SU-50Aの写真
Technics SU-50A
SOLIDSTATE PRE-MAIN AMPLIFIER ¥95,000

1969年にテクニクスが発売したプリメインアンプ。総合家電メーカー・松下電器の中で1965年
に誕生したテクニクスブランドは,次々と高い技術力を発揮して画期的なモデルを発売していきま
した。管球式パワーアンプSU-20Aで5パラレルプッシュプルによりOTL(アウトプット・トランス・レ
ス)を実現したテクニクスは,このSU-50Aで国産初のOCL(アウトプット・コンデンサー・レス)を
実現し,その後OCLはアンプ回路として一般化していきました。

1960年代,トランジスタアンプでは低出力インピーダンス化が図られ,OTLは常識化していまし
たが,直流のもれを抑えてスピーカーを保護するためにアウトプット・コンデンサーが入れられて
いました。SU-50Aは,この常識に挑戦し,全段直結OCLということで回路にシリーズに入るコン
デンサーをすべて取り除いてしまった画期的な1台となりました。

SU-50Aのメインアンプ部は,2段構成の差動増幅回路と上記のように2電源方式によるOCL回
路を採用し,全段直結方式となっていました。出力コンデンサのない回路構成により,低域特性が
大きく向上し,安定度,直線性もすぐれ,5Hz〜150kHzの広帯域にわたりフラットな周波数特性
を実現していました。また,直流域までダンピングファクタの低下もほとんどなく,直流域でもダンピ
ングファクタが100以上を示すなど,クリアな低域再生が可能となっていました。

プリアンプ部は,低ノイズのPNPトランジスタによる3段直結NF型でイコライザー段が構成され,広
いダイナミックレンジと高SN比を実現していました。
高精度なパーツと設計により,イコライザー段はRIAA偏差±0.5dB以内と正確なイコライザーカー
ブが確保されていました。
このイコライザー段の優秀さは,評論家・柳沢氏が自身の大規模なマルチアンプシステム(パワーア
ンプはマークレビンソン!)の中のプリアンプ部として長く使用していたことでも知られていました。

トーンコントロールは,特殊2連ボリュームを使ったテクニクス独自の方式がとられ,銀導体と抵抗体
を組み合わせた特殊な構造で,中点では両方のブラシが銀導体に触れ,すべてのコンデンサが回
路から外れて,完全にフラットな特性となり,使用時にも特性のうねりや歪みの増加も極小に抑えら
れていました。

SU-50Aの内部

スピーカー端子はA,B2系統備えられ,フロントのプッシュスイッチで切り換えられるようになってい
ました。ACアウトレットも4系統備えられ,システムセンターとして使い易い設計となっていました。
プリとメインが独立可能で,プリアウトは,定格出力1V(LOW)と,5V(HIGH)が備えられ,マルチ
チャンネルアンプ方式などの場合に便利になっていました。(当時4ch方式が隆盛のじきでもありま
した。)

フロントパネルは,独特の雰囲気を持ったデザインで,スイッチを入れるとフロントパネルの緑色の
文字が浮かび上がるなど,当時シルバーパネルの多かったオーディオ機器の中でも異彩を放って
いました。丸いツマミとプッシュスイッチを配置したパネル面はよく整理され,使い易いアンプでもあり
ました。

保護回路は,トランジスタ4石,ダイオード2石を使った贅沢な設計で,パワートランジスタの動作点
を検出し,安全動作を保つ自動制御保護装置,温度変化による自動修正回路を装備していました。
しかも,瞬間復帰型のため,過大電流が流れても信号がクリップするだけで,動作は中断しない独
特の構成となっていました。

以上のように,SU-50Aはテクニクスブランドを立ち上げていた松下電器の高い意欲が表に出た画
期的な1台で,その先進的な設計は当時アッと驚くものでした。歪み感が少なく豊かで温かみをもった
音は,すでにテクニクストーンを成し,当時高い評価を得ることとなりました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



