T-2の写真
YAMAHA T-2
NATURAL SOUND FM STEREO TUNER ¥130,000

1977年にヤマハが発売したFM専用チューナー。プリアンプC-2とのペアを想定された薄型ブラックの筐体
にヤマハのチューナー技術の粋を投入した力作で,ヤマハアナログチューナーの一つの頂点をなしたともいわ
れる1台でした。

フロントエンドは,周波数直線ワイドギャップ精密7連バリコンを採用し,RFアンプは,DualゲートMOS FET
を使用した2段増幅になっていました。1stRFアンプと2ndRFアンプの間をダブルチューンにし,2ndRFアン
プとミキサの段間をトリプルチューンにして各種妨害排除特性を高めた構成になっていました。
また,オーディオ用チューナーでは初めて,フロントエンドの動作をHI-SENSITIVITYとHI-SELECTIVITY
に切換えられるRFモード切換を採用したのがT-2でした。感度を重視したHI-SENSITIVITYモードでは,
1.5μV(IHF)という高感度を実現し,妨害排除特性を重視したHI-SELECTIVITYモードでは,RFアンプ
のダイナミックレンジとリニアリティが高められ,妨害排除能力を示す,RF IMは100dB以上に達していまし
た。

IF段は,LOCAL−DXの切換つきの2段構えになっていました。LOCALポジションでは,T-2用に開発され
たブロックセラミックフィルタを2個使用していました。このブロックセラミックフィルタは,セラミックフィルタの特
性のバラツキを補正するためそれぞれのフィルタ素子の入出力回路にし,C,Rを組み合わせてインピーダン
スマッチングをとり,通常帯域の微分利得偏差を±0.2dB以内ときわめて低く抑えたもので,IF回路内にセ
ッティングされた後も,微分利得直視法で再度チェックされて高精度に調整され,精度の高いフィルタとなって
いました。IFアンプにはインピーダンス変動を抑えるためにバッファアンプが配され,リミッタ効果の優れた7
段差動増幅器が採用されていました。以上のようなLOCAL-IF段は,一般地域では充分といえる55dBとい
う選択度を確保しつつ,優れたオーディオ特性を実現していました。
DXポジションでは,LOCALポジションのブロックフィルタに,さらにセラミックブロックフィルタが2ユニット追加
され,実効選択度100dBを確保していました。
またT-2では,受信電波に対する妨害の有無を電子的に検出し,IF回路のモードを(LOCAL−DX)を自動
的に選択するAUTO DX回路が搭載されていました。

MPX回路は,HighスルーレイトのDCアンプを基本に,ヤマハ独自のトランジスタによる平均値復調方式の
スイッチング回路にオーディオアンプ同様にNFBをかけるという,「DC NFB復調回路」を新開発して搭載し
ていました。MPX回路単体での歪率特性が,従来のものに比べて1桁以上も低くなるという優れた性能を
実現していました。

19kHzのパイロット信号の除去には,PLL(フェイズロックドループ)で発生した19kHzの方形波を利用して
入力パイロット信号を追従したレベルと,入力信号と逆相の19kHzのサイン波を再生し,パイロット信号をス
イッチング回路の入力でキャンセルするトラッキングタイプの「パイロット信号ピュアキャンセル回路」採用して
いました。この「パイロット信号ピュアキャンセル回路」によって,それぞれのパイロット信号のレベルに応じて
自動的にレベル追従してキャンセルするため,パイロットの漏れが殆どなくなり,ローパスフィルターのカットオ
フ周波数を19kHz以上にすることが可能となり,18kHzまでほぼフラットな周波数特性を実現していました。

19kHzのパイロット信号から,コンポジット信号を復調するための38kHzのサブキャリアを発生するための
PLL回路には,入力に同調型の妨害除去フィルタが付加され,ステレオ音声信号によるサブキャリアの乱れ
のきわめて少ない「Anti-interference PLL system」が採用されていました。

シグナルメーターは,妨害検出フィルターとAGCアンプによって3μV〜1mVという入力レベルを指示する正
確なもので,ヤマハ独自の妨害検出方式によって強入力まで飽和することなくマルチパス,フェージングノイ
ズ源からの妨害を指示の低下やふらつきとして指示できるようになった妨害検出型となっていました。また,
周波数のずれを補正するAFCのON/OFFはチューニング操作と連動して自動的に行われ,同調操作時に
はOFF,局に同調するとONとなり,その動作状態をLEDによって表示する機能を持ち,OTS(Optimum 
Tuning System)という名称が付けられていました。MUTING OFF時には常に同調周波数を表示し,局
と同調するとその局の周波数をデジタル表示するSTATIONインジケーターも搭載されていました。
その他,機能的には,弱電界ステレオ受信時のノイズを低減するFMブレンド回路や録音レベルの基準信号
を発信するREC CAL回路なども搭載されていました。

T-2の内部

以上のように,T-2は,他の当時のヤマハチューナーと異なる精悍な厚手のアルミ板を使用したブラックパネ
ルの薄型チューナーで,同社の同じくブラックの筐体を持つセパレートアンプとのペアを想定した,高性能チュ
ーナーでした。精悍なデザイン同様,音も力強さも持ったものでした。ヤマハのチューナーを代表する名機の1
つだと思います。
 

 
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


チューナーで初めての
RFモード切換回路を採用
オーディオ的凄さを感じさせる
FM専用チューナー
■妨害排除特性に秀れたフロントエンド
 ◎オーディオ用チューナーで初めてRFモード切換回路を
  採用した高性能フロントエンド
■LOCAL−DX自動切換つIF段
 ◎微分利得直視法で吟味した新開発ブロックセラミック
  フィルタによるLOCAL-IF段
 ◎電波環境によってIF回路のモードを自動的に切換える
  AUTO DX回路
■DC・NFB・PLL・MPX回路
 ◎DC・NFB・スイッチング回路
 ◎レベル追従型パイロットキャンセル回路
 ◎Anti-interference PLL system
■デジタルリードアウト・その他
 ◎選局中に同調するとその局の周波数をデジタル表示する
  STATIONインジケータ
 ◎妨害検出型シグナルメータ
 ◎OTS(Optimum Tuning System)機構
 ◎2ステージ対称ゲートミューティング回路
 ◎FMブレンド回路

 

●規格●


FM実用感度(IHF・MONO)300Ω 1.5μV(8.8dBf)
イメージ妨害比 120dB
IF妨害比 120dB
キャプチュアレシオ 1.0dB LOCAL
1.5dB DX
実効選択度 IHF 55dB  LOCAL
100dB DX
SN比 MONO  88dB
STEREO 85dB
全高調波歪率 MONO  0.05% LOCAL
       0.15% DX
STEREO 0.05% LOCAL
       0.4%  DX
ステレオセパレーション 55dB LOCAL
35dB DX
周波数特性 30Hz〜15kHz+0.3dB−0.5dB
サブキャリア抑圧比 72dB
付属機構 RF MODE SW,AUTO DX回路,OTS
MODE SW,オートブレンド,RECキャリブレータ
デジタルステーション表示,マルチパス端子
定格電圧・周波数・消費電力 AC100V・50/60Hz・18W
寸法・重量 435W×70H×349Dmm・7kg
※本ページに掲載したT-2の写真,仕様表等は1977年12月の
 YAMAHAのカタログより抜粋したもので,ヤマハ株式会社に著
 作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引
 用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
 

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