,複同調回路,2素子2コイルによるヤーマンタイプ・セラミックフィルターなどを採
用し,ビートやノイズの少ない高音質の受信を確保していました。

電源部は,各ブロック段へレギュレーションのより±2電源による安定感電源により供給され,安定した動作
を確保していました。

機能的には,受信に実用的なオーソドックスな機能が搭載されていました。
弱電界地域などでSN比が十分得られない場合に,入力レベルによりフォトカプラー(LED+Cds)が左右の
ブレンド量を自動的に変化させ,ノイズを抑える「オートノイズキャンセラー」が搭載され,同調時の局間ノイズ
や離調時のノイズを防止するために,狭帯域ミューティングドライブ回路と高感度リレーを使用し,実用的なミ
ューティング回路が搭載されていました。
マルチパスに対しては,マルチパス検出回路が搭載され,シグナルメーターでマルチパスの状態がチェックで
き,背面のマルチパス観測端子にオシロスコープを接続すれば,より正確なチェックかができるようになってい
ました。
また,FMエアチェックを考慮して,デッキでの適正録音レベルの設定のために,1kHzでFM100%変調時
−10dBのレベルが得られる録音用テスト発振器,デッキのバイアス発振器とのビートを避けるためにローパス
フィルター3段構成になるローパスフィルタースイッチ,アンプを経由せずに直接接続が可能なデッキへの録音
専用出力端子なども装備されていました。

ブラックの精悍なパネル面には,大型で見易く,経年変化の少ない2重ガラス製のダイヤル面とリニヤー表示の
シグナルメーター,センターチューニングメーターが設けられ,焼結合金製のフライホイールが搭載された大型の
チューニングツマミによりすぐれた操作フィーリングを実現していました。

以上のように,TU-9900は,サンスイらしい精悍なデザインの筐体に,オーソドックスに当時の最新技術と物量
を投入した高性能で実用的なチューナーでした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




最新の回路技術を盛り込んだ
低歪率チューナー。
◎高感度フロントエンド
◎選択度特性が切替え可能なFM IF部
◎音質を高めた低歪率設計の検波回路
◎安定度の高いMPX復調回路
◎音質重視設計の充実したAM部
◎全段へ安定化電源供給を行う電源部
◎実用性を向上させたオートノイズキャンセラー
◎ミューティング回路
◎マルチパス検出回路
◎リニヤー表示のシグナルメーター
◎フィーリングの良いダイヤル機構
◎録音に便利な3つの機構を内蔵
 ●録音用テスト発振器
 ●高性能ローパスフィルター
 ●録音用出力端子
●TU-9900の規格●
 

■FM部■

感度(IHF) 1.5μV
クワイティングスロープ(MONO)       1.5μV  3μV  10μV  50μV
WIDE    37dB   51dB  61dB   73dB
NARROW  36dB   51dB  61dB   73dB 
クワイティングスロープ(STEREO)        10μV  50μV
WIDE    39dB   53dB
NARROW 40dB   54dB
全高調波歪率(MONO)          50Hz     1kHz     10kHz
WIDE    0.06%以下 0.06%以下 0.08%以下
NARROW  0.5%以下  0.5%以下  0.8%以下
全高調波歪率(STEREO)          50Hz     1kHz     10kHz
WIDE     0.1%以下 0.08%以下 0.15%以下
NARROW  0.8%以下  0.8%以下  1.2%以下
選択度(400kHz) WIDE    55dB以上
NARROW 90dB以上
SN比 MONO   80dB以上
STEREO 76dB以上
キャプチュアレシオ WIDE    1.0dB以下
NARROW 3.0dB以下
AM抑圧比 58dB以上
イメージリジェクション 100dB以上(83MHz)
IFリジェクション 110dB以上(83MHz)
スプリアスレスポンス・リジェクション 110dB以上(83MHz)
ステレオセパレーション          50Hz     1kHz     10kHz
WIDE    40dB以上   50dB以上  40dB以上   
NARROW 30dB以上   30dB以上  30dB以上 
周波数特性 30Hz〜15kHz+0.5dB−0.8dB

■AM部■

感度(バーアンテナ) 45dB(1,000kHz)
選択度(±10kHz) 70dB以上(1,000kHz)
イメージリジェクション 100dB/m以上(1,000kHz)
IFリジェクション 100dB/m以上(1,000kHz)
全高調波歪率 1%以下(80%変調,100dBm)

 

■その他■

出力電圧(出力端子/録音端子) 0〜1V(FM100%変調)/0.4V
定格消費電力 20W
寸法 460W×176H×310Dmm
重量 9.6kg
※本ページに掲載したTU-9900の写真,仕様表等は1976年
 12月のSansuiのカタログより抜粋したもので,山水電気株式
 会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で
 転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意くだ
 さい。
 

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