Ｖｉｃｔｏｒ　ＳＸ-３
２ＷＡＹ　ＳＰＥＡＫＥＲ　ＳＹＳＴＥＭ　￥２７，９００（１本）

ビクターが１９７２年に発売した２ウェイスピーカーシステム。ネットのない白木のキャビネットというそれまでのスピーカー
デザインの常識をくつがえす大胆なデザインで登場したＳＸシリーズの第１号機でした。音の方も，国産スピーカーは，ま
だまだと言われていた時代にあって，欧米のスピーカーに追いついたと言われた，まさに名機でした。　　　　　　　　　　　

トゥイーターは，新開発のソフトドーム型ユニットを搭載し，従来のコーン型ユニットやホーン型ユニットのトゥイーターに比べ
指向性が広く，歪み感の少ない聴きやすい中高音を実現していました。繊維がつぶれない新成型法によるソフトドームダ
イアフラムで，ダンプ材にもビスコロイドを排し，ゴム系ダンプ材を使用し，それまでの海外製に見られたソフトドーム型ユニ
ットに比べても，しなやかさと解像度が両立した優れたユニットに仕上げていました。また，連続可変のレベルコントロー
ルが付いていました。ウーファーは，西ドイツのクルトミューラー社製のパルプコーンユニットが使用され，サイズから想像
するよりも，響きの豊かなたっぷりした低音を聴かせてくれました。全体的な音の傾向は，低域をベースにピラミッド型に
たとえられる安定した帯域バランスを持っていて，上品な再生音が人気を呼びました。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

それまで，ＢＬＡシリーズというオーソドックスなデザインのスピーカーを作っていたビクターが，突然出した非常にユニークで
優美なデザインも人気を集めました。それまでダークな色が普通だったエンクロージャーに思い切って白木（表面仕上げは
すべてスプルース）を採用し，明るく洗練されたイメージを作り上げていました。さらに，全部の布製のネットを廃し，パンチン
グメタル（つまり金網状のカバー）を取り付けたユニットをむき出しにしたすっきりしたデザインが印象的でした。これ以降，ヤ
マハなど各社から白木のスピーカーが発売されるきっかけにもなりました。このユニークなエンクロージャーは，前面バッフル
と裏板にダグラスファー合板を使用したもので，しっかりした剛性と響きの美しさを実現していました。また，キャビネット内の
縦方向，横方向の音の伝搬速度を等しくさせ，響きを美しくするため，ピアノの響板の技術に通じる響棒をがキャビネット内リ
アバッフルに設けられていました。吸音材には，１０００Ｈz以下の吸音率がグラスウールの２〜３倍というエステルウールが
使用され，低音のダンピングを高めていました。
ネットワークは，ウーファーのハイカットフィルターに−６dB/ｏｃｔ，トゥイーターのローカットフィルターに−１２dB/ｏｃｔのものが
採用され，コイルには，ビクターが新開発した硅素鋼板コアを使用して，大入力時の低歪みを実現していました。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
このＳＸ-３はベストセラーとなり，ＳＸシリーズは，ＳＸ-５，ＳＸ-７とシリーズを増やし，ＳＸ-３自身も，ＳＸ-３�U，ＳＸ-３�Vと改
良を重ねながら約８年間，２０万台以上も作られました。そして，ＳＸシリーズは，ビクターのスピーカーシステムの一つの柱と
して現在までシリーズを重ね，ＳＸ-５００シリーズなど，その伝統は営々と引き継がれ，音楽を楽しく聴くことができるその音
は現在も高い評価を得ています。ＳＸ-３は，その原点ともいえる名機でしょう。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
 
 
 

以下に，当時の資料からその一部をご紹介します。

当時のビクターの広報資料より・・・・。
 

「音響変換器としての物理特性だけを論じても，
決して良いスピーカーは生まれない。エンクロ
ージャーの鳴きまでを含めた，いわばスピーカ
ーシステム全体を見渡したうえで，さらに聴感上
コントロールをする必要がある。」　
 

