Sm-1000の写真
marantz Sm1000
STEREO POWER AMPLIFIER ¥950,000

1979年にマランツが発売したパワーアンプ。マランツはもともとアメリカのブランドでしたが,1975年に
スタンダード工業が日本マランツとなり,その後1980年にはフィリップス傘下に入りました。現在では
日本マランツはオーディオマインド溢れる国内ブランドとして親しまれています。このSm1000は,その
日本マランツの歴史の 中でも最大級の出力を誇る大型のパワーアンプでした。

パワーブロックは,全段完全プッシュプル構成で,Pc(コレクタ損失)200Wのパワートランジスターを片
チャンネル18本使用したものとなっていました。3本ずつ6つのグループに分け,6つのドライバーで駆動
し,リニアリティの良い部分だけを使った回路となっていました。さらにオープンループゲインを56〜57dB
と極めて低く抑えたため,NF量を真空管アンプなみに減少させ,TIMの少ない設計となっていました。

回路は,コンピューター用に開発された信頼性の高いガラスエポキシ両面スルーホール基板に,特性を
揃えたデュアルトランジスター,ダイオードアレイを各ポイントに使い,これらを完全対称に配置して,電気
的にも温度的にも係数を完全に一致するようにして,素材と回路両面からDCドリフトを追放していました。

電源部は,800VAの容量を持つカットコアトランスと23,500μFの大容量オーディオ用コ ンデンサーを
左右独立で搭載し,左右対称に並べて,モノラルアンプ2台分ともいえる完全な左右独立の電源部となっ
ていました。

Sm-1000の内部Sm-1000の冷却システム

パワートランジスターの冷却には,P510でも使用されていた「フィンガーヒートディシペーター」を搭載して
いました。これは,長さの違う5種類のフィンをそれぞれのパワートランジスターに取り付け,サイド方向に
走る通風経路に冷却ファンによって風を通して強制空冷するもので,ヒートシンクの温度を検出し,常に一
定温度を保つように冷却ファンの回転を自動可変して,温度ムラによる音質の変化を起こさないようにして
いました。

前面パネルには大型のパワーメーターが装備されていました。対数圧縮型で,最大出力までレンジ切換
なしでモニターするもので,8Ω時の出力表示のピークメーターでした。
スピーカー端子は3系統ありました。そのうち1系統はスイッチ類を全く通らずスピーカープロテクトリレーさ
えも排され,ダイレクトに信号を伝送する設計となっていました。万一スピーカー端子にDC成分が発生した
場合には,独自のSCRクローバーサーキットが検出してただちに1次側ヒューズを切り保護するようになっ
ていました。他の2系統はSUB1,SUB2として前面シーリングパネル内のスイッチで切り換えが可能と
なっていました。また,入力端子はDCアンプの他に,プリによってコンデンサーを介するAC入力にもなる
ように前面のスイッチで選択できるようになっていました。また,RCAピンターミナルの他に,プロユースの
キャノン端子も装備されていました。

以上のように,Sm1000は,プレステージ機として開発され,大出力ながら荒さを抑えたしっかりした音を
持った高性能パワーアンプでした。当時,各種賞も受賞し高い評価を得ることとなり,日本マランツのブラ
ンドイメージも高めた1台でした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


原音再生を追い詰めた
音への執着が,ここに結集。
◎オーディオファンの理想といえる
 高度な技術を駆使したパワーアンプブロック。
◎素材と回路のシンメトリー化から,
 DCドリフトの発生を防いでいます。
◎むだな接点を排し,しかも信頼性の高い
 スピーカープロテクトサーキット。
◎各チャンネルの干渉をパーフェクトに
 抑えた左右独立構成。
◎放熱効果に優れた独自のフィンガー
 ヒートディシペーターによる冷却システム。
◎出力レベル,チャンネルのバランスチェック
 しやすい大型高精度パワーメーター採用。
◎音質重視の装備の数々。

 
 
 
●Sm1000 SPCIFICATION●

 
定格出力(20Hz〜20kHz) 400W+400W(8Ω)
650W+650W(4Ω)
全高調波歪率(20Hz〜20kHz) 0.01%(8Ω)
0.03%(4Ω)
混変調歪率(SMPTE)
0.01%
周波数特性 20Hz〜20kHz +0,−0.2dB
DC〜100kHz +0,−1.0dB
入力感度及びインピーダンス 2.83V/27kΩ
ダンピングファクター(8Ω) 300
残留雑音 26μV(Aネットワーク)
SN比 126dB(Aネットワーク)
電源 100V 50Hz/60Hz
消費電力(電気用品取締法) 985W
寸法 483W×178H×550Dmm
重量 42kg


Sm700の写真
marantz  Sm700
STEREO POWER AMPLIFIER ¥690, 000

同じ1981年にマランツは,プレステージモデルSm1000の弟機としてSm700を発売しまし
た。基本的によく似た設計で,Sm1000直系の高級パワーアンプでした。デザイン的にはサ
イドウッドが付いたより落ち着いたデザインで,Sc1000と 同じ年に発売されただけあって,デ
ザイン的マッチングがとれていまし た。

パワーブロックは,許容損失200Wのメタルキャン・パワートランジスターを片チャンネル当たり
12本使用し,これらをリニアリティのよい部分で動作させることで,強力な電流ドライブ能力と,
出力の低インピーダンス化・低歪率化を実現していました。
出力段を含む全段が完全プッシュプル構成の完全DCアンプとして構成され,入力から出力まで
Low-TIM化が図られていました。
電源部は,大容量800VAのカットコアトランスとカスタムコンデンサーが搭載され,L・R 完全独
立構成の強力なものでした。この強力な電源部とパワーブロックにより,265W+256W(8Ω)
450W+450W(4Ω)という大出力を実現していました。

スピーカー出力は,Sm1000同様に,DIRECT1系統,SUB2系統が搭載され,保護回路SCR
クローバーサーキット,フィンガーデシペーターとスピード2段階自動切換のクーリングファンによる
放熱システムなども継承されていました。
また,マランツブルーと称するブルーパネル面を持つアナログ式大型ピークパワーメーターも搭載
され,マランツらしい顔をもたらしていました。

以上のように,Sm700は,Sc1000のナイスペアとして,Sm1000の弟機としてすぐれた性能を
もつパワーアンプでした。2年間の新しさが,厚みと重量感がありながら,鮮明で力強い音に表れた
実力派のハイパワーアンプでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



理想アンプへの挑戦
クオリティ追求の姿勢が
究極の再現力を持った。

◎音楽の感動をストレートに表現する
 パワークオリ ティー
◎至高のパワーク オリティーを
 強力に支える電 源部




●Sm700 SPECIFICATION●

定格出力(20Hz〜20kHz) 265W+265W(8Ω)
450W+450W(4Ω)
全高調波歪率(20Hz〜20kHz) 0.01%(8Ω)
混変調歪率(SMPTE)
0.01%
周波数特性 20Hz〜20kHz +0,−0.2dB
DC〜100kHz +0,−1.0dB
入力感度及びインピーダンス 1.5V/70kΩ
ダンピングファクター(8Ω) 300
残留雑音 26μV(Aネットワーク)
SN比 123dB(Aネットワーク)
電源 100V 50Hz/60Hz
消費電力(電気用品取締法) 580W
寸法 482W×182H×522Dmm
重量 48kg


※本ページに掲載したSm1000の写真,仕様表等は1980年10月の
 marantzのカタログより抜粋したもので,日本マランツ株式会社に著作権
 があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは
 法律で禁じられていますのでご注意ください。

 
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