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Victor SX-511
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥59,8001987年にビクターが発売したブックシェルフ型スピーカーシステム。いわゆる598ゾーンの1台でしたが
激戦区に投入されただけに,その中身を見ると驚くべきコストパフォーマンスを誇る強力なモデルでした。ウーファーは,31.5cm口径で,クロスカーボンに内部損失の大きいシートをラミネートし,軽く堅く音の伝
達がはやい素材に適度な内部損失を持たせたクロスカーボン振動板でした。エッジ部にはさらにリニアリ
ティを高めたラミネートクロスエッジが採用され,応答性の高いエッジを実現していました。
ウーファーフレームは,リブ構造のないアルミ無垢ダイキャスト製で,従来の2倍の2.1kgの重量級,フラ
ンジが15mm厚,無垢の支柱8本という,クラス最強のもので,しかも8個のネジでしっかりとフロントバッフ
ルにマウントされる構造とされ,低音のクリアさを高めていました。
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SX-511では,特に音楽の最も重要な基音の部分,中音域を再生するスコーカーには,このクラスでは考
えられないほど贅沢なユニットが搭載されていました。振動板は,ファインクロスカーボン+カーボンシート
によるハイブリッド構造の12cm口径のコーン型で,軽量で高剛性,適度な内部損失を兼ね備えていまし
た。
磁気回路には,強力なアルニコマグネットを使用し,磁気漏れが少なく効率の良い本格的な壺型ヨークを
採用した,このクラスでは考えられないほど高級なもので,最強のものでした。
フレームもすべてアルミ無垢で,フランジが9mm厚,無垢の支柱6本,取り付けネジ6本というもので,これ
もクラス最強のものでした。トゥイーターは,3cm口径のドーム型で,チタンの基材にアモルファスダイヤモンドを蒸着した振動板を採用
していました。トゥイーターのフレームもアルミ無垢7mm厚の強固なものでした。
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キャビネットは,針葉樹の高密度材を厳選して使用し,響きがよく剛性の高いキャビネットとしていました。
フロント&リアバッフルは25mmの板厚で,接着点すべてに杭(クリート)をハイしてガッチリ取り付ける,
フルクリート方式が採用され,さらにキャビネット組み立て時に,1トンもの高圧で6面全部を結合する高速
高圧組固め工法が導入され,頑丈なキャビネットとしていました。
ユニット配置は,最適取り付け位置をコンピューターで設計した新Gラインユニットレイアウトとして,優れた
指向性を実現していました。
ネットワークは,高品質パーツを使ったもので,回路を3分割構造として,高域,中域,低域の干渉をカット
していました。配線接続部にはハンダを使わずにかしめ接続をし,さらにその上から接着剤で完全密封し
て経年変化を抑えていました。これらの3つのネットワークはそれぞれパーチクルボードに接着した上で裏
板に取り付けられていました。
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以上のように,SX-511は,598クラスにビクターが投入した戦略モデルとでもいうべき強力なスピーカー
システムでした。ZEROシリーズから再びSXシリーズを名乗り,大きく内容も一新されたSX-511は今で
はとうていこの価格では作れない1台だったと思います。力があり,高域が華麗に散乱するようなクリアな
音は印象的でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
アルニコ,アンコール。
優れた振動板は,
つぼ型ヨーク採用の
アルニコマグネットに駆動されて,
初めて生々しい肉声を
歌い上げることができる。
ALNICO STORY
◎優れた振動板には,優れた磁気回路が必要です。
◎オーディオマニアを虜にしてきたアルニコ。
◎アルニコマグネットの高特性をフルに引き出す,
本格的なつぼ型ヨークを採用。
◎強力なアルニコ磁気回路で
音楽のファンダメンタルな部分を充実させて,
深い味わいを醸し出すことに成功。
UNITS
◎歯切れよく,しかもゆったりした重低音再生を
可能にするクロスカーボンウーハー。
◎低域,高域とのつながり重視。ナチュラルな
音質を生むファインクロスカーボンスコーカー
◎透き通った高域を実現する
アモルファスダイヤモンド採用のツイーター。
◎無振動・無共振を追求した円形アルミ無垢
ダイキャスト製ユニットフレーム。
CABINET
◎接合面の強度を高めるフルクリート方式で
堅牢に組立てたキャビネット。
◎コンピュータを駆使して自然な音の拡がりを
実現させた新Gラインユニットレイアウト。
◎ユニットの能力を存分に発揮させる
3分割ネットワーク。
●主な仕様●
種類 | 3ウェイ密閉型 |
スピーカーユニット | ウーハー:31.5cmクロスカーボン
スコーカー:12.0cmクロスカーボン ツィーター:3.0cmファインダイヤモンド |
再生周波数帯域 | 40〜50,000Hz |
最大許容入力 | 150W(瞬間最大300W) |
インピーダンス | 6Ω |
出力音圧レベル | 91dB/W/m |
クロスオーバー周波数 | 500Hz,4,000Hz |
寸法 | 380W×665H×351Dmm |
重量 | 31.0kg |
※本ページに掲載したSX-511の写真・仕様表等は1987年10月の
Victorのカタログより抜粋したもので,日本ビクター株式会社に著作権
があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をする
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