SX-900の写真
Victor  SX-900
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥204,800

1988年に,ビクターが発売したスピーカーシステム。同年に発売されたSX-1000の弟機
として発売されたもので,ユニットやエンクロージャーなどSX-1000に準ずる内容を持ち,
価格は1/2に抑えられたコストパフォーマンスの高い1台でした。

SX-900には,SX-1000と同様に全ユニットにアルニコマグネットが採用されていました。
アルニコマグネットは,フェライトの200倍以上の導電率と,約1/4の磁気抵抗という優れた
性能を持ち,強力な磁気回路を構成することが可能なマグネットとして知られています。
SX-900では,SX-1000が壺型内磁構造の磁気回路であったのに対し,新開発のリング
型アルニコ磁気回路が採用されていました。これは,アルニコの優れた磁気特性はそのまま
に,磁気回路内の背圧を効率的に除去できるもので,磁気回路の強さはSX-1000には及
ばないものの,SX-1000に迫るクオリティを実現しようとするものでした。

リング型アルニコマグネットSX-900のトゥイーター,スコーカーの振動板

ウーファーは,SX-1000と同様に,31.5cm口径で,パルプコーンとクロスカーボンのハイ
ブリッド構造のファインクロスカーボン材を使用したコーンで,高い剛性,軽量と適度な内部
損失をもったダイアフラムで低域の高い質感を実現していました。
スコーカーは,6.5cm口径のドーム型で,Zeroシリーズで開発された単層構造の高剛性・高
音速のセラミックドームの表面にさらに非結晶状態(アモルファス)のダイヤモンドコーティング
を施したもので,高い音速,伝搬速度を実現していました。
トゥイーターは,3cm口径で,スコーカー同様に,ファイン・ダイヤモンド・セラミックス材による
ドーム型振動板が採用され,クリアな高域再生を実現していました。

SX-900の内部構造

エンクロージャーは,SX-1000ほどではないものの,同クラスのユニット口径を持つブックシェ
ルフ型に比較して大きめに設定され,専用のスタンドも付属していました。6面とも美しい木目仕
上げがなされた美しいものでした。フロントバッフルには24mm厚のカエデプライウッド材が使用
され,ラウンドバッフル構造がとられていました。フロントバッフル上のユニット配置は,ビクター
伝統のGライン配置で,音場感を改善していました。SX-900には,専用のスピーカースタンドが
付属していました。
また,SX-1000と同様に,全6面とも仕上げの施されたエンクロージャーは部屋の中央に配置
しても不自然さのない美しいものでした。付属しているサランネットは,音響反射の少ない枠形状
がとられ,バッフル面のコイン状鉄片に磁石で吸着されるバッフル面に凹部のないマグネットキャ
ッチ式で,がたつきもなく着脱もしやすいものでした。

ネットワークは,相互干渉と振動の悪影響を避けてウーファー,スコーカー,トゥイータ用がに3分割
配置され,素子間の接続はハンダを用いないカシメ接続としていました。入力端子は,バイワイヤリ
ング対応型となっていました。

以上のようにSX-900は,SX-1000の弟機として,ハイテク素材のZEROシリーズと音楽性のSX
シリーズを総合したかのような充実した内容を持ち,ビクターらしい音楽を楽しく聴かせる性能と高
い物理特性を両立した実力機でした。価格的にSX-1000より大幅に低く抑えられていながら,優
れた音を持ち,SX-1000とはまた違った魅力を持った1台となっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



音の粋がここに集められた。
ビクターが理想の3ウェイを追求。
すべてが,ひとつ上のグレードです。


◎すべてのユニットで豊かな再現力を。
 新開発リング型アルニコ磁気回路の
 鮮やかな描写力。
◎ファインダイヤモンド,ファインクロスカーボン
 採用の3ウェイ。みずみずしい再現力で音楽の
 心を描写。
◎24mm厚カエデフロントバッフルの自然な響き。
 Gラインユニットレイアウトの豊かな音場。
◎入力設計も高音質を。バイワイヤリング対応。



SX-900spiritの写真
Victor  SX-900spirit
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥350,000

1991年に,SX-900はモデルチェンジを受け,SX-900spiritになりました。価格は大幅に上がり
ましたが,内容的にも一新されたといえるほど大きく強化,改良されていました。

