ＤＥＮＯＮ ＴＵ-９００
ＦＭ ＳＴＥＲＥＯ ＴＵＮＥＲ ￥７３，８００
１９８０年にデンオンが発売したバリコン式チューナー。高級プリメインアンプＰＭＡ-９７０とのペアを想定された
ＦＭ専用チューナーで，薄型ながらサイドウッドパネルを配した落ち着いたデザインを持った実力派チューナー
でした。
ＴＵ-９００の最大の特徴は，バリコン式チューナーながら，４桁表示のデジタルディスプレイを持ち，アナログ表
示のダイヤルスケールとデジタル表示による「ジャストチューニング方式」を採用していたことでした。
デジタルディスプレイは，従来のものより１桁精度を上げたもので，より微妙なチューニングを可能にする目安と
なるものでした。さらに，選局操作をより容易にするために，チューニングつまみに触れるとサーボロックが自動
的に解除され，つまみから手を離すとサーボロックがかかるという，タッチセンサー機構による「オート・サーボロ
ック・タッチチューニング方式」を採用していました。
ＴＵ-９００のサーボロックは，中間周波数検波後の微少な直流成分を検出し，応答性が速くゲインの高い直流
増幅器によって，フロントエンドのローカル発振器の周波数を強くコントロールするもので，５０ｋＨｚ程度の離調
に対しても正確な同調へ修正する性能を持っていました。この強力なサーボロック機能により安定した受信を
可能にしていました。
フロントエンドには，デュアルゲートＭＯＳ ＦＥＴを採用し，周波数直線型５連バリコンを搭載して，高ＳＮ比，高
感度と高い妨害排除能力を実現していました。
中間周波増幅部は，ＷＩＤＥ，ＮＡＲＲＯＷの帯域幅切り替えを備えていました。音質重視のＷＩＤＥバンドでは，
±１１０ｋＨｚまで低群遅延特性のセラミックフィルターを採用し，デンオン独自の高ダイナミックレンジ新クオドレ
ーチュア検波回路とあいまって歪み率０．０２５％，セパレーション６０dBを実現していました。また，ＮＡＲＲＯＷ
では，高選択度特性のリニアフェイズ・セラミックフィルターを使用し，±４００ｋＨｚで９０dB以上の選択度特性を
確保していました。
ＭＰＸ回路では，ステレオ信号復調後不要になるパイロット信号を除去するパイロットキャンセラー回路を採用し
低歪み，高ＳＮ比を確保し，デンオン独自のセパレーション補正回路により，セパレーション特性を改善していま
した。
オーディオアンプ部では，ＤＣ構成が採用され，ＭＰＸ部とオーディオアンプ部のカップリングコンデンサーが排除
されていました。また，部品精度を高め，伝送特性をフラットにした音質重視設計となっていました。
機能的にはバリコンチューナーとしてはオーソドックスで，レベルチェック用発振器が内蔵されていました。出力
端子が２系統あり，アンプへの接続の仕方によっては，ＦＭ放送を録音しながら，他のソースも聴けるようになっ
ていました。
以上のように，ＴＵ-９００は，オーソドックスに練り上げられたアナログチューナーで，側面に鏡面仕上げのサイド
ウッドを配した上品な薄型デザインは，高級感があり，デンオンらしい安定感のある滑らかな音を持ったチューナー
でした。ペアを想定したＰＭＡ-９７０ともデザイン的にも音的にもよくマッチしていました。
以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。