当時のカタログより

◎すぐれた指向性
◎音楽性豊かな音を再生するコーン紙
◎米国産針葉樹材キャビネット
◎エステルウール吸音材
◎キャビネットの性能を向上させる響棒
◎開口率の良いスピーカー保護パンチングメタルと
　取りはずし可能なツィーター・ディフューザー
◎新開発ディバイディング・ネットワーク
◎ユニークなデザイン
 

Ｖｉｃｔｏｒ　ＳＸ-３�U
２ＷＡＹ　ＳＰＥＡＫＥＲ　ＳＹＳＴＥＭ　￥３２，８００

１９７４年，ＳＸ-３はＳＸ-３�Uへとモデルチェンジを受けました。ダグラスファー使用スプルース仕上げのキャ
ビネット，クルトミューラー社製ＫＤＵコーンウーファーなど基本的な部分は同一でしたが，トゥイーター，ネッ
トワークなどに改良が施されていました。

トゥイーターは，ＳＸ-３ゆずりのソフトドームユニットでしたが，受け持ち帯域が２００Ｈｚ引き下げられ，１，８００
Ｈｚ〜２０，０００Ｈｚとされていました。このために，ユニット後部に密閉されたキャビティが付加され，ユニット
のｆ_０，Ｑ_０を低く抑えていました。さらに，磁気回路には，ひずみを減少させる銅キャップがあらたに採用され
ていました。
ネットワークにも改良が施され，ウーファーのハイカット，トゥイーターのローカットともに−１２dB/ｏｃｔのフィル
ターが使用され，インダクタンス成分によって生じやすいウーファーのカットオフ以前でのロスや，カットオフ付
近での共振に対して，新たに補償回路が搭載されていました。コイルは，硅素鋼板コアが受け継がれていま
した。

以上のように，ＳＸ-３�Uは，ＳＸ-３をベースに改良が施され，定評のある鳴りっぷりをさらに発展させ，中域の
クリアさが増し，初代同様に音楽を楽しく聴かせてくれる使いやすい１台となっていました。
 
 

以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。

Ｖｉｃｔｏｒ　ＳＸ-３�V
２ＷＡＹ　ＳＰＥＡＫＥＲ　ＳＹＳＴＥＭ　￥３９，８００

１９７６年，ＳＸ-３シリーズは，第３世代のＳＸ-３�Vへとモデルチェンジを受けました。基本的な部分は受け継が
れ，トゥイーターを中心に，各部にさらに改良が施されていました。

トゥイーターは，５ｃｍソフトドーム型ですが，各部に改良が施されていました。バックキャビティカバーには，新た
に共振の少ない肉厚の充分ある鉄板を使用していました。ボイスコイルには，絶縁皮膜を従来の２０ミクロン厚
から５ミクロン厚にして，磁気回路のエアギャップ内の占有率を向上させたエッジワウンド・ボイスコイルが採用
されていました。そして，フロント・ドーム・カバーの開口率が高められていました。

ウーファーは，西独ＫＤＵコーンユニットが継承され，新たにアルミダイキャストフレームが採用され，ゴムリングと
の組み合わせにより，不要振動を低減していました。磁気回路は熱処理により電流歪みの低減が図られ，ダン
パーはより大型化されていました。

キャビネットは，針葉樹ダグラスファー合板とパーチクルボードを組み合わせて使用した複合素材キャビネットが
より強化されて継承されていました。表面仕上げも美しいスプルースが継承されていました。ＳＸ-３�Vになって
新たに，オプションでサランネット（ＫＡ-Ｓ３３型，２本１組￥５，３００）が取り付けられるようになっていました。

以上のように，ＳＸ-３�Vは，ＳＸ-３シリーズの最終形である第３世代モデルとして，各部に高い完成度とバラン
スを実現していました。音は基本的に滑らかで柔らかいもので，さらに透明感が高まったものでした。以上のよ
うなＳＸ-３の歩みは名器の系譜といえると思います。
 

 
以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。

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そのほか，ご意見ご感想などをお寄せください。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

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