 本機は,テクニクス10A 20A 30A 40Aと一連の管球式アンプ
を開発してきたテクニクス技術を,集大成して創り上げた,トランジ
スタ式のプリ・メインアンプです。いまやソリッドステートアンプの常
識ともなった,全段直結差動増幅OCL回路の優秀性を示したのは,
このSU-50A。また,トランジスタアンプは石くさい音・・・という常識
を打ち破ったのも本機です。
回路技術の優秀性,音質の柔らかさ,豊かさは,発表以来,常にプリ
メインアンプの最高峰にランクされ続けています。


◎全段直結差動増幅OCL回路のメインアンプ
◎直流域までフラットに伸びたダンピングファクタ
◎高SN比,広いダイナミックレンジを誇る
 プリアンプ
◎正確なイコライザ特性
◎中点で完全にフラットな特性が得られる
 テクニクス式トーンコントロール回路
◎瞬間復帰型の保護回路
◎高級感あふれる斬新なデザイン
 操作しやすいフロントパネル
◎4つのACアウトレット
◎2組のスピーカが接続できます
◎2系統のプリアンプ出力端子




●SU-50A 定格●

形式
ソリッドステートプリ・メインアンプ
回路方式
全段直結差動増幅SEPP OTL-OCL回路
使用石
43トランジスタ,17ダイオード



●メインアンプ部●

出力ミュージックパワー
(IHF)
120W(4Ω)
 80W(8Ω)
 50W(16Ω)
定格出力(IHF)
40W/40W(4Ω)
30W/30W(8Ω)
20W/20W(16Ω)
周波数特性(定格出力時)
5Hz〜150kHz
SN比
(IHF,Aネットワーク,入力ショート)
95dB以上
入力感度/インピーダンス
1V/50kΩ
ダンピングファクタ
150(8Ω)
適合負荷インピーダンス
4Ω〜16Ω
トランジスタ保護回路
ASO検出方式瞬間復帰型



●プリアンプ部●

入力感度/インピーダンス
(1kHz,VR max)
PHONO1,2:1mV/47kΩ
TUNER:100mV/70kΩ
AUX1,2:100mV/70kΩ
最大許容入力
(1kHz,歪率0.1%)
PHONO1,2:140mV
TUNER:10V
AUX1,2:10V
出力電圧/インピーダンス
定格出力
 1V/3kΩ(LOW)
 5V/200Ω(HIGH)
最大出力(1kHz,歪率0.1%)
 9V(HIGH)
テープモニタ
REC OUT:100mV/200Ω
PLAYBACK:100mV/70kΩ
REC/PLAY(DIN):30mV/60kΩ(IN),100mV/70kΩ(OUT)
SN比
(IHF,Aネットワーク,入力ショート)
PHONO1,2:70dB以上
TUNER:90dB以上
AUX1,2:90dB以上
全高調波歪率
0.1%以下
周波数特性(1)
(HIGH,VR max,TCflat)
PHONO1,2:RIAA標準カーブからの偏差±0.5dB以内
TUNER:5Hz〜200kHz+0,−3dB
AUX1,2:5Hz〜200kHz+0,−3dB
周波数特性(2)
(LOW,VR max,TCflat)
PHONO1,2:RIAA標準カーブからの偏差±0.5dB以内
TUNER:5Hz〜150kHz+0,−3dB
AUX1,2:5Hz〜150kHz+0,−3dB
トーンコントロール
BASS:+15dB〜−15dB
 ターンオーバー周波数250Hz,500Hz
TREBLE:+15dB〜−15dB
 ターンオーバー周波数2.5kHz,5kHz
フィルタ
低域:30Hz −12dB/oct
高域:8kHz −12dB/oct
ミューティング
−20dB
ファンクション
スピーカ切換えスイッチ
(スピーカ端子2系統)
ヘッドホンジャック
(低インピーダンス)



●総合●

電源
AC 50/60Hz 100V,117V,220V,240V
消費電力
175VA(定格出力時),35VA(無信号時)
外形寸法
420W×147H×325Dmm
重量
13.5kg


※本ページに掲載したSU-50Aの写真,仕様表等は1973年
4月のTechnicsのカタログより抜粋したもので,松下電器産業
株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を
無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注
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