TA-E88の写真
SONY TA-E88
STEREO PRE AMPLIFIER ¥200,000

ソニーが1977年に発売した高級プリアンプ。TA-N88のペアとなるプリアンプとして 発売されました。当時流行していた
薄型の筐体に,ソニーの素子技術,回路技術を結集した中身の充実した実力機でした。

TA-E88の大きな特徴は,内部の整然としたコンストラクションにありました。MCヘッドアンプ,イコライザーアンプ,バッ
ファアンプ,フラットアンプの各回路ブロックを最短距離になるように並べ,各信号ブロック間のリード線をなくしプリント基
板上をストレートに信号が伝送されるような構造になっていました。また,L・Rチャンネルそれぞれのアンプが前後に2台
並べられた構造になっており,完全にツインモノ・コンストラクションになっていました。ボリュームやスイッチ類も基板上に
配置されており,そのため,信号経路に沿ってボリュームやスイッチが配置されたソニー独自のボリュームが左側にある
フロントパネルデザインとなり,入力端子,出力端子もストレートな信号経路に沿って配置され,右側から入力され,左側
に出力される特異な構造となっていました。

TA−E88の内部

ヘッドアンプは,新開発の超低雑音トランジスター使用し,を入力換算雑音−157dBVの理論限界値に迫る性能を得た
低雑音のものを搭載していました。イコライザーアンプ,フラットアンプには,カスコード接続,カレントミラー回路,ダイヤモ
ンド回路などの最新技術を投入し,さらにあえて音質優先のために,インプット・バッファが挿入されていました。そして,
これらの各増幅段はすべてカップリングコンデンサーを排したDCアンプ構成になっていました。

使用パーツも厳選され,ボリュームには,摺動部に金皮膜を蒸着した導体を採用し,バランスコントロールには,低雑音の
高精度ボリュームが採用されていました。セレクタースイッチも銀クラッド接点の高性能なものを採用し,無共振コンデン
サー,高精度金属皮膜抵抗,その他高性能な半導体を厳選して使用していました。

電源部は,L・R完全独立型で,それぞれに専用の電源トランスを搭載し,FETバッファ電源による4系統独立給電方式を
採用し,電源に起因する各ブロック間の干渉を抑えていました。また,各ブロック間,チャンネル間のシールド処理は徹底
して行われていました。特に,影響の大きい電源部は,出力端子をはさんで完全に別筐体のような形で独立し,シールド
が図られていました。

機能的には,最少限のものとされて,音質最優先の設計となっていました。トーンコントロールは省かれ,入力系統も最近
のプリアンプよりはぐっと少なく,PHONO2系統,TUNER,AUX各1系統,TAPE2系統と当時の標準的なものとなって
いました。しかし,当時の主力ソースアナログレコードのPHONO系統は機能的にも充実していて,10kΩ〜100kΩの負
荷抵抗,100pF〜500pの負荷容量が切り替えられるカートリッジロードセレクター,PHONO信号のローカットフィルター
などが装備されていました。また,パワーアンプへの出力レベルが0dB,−10dB,−20dB,OFFに切り替えられるアウト
プットレベル・セレクタースイッチが付いていました。

以上のように,TA-E88は,当時のソニーが信号系路の純化を追求し,最高水準をめざして作り上げた高性能プリアンプ
でした。その,明るく滑らかな音は素晴らしいものでした。ここでの技術を受け継ぎ,さらに振動対策を徹底してESPRIT
ブランドの最高級機TA-E900が登場してくるのでした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




 
回路,素子,コンストラクションが
音に及ぼす影響を,
究極において問いつめた
最高級プリアンプです。
●TA-E88の仕様●


入力端子
(入力感度及びインピーダンス)
PHONO1・2 2.5mV(50kΩ)
TUNER,AUX,TAPE1・2 150mV(50kΩ)
HEAD AMP 0.125mV(25Ω/100Ω)
出力端子
(出力レベル及びインピーダンス)
REC OUT1・2 150mV(最大15V)(1kΩ)
OUT PUT1・2 1.5V(最大15V)(100Ω)
高調波ひずみ率 0.002%以下(定格出力レベル,OUT PUT,10V出力時)
周波数特性 PHONO1・2 20Hz〜20kHz RIAA±0.2dB
TUNER,AUX,TAPE1・2 DC〜500kHz+0,−1dB
フィルター(LOW) 12dB/oct(カットオフ周波数15Hz)
大きさ 480W×80H×370Dmm
重さ 9.4kg
消費電力 22W

 
※本ページに掲載したTA-E88の写真,仕様表等はSONYのカタログより
 抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権があります。したがって,これら
 の写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご
 注意ください。

※なお,本ページは朝日様より貴重な資料のご提供をいただき作成すること
 ができました。本当にありがとうございました。
  
 
 
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