G9の写真
SONY SS-G9
4WAY FLOOR TYPE SPEAKER ¥288,000(1台)

1978年にソニーが発売した大型のフロア形スピーカーシステム。1976年にG7を発売して高い評価を得ていた
「Gシリーズ」の最上級機として発売されました。4ウェイユニットをG7よりさらに大型のエンクロージャーに納めた
その偉容は,迫力あるものでした。

G9の特徴の1つは,G7にも採用されていた「PLUMB IN LINE方式」でした。前後方向の定位を改善ずるた
めにウーファーユニットが前に出ていて,スコーカー,トゥイーターなどの全ユニットの等価的な音源位置を鉛直線
上にそろえたもので,テクニクスの「リニアフェイズ」と同様な考え方で位相をコントロールするものだったと思われ
ます。G9の場合は4ウェイですから,より厳密で高度な位相管理が必要であったでしょう。

この「Gシリーズ」の設計に当たって,ソニーは当時のカタログによるとNASTRAN(有限要素法)というコンピュー
タを用いた物体の高速運動時の形状変化を分析する手法を導入し,ユニットのコーン紙の形状の決定に応用した
とのことでした。ウーファーユニットは38cm口径の半頂角60度のストレートコーンで,北欧産のパルプを混入した
パルプコーンをベースにカーボンを混抄した当時,ソニー自慢のCARBOCON(カーボコン」ユニットでした。同心
円状のリブコルゲーションが施され,総磁束214,000マクスウェルの強力磁気回路でドライブされ,力強い低音
再生を可能にした強力なウーファーユニットでした。エッジ等のダンプ材が7回の手塗り作業で仕上げられているこ
とも売りものでした。
ミッドローユニッは,通常のスピーカーのウーファー並の20cm口径のコーン型で,ウーファー同様,北欧産のパル
プを混入して漉き上げたパルプコーンをベースにカーボンを混抄したCARBOCONユニットでした。このミッドローユ
ニットにより,ウーファーは300Hz以下を受け持つだけでよくなり,負担が軽減され,低域特性の向上が図られて
いました。

ウーファーのダンプ材塗布

ミッドハイとトゥイーターはそれぞれ8cmと3.5cmのバランスドライブ型ユニットでした。このバランスドライブ型は通常
のコーン型より大きなセンタードームを持ち,有効面積を小さくした形のユニットで,ソニーがこのGシリーズ以前から採
用していたものでした。特に,トゥイーターは,軽量で剛性の高い20μチタン箔を一体深絞り成形でバランスドライブ型
に加工したものを,18,000ガウスの強力な磁気回路で駆動する強力なユニットとなっていました。

G9のユニット

ネットワークは,1.8mm銅線を用いて特殊樹脂で封入成形して振動を抑えたインダクターと無共振コンデンサーで構
成され,内部配線には,すべて無酸素銅56芯のリッツ線が用いられ,マルチ入力端子も設けられていました。

G9のネットワーク

エンクロージャーは,パーティクルボード製で,バスレフ型で160リットルもの容量を誇る大型のもので,各面の共振
周波数をコンピュータを用いて測定し,箱鳴りを効果的に抑えた設計でした。バッフル面には,ソニー独自の「AGボード」
を採用していました。「AGボード」は,バッフルボードからの不要な反射が直接波に悪影響をえる現象を抑えるために,
バッフル面に無数の縦横の溝を刻み反射波が散乱するようにしたもので「Accuusticcal Grooved Board」(アコース
ティカル・グルーブド・ボード)の略でした。そして,これが「Gシリーズ」に共通した,外観上のもう一つの特徴になっていま
した。

以上のように,SS-G9は,「Gシリーズ」の最上級機として,贅を尽くした作り,先進技術と徹底した試聴により作り込ま
れた設計により,ユニットのくせを感じさせず,雄大な音を聴かせてくれるスピーカーとなっていました。記憶に残る名機
の一つだと思います。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 
 

日本から世界に,
ひとつの音とひとつの主張。
音像感と音場感をともに高めた
ソニースピーカーづくりの
頂点に立つひとつです。
 
 

●主な仕様●


型式 4ウェイ位相反転式フロアー型
ユニット構成 低音用:38cmコーン型 
中低音用:20cmコーン型
中高音用:8cmバランスドライブ型
高音用:3.5cmバランスドライブ型
クロスオーバー周波数 300Hz,1.2kHz,5kHz
公称インピーダンス 8Ω
実効周波数帯域 27Hz〜22,000Hz
出力音圧レベル 94dB/W/m
最大出力音圧レベル 115dB/W/m
定格最大入力 120W
瞬間最大入力 300W
レベルコントロール 中低音用:+3dB〜−47dB連続可変
中高音用:+2dB〜−48dB連続可変
高音用:+0dB〜−50dB連続可変
入力端子 フルレンジインプット/マルチ切換
外形寸法 600(幅)×1050(高さ)×455(奥行)mm
重量 87kg
※本ページに掲載したSS-G9の写真・仕様表等は1979年9月のSONY
のカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権があります。した
がって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられ
ていますので,ご注意ください。
 

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