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Victor SX-10spirit
密閉型3ウェイスピーカーシステム ¥110,000(1本)L・R対称1982年にビクターが発売した3ウェイスピーカーシステム。1972年発売の名機SX-3発売以来のSXシリーズの
10年にわたる歴史と100万台に及ぶ生産実績をふまえて発売された記念碑的なモデルで,SXシリーズの一つの
集大成ともいうべき美しいスピーカーシステムでした。SXシリーズのウーファーは,ドイツクルトミュラー社のKDUコーンが使われていましたが,SX-10spiritでは,西ドイ
ツクルトミュラー社とあらたに共同開発したノンプレスコーン紙を採用していました。コーン上にコニカルドームを設けて
振動板の剛性を高めて分割振動を抑えた新設計の32cm口径ウーファーでした。また,ウーファ前面のパンチングメ
タル・カバーは従来型より開口率が大きくされ,しかも振動減衰率が10倍も高い制振鋼板を用いて不要な共振を排
除していました。スコーカーは,6.5cm口径のSX伝統のソフトドーム型ユニットを搭載していました。しかし,ここにも従来型と違った
新技術を投入し,タンジェンシャルエッジとソフトドームを一体成形することでいっそうの高精度化と軽質量化を図って
いました。粘弾性材のコーティングにも新技術を投入し,広帯域にリニアリティを改善していました。バックチャンバー
にはウーファーのパンチングメタルと同様に制振鋼板を採用していました。トゥイーターは3.5cmのソフトドーム型ユニットを搭載していました。ドームの基材は絹を採用し,緻密で軽く,弾力
性に富んだ天然素材の特殊繊布によるものでした。これにスコーカー同様に新技術によるコーティングが施されて
いました。
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エンクロージャーは,強度の高い六面留め構造となっていました。しかも,外からは接合部分の木口が一切見えないと
いう「クローズド・スクエアー」という凝った構造で,組み立てには150kgにも及ぶ高圧力で六面全部を同時に組み固め
る新技術が使われ高い精度と強度が実現していました。前後のバッフル板はピアノの響板に使われるえぞ松をスプルー
スでサンドイッチしたランバーコア構造で,コア材の継ぎ目はフィンガージョイント構造として高い接合強度と響きの美しさ
を実現していました。サイドバッフルには,針葉樹系高密度パーチクルボードを採用していました。エンクロージャー表面
にはリアバッフルも含めて,すべてバイオリンの高級品と同様な楓材を貼って19行程にも及ぶ入念な塗装が施され,美
しく音の良いエンクロージャーを徹底追及していました。
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ネットワークは,SXシリーズ伝統の技術を受け継ぎつつ最新の技術を投入した高耐入力・低歪率タイプで,素子の結線に
は安定度の高いカシメ方式を採用し,配線材には特殊な同芯撚り構造のOFC(無酸素銅)線を使用していました。
以上のように,SX-10spiritは,SXシリーズの集大成と呼ぶにふさわしい美しい仕上げのエンクロージャーと伝統のソフト
ドームユニットならではのなめらかで優美な音を持ったまさに名機と呼ぶにふさわしいスピーカーシステムでした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
栄光の美の頂きにこだますSXスピリット,
自然の味わいも深い集大成モデルです。
◎ヴァイオリン・カラーの六面仕上げ
クローズド・スクエアーキャビネット。
◎西独クルトミュラー社との共同開発による
ノンプレス・コーン紙を用いた
コニカルドーム付き32cmウーハー。
◎タンジェンシャル・エッジと一体成形の
6.5cmソフトドーム・スコーカー。
◎シルクのオーバートーン
3.5cmソフトドーム・ツィーター。
◎あらゆる面から検討しつくされた
高耐入力・低歪率ネットワーク。
種類 | 3ウェイ密閉型 |
スピーカー・ユニット | 32cmコーン
6.5cmソフトドーム 3.5cmソフトドーム |
最大入力 | 120W(ミュージックパワー) |
再生周波数帯域 | 35Hz〜20,000Hz |
インピーダンス | 4Ω |
出力音圧レベル | 91dB/W・m |
クロスオーバー周波数 | 450Hz,4000Hz |
レベルコントロール | 定抵抗連続可変型 |
寸法 | 356W×633H×316Dmm |
重量 | 24.0kg |
※本ページに掲載したSX-10spiritの写真・仕様表等は1982年11月の
Victorのカタログより抜粋したもので,日本ビクター株式会社に著作権が
あります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは
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