Ａｃｃｕｐｈａｓｅ Ｔ-１００
ＡＭ ＦＭ ＳＴＥＲＥＯ ＴＵＮＥＲ ￥１５５，０００１９７３年にケンソニック（現アキュフェーズ）が発売したＡＭ/ＦＭチューナー。トリオ（現ケンウッド）から独立
して発足したケンソニックがアキュフェーズブランドで発売したチューナー第１号機として，同じく同社のアン
プ第１号機Ｃ-２００，Ｐ-３００とともに発売されました。オーソドックスに性能を追求した入念な作りの高級チ
ューナーでした。フロントエンドは，周波数直線５連バリコンと２段復同調回路，局部発振バッファー回路という構成で，段間
完全シールド構造となっていました。高周波回路と混合回路にはデュアルゲートＦＥＴが用いられ，高感度と
広いダイナミックレンジと優れた妨害排除特性を実現していました。中間周波回路には，位相直線ＬＣ１５段集中型フィルターがＩＣ組み合わせて搭載され，広帯域にわたって
優れた群遅延特性を実現し，低歪みと高選択度を両立していました。
ＦＭ検波回路には，当時一般的なものの約３倍の１，２００ｋＨｚの帯域を持つ広帯域ディスクリミネーターが
使用され，優れた広帯域微分利得特性を実現していました。ステレオ復調器（ＭＰＸ段）には，入力パイロット信号の位相とサブキャリア発振器を自動的に同期する，当
時最新のＰＬＬ（フェーズ・ロックド・ループ）復調回路が採用され，優れたステレオセパレーションと低歪みを
実現していました。
オーディオ増幅回路には，同社のオーディオアンプと同様に対称型プッシュプル回路が採用され，厳選された
パーツによる構成で，ダイナミックレンジの広い優れたオーディオ特性を実現していました。優れた受信回路と
相まって，２００％変調でも歪みを生じない，過変調にも強いチューナーとなっていました。
ＡＭ受信回路にもＪ型，ＭＯＳ型ＦＥＴを用いた贅沢な回路構成が採用され，優れた音質のＡＭ受信を可能にし
ていました。
メーターとしてセンターチューニングメーターとシグナルメーターの他に，サブパネル内にマルチパスメーターが
独立して設けられ，マルチパス（反射波によるゴースト）の検出ができるようになっていました。そのほか，サブ
パネル内には，２段型ミューティング切替スイッチ，ステレオ・ノイズ・フィルター，ＡＭ-ＦＭ独立型出力レベルコ
ントロール，ダイヤル・ライト・コントロール等が設けられ，マルチパスメーターは，サブパネルを開くと自動的に
点灯するようになっていました。以上のように，Ｔ-１００はアキュフェーズの第１号チューナーとして，すでにアキュフェーズらしい入念な作り込み
によるバランスのとれた優れた性能を誇るチューナーでした。そのどっしりとした外観と音は高級チューナーにふ
さわしいもので，名機として記憶に残る１台だと思います。
以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。
