OTTO ＳＸ-Ｐ１
３ＷＡＹ ＳＰＥＡＫＥＲ ＳＹＳＴＥＭ ￥１２８，０００
１９７６年にオットー（三洋電機）が発売したスピーカーシステム。このころ，各メーカーが１３万円前後の
大型で強力なスピーカーシステムを発売して，競い合っていました。ソニーのＳＳ-Ｇ７，サンスイのＳＰ
-Ｇ３００，オンキョーのセプター１０等，強力なエンクロージャーと強力なユニットを組み合わせた実力機
が揃っていました。その中で，当時ＯＴＴＯブランドで頑張っていた三洋電機は，このＳＸ-Ｐ１を出してい
ました。
ＳＸ-Ｐ１の最大の特徴はウーファーユニットにありました。「ポーラスメタルコーン」という金属系振動板を
用いた３０ｃｍ口径のコーン形ウーファーでした。この「ポーラスメタルコーン」は，ニッケル素材を発泡状
にした上で，さらに２０μのアルミ箔を内側に接着して，全体をコーン形に成型したもので，金属ならでは
の高い剛性と，音速を実現するとともに，発泡化されていることにより紙コーン並みの十分に低いＱ値を
実現して，振動板として優れた特性を実現していました。
全体の形状は開口角１１５度の振動の明確なコニカルタイプとし，磁気回路は低歪率化を図った１１，０００
ガウスの高磁束密度の直径１５６mm，重量１．４ｋｇの大型フェライトマグネットで駆動されるようになって
いました。また，このウーファーは，単体ユニットでもＡＳＸ-１（￥３５，０００）として販売されていました。
スコーカーは，ピュアアルミをベースに両面を８０％アルミナ化した５０μ厚の３層構造の振動板を新開発して
使用した６７mm口径のドーム型ユニットを搭載していました。
トゥイーターには，硬質アルミによる３０μ厚の超軽量薄型の６mm巾リング構造の振動板を使用したリング型
ユニットを搭載していました。振動板自体が０．０６ｇと超軽量で，Ｖ字型のリング構造をとることで，ボイスコイル
の駆動点からエッジまでの幅が狭く分割振動が起こりにくいという利点を持っているということでした。
以上のように，ウーファーからトゥイーターまでローディー（日立）のメタルコーンに挑戦するかのように，メタル振
動板のユニットで構成していました。
ＳＸ-Ｐ１では，位相特性を重視した設計が行われ，ネットワークには位相補償回路を搭載し，ユニットとネットワ
ークを総合した特性で，位相差をキャンセルするようになっていました。また，ソニーのＳＳ-Ｇ７で見られたよう
にウーファーを前部に出し，各ユニットを立体的に配置して，空間で各ユニットの音が合成されたときの時間差
歪みの低減化を図っていました。キャビネット自体も黒檀突き板仕上げの手の込んだもので，ウーファーのバッ
フルは厚さ８０mmにも達するというものすごいものでした。システムの全重量も５１ｋｇにもなるものでした。
以上のように，ＳＸ-Ｐ１は，ユニットからエンクロージャーまで，オットーの意地を見せたかのような技術とコスト
の投入された力作でした。おそらくその作りから考えても，倍の価格でもおかしくないほどの内容を持っていた
とも言われています。弟機としてほぼ同じ内容のウーファーを搭載した２ウェイ機ＳＸ-Ｐ３（￥５５，０００）も発売
され，オットーの高い技術力を知らしめました。ＳＸ-Ｐ１は，その振動板などから想像するよりも，ずっと素直な
堂々とした音を持ち，知る人ぞ知る実力機でした。
