Victor
SX-7
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥79,000
1974年にビクターが発売したスピーカーシステム。1972年発売のSX-3がバランスの取れた音で
広く人気を博した後,ビクターはSX-5,SX-7・・と上級機を発売していきました。SXシリーズの上級
機として,音やデザインの方向性を同じくし,より完成度を高めようとした設計が特徴でした。
トゥイーターには,3cm口径のドームユニットが搭載されていました。SXシリーズ伝統のソフトドーム
ユニットで,スムーズな球面波を得るために,わずかな位相ズレに対してもイコライザーを付加して
整合が取られていました。ドームの材質には,ソフトなルーズバインドの特殊織布で,径時変化を起
こしにくい合成ゴムダンプ材を丹念に塗り込んで,固有共振の少なさをより生かしていました。
ボイスコイルには,アルミボビンを採用し,充分な剛性と放熱効果を確保していました。磁気回路に
は,電流歪みを抑える銅キャップが使用されていました。マグネットには,13,000ガウスの空隙
磁束密度の高性能湿式Ba-フェライトマグネットが使用されていました。
スコーカーには,トゥイーターをそっくりサイズアップしたともいえる大口径7.5cmのソフトドーム型ユ
ニットが搭載されていました。適度なバックキャビティを付加してfoを200Hzまで下げていました。耐
久性のある錦糸線ボイスコイル・リードやアルミニウム製のボビンが許容入力を高め,500Hzから
5000Hzの使用帯域で充分なダイナミックレンジを確保していました。磁気回路には,トゥイーター同
様に,電流歪みを抑える銅キャップが使用され,マグネットには,同じく13,000ガウスの空隙磁束
密度の高性能湿式Ba-フェライトマグネットが使用されていました。
ウーファーは,30cm口径のコーン型で,SXシリーズ伝統の西ドイツクルトミューラー社製のKDUコー
ンを採用していました。SX-3,SX-5に対してより大口径のユニットであるため,分割振動を抑えるた
めに,コーン紙上に5個のコニカルドームが配置され,これが外観上の大きな特徴にもなっていまし
た。エッジ部は,リニアリティのよいサンドウィッチ・ダンプ方式クロスエッジが採用されていました。
ボイスコイルは,大入力に耐える4層フェノール樹脂巻きボイスコイルが搭載され,磁気回路にはトゥ
イーター,スコーカーと同様に,電流歪みを低く抑える銅キャップが使用されていました。
エンクロージャーは,サイドバッフルには高密度の単層パーチクルボードを用い,前後のバッフルに
は,振動減衰特性の素直な響きの美しいダグラスファー合板を用いた構造で,響きの良さとバランス
を考えた設計となっていました。内部にも響棒を配してスピーカーの内部圧力によるエンクロージャー
の歪みに対する応力を高めるとともにダグラスファーの響きを整えていました。吸音材として,一般の
グラスウールより吸音特性の良い動物性繊維を主体としたエステルウールに吸音材を充填し,Qを
コントロールしてすぐれた低域特性や過渡特性を実現していました。
ネットワークには,大入力に対しても非直線性歪みを発生が少ないケイ素鋼板コアを使用し,直流抵
抗値を小さく抑え,ダンピングの良い再生を実現していました。
高域用(トゥイーター)と中域用(スコーカー)には,定抵抗による連続可変タイプのレベルコントローラー
(アッテネーター)が装備されていました。
以上のように,SX-7は,人気モデルSX-3をスケールアップして新しい魅力を加えた力作でした。当
時ライバルと見られていたNS-690の清潔感のあるバランスの取れた音に比べ,より温かさがあり
弾むような楽しさのある音は,ビクターらしさが表れていたように思います。
また,SX-7と同じユニットを用いたフロア型モデルとしてSX-9も発売され,こちらも独自の魅力を持っ
ていました。
Victor SX-9
3WAY FLOOR TYPE SPEAKER SYSTEM
¥160,000(受注販売)
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
Victor
SX-7U
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥89,800
1979年にSX-7はSX-7Uにモデルチェンジされました。オリジナルSX-7に30項目以上の改
良が施されていました。
エンクロージャーは,前後のバッフルが北米産針葉樹ダグラスファーのランバーコアとなり,ムク
材の響きの良さが生かされていました。さらに,響棒もピアノ,バイオリン等の楽器に見られる構
造を生かした凹面R付きのものとなっていました。ユニット配置も微調整が行われ,音場再現性
の優れた左右対称配置が採用されていました。
トゥイーター,スコーカーのソフトドームユニットにも,基布から成型法,粘弾性塗布剤の材質等,
全面的な改良が加えられ,磁気回路も強化されていました。
ウーハーのKDUコーン紙にも,内部損失を再検討した新素材コーンが使用され,より低歪率化
が図られた新設計の磁気回路も採用されていました。さらに,SX-3に見られたパンチングメタル
カバーが新たに採用されていました。
全スピーカーユニットのフレームは,アルミダイキャスト化され,振動エネルギー,磁気エネルギー
の損失を低減していました。
ネットワークは,相互誘導を避けるため,コンデンサー基板とコイル基板が分散配置され,低歪率
化,高耐入力化が図られていました。パーツの面でも,3種類のメタライズド・フィルムコンデンサー
や無酸素銅線など,厳選されたものが豊富に投入されていました。
トゥイーター用,スコーカー用のアッテネーターが引き続き装備され,ツマミの形状はバッフル面に
近いフラットなものに変更されていました。
以上のような各部の見直しにより,より現代的な音へと改良され,よりクリアな音へと変化していま
した。