ウーファーユニットは,31.5cmと,口径は同じながら,SX-1000と同じく,CFRP(炭素強化繊維
プラスチック)発泡ハイブリッド三層振動板が新たに採用されていました。これは,パルプコーンベー
スに,樹脂発泡の中間層と,カーボンクロスにポリプロピレン樹脂マトリクスを採用したコーンで,適
度な内部損失を持ちながら,音速は紙の1.5倍,曲げ剛性は11倍という強さを実現し,低域再生
の質感を大きく向上させていました。

スコーカーには,ファイン・ダイヤモンド・セラミックス材によるドーム型振動板が継承されていました
が,口径が8cmと大型化されていました。
トゥイーターには,3cm口径のファイン・ダイヤモンド・セラミックス材によるドーム型が継承されてい
ました。

SX-900spiritのユニット

エンクロージャーは,固く適度な内部損失があるカナダ産のカエデ材が継承され,6面木目仕上げ
も継承されていましたが,フロントバッフルを38mm厚のカエデプライウッドによるものにするなど,
より強化され,スピーカーシステム全体の重量もアップしていました。また,大きな変更点として,密
閉型だったエンクロージャーはバスレフ型に変更されていました。
フロントバッフル上には,SX-900同様にGラインユニット配置がなされ,自然な音場再生を図るた
めのスーパー楕円バッフルが採用されていました。また,内部の吸音材には,固有音の少ない,天
然素材・100%ウール材を使用していました。
さらに,3分割ネットワーク,バイワイヤリング対応も継承されていました。

インディペンデンスベーススタンド

SX-900spiritでは,新たにSX-1000LABOにも採用された「インディペンデントベース」という専用
置き台が標準装備となりました。この「インディペンデントベース」は,分厚いパイン材の台の4隅に丸
い穴が空いていて,そこにブナ材ランバーコアの円柱がはめ込んである構造で,円柱はフェルトを介
して台と接する構造なので実質的には各々が相互干渉を起こさない独立した4本の支柱がスタンドと
なり,床面との定在波の発生を外観上の台の部分が防ぐという巧みな仕組みになっていました。

以上のように,SX-900spiritは,同社のトップモデルSX-1000LABOで開発・採用された技術やノ
ウハウを引き継ぎ,SX-900をさらに強化した内容を持ったスピーカーシステムでした。上級機に比べ
ても鮮明さでは遜色ない再生能力を持ち,ハイテク素材を各所に使いながら,刺激的にならず音楽を
楽しく聴かせる,ビクターらしい魅力を持った1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご 紹介します。



中域のみずみずしさを求め,
すべてのユニットを熟成させました。


◎中域を基準にして,すべてのユニットを熟成。
◎新素材と独自の設計でつきつめた>
 キャビネット構造。
◎高音質を入力設計まで。
 バイワイヤリング対応。
◎音にこだわったインディペンデンスベーススタンド。





●主な仕様●

 
SX-900
SX-900spirit
種類
3ウェイ密閉型
3ウェイバスレフ型
スピーカーユニット
ウーハー:31.5cmコーン
スコーカー:6.5cmドーム
トゥイーター:3.0cmドーム
ウーハー:31.5cmコーン
スコーカー:8.0cmドーム
トゥイーター:3.0cmドーム
最大許容入力
150W/300W(瞬間最大)
180W(EIAJ)
定格入力
 
45W(EIAJ)
再生周波数帯域
27〜50,000Hz
30〜50,000Hz
定格インピーダンス
6Ω
6Ω
出力音圧レベル
91dB/W・m
91dB/W・m
クロスオーバー周波数
500/4,300Hz
420/4,800Hz
寸法
440W×850H×369Dmm
(スタンド高さ100mm含む)
440W×845H×369Dmm
(スピーカースタンド,サランネット含む)
重量
43.0kg(スタンドを含む)
50kg(スピーカースタンド8kgを含む)


※ 本ページに掲載したSX-900,SX-900spiritの写真・
  仕様表等は1989年4月,1995年5月>のVictorのカタロ
 グより抜粋したもので,日本ビクター株式会社に著作権が
 あります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用
 等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意くださ
 い。

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