1986年にオンキョーが発売した高級ブックシェルフ形スピーカー。大きさや外観等は下位機のMONITOR2001と
ONKYO Scepter 5001
3Way Speaker System ¥400,000(1台)
さほど変わりませんが,その中に投入された物量は70kg以上の重量が物語るようにものすごいもので,高剛性・無
共振をまさに地でいくスピーカーでした。セプター5001の最大の特徴は,”Isolated Mount System(アイソレーティッド・マウント・システム)”と名付けら
れた,ユニットの搭載方式でした。エンクロージャーの不要共振及びスピーカーユニット相互の振動干渉による歪みを
防ぐために,ウーファーとトゥイーターユニットを前面バッフルから振動的に独立させながらリジッドに固定し,さらに各
ユニット間の振動伝達経路を遮断するというものでした。写真のようにウーファーユニットは強固なフレームにより,ま
た,ミッドレンジユニットも後方に伸びるフレームによりしっかり固定され,かつフロントバッフルとの間は一切ネジが
見られないことからも分かるように独立していました。これらの結果,わずかな音像の滲みの原因になっていたフロン
トバッフルのバイブレーションが1/10にまで低減されていたということでした。
ウーファーユニットには,オンキョー自慢の35cm口径ピュア・クロスカーボンユニットを搭載していました。従来機に比べ
より細いファイバーを高密度に編み上げたコーンを使用し,高い剛性はそのままにより軽量化を図り,信号応答性を高め
ていました。さらに,ウーファーユニットとしてははじめて振動板に共振解消構造を採用し,高剛性ユニットとしては画期
的にフラットな音圧特性と優れた過渡特性を実現していました。このウーファーに採用された共振解消構造は,コーン型
振動板の高域共振周波数を決める半項角(ボイスコイルとコーンとの角度)を部分的に2種類に変化する構造とすること
で,共振のピークを分散し,エッジの材質をコントロールすることで周波数特性をより広帯域化・フラット化するというもの
でした。この優れた振動板をφ220×φ110×25tmmという大型のマグネットとφ100mmの大口径ボイスコイルで
高い応答性を持って駆動していました。スコーカーユニットは,ダイヤモンド結合被膜振動板による8cm口径ドーム型ユニットを搭載していました。このダイヤモ
ンド結合被膜振動板は,チタンを基材とし,基材のチタンそのものをプラズマ加工によりセラミック化して純チタンの4.5
倍の強度を確保するもので,表面硬化処理部分と基材のチタンとの間の境界面がなく厚みや重量の変化もないため優
れた耐久性・信頼性を誇りました。しかも裏表両面に加工することで,軽量・高剛性という特性をより高めていました。
さらに,高精度なレーザー加工により,ドーム型振動板の周囲の2カ所に切り込みを入れて,共振を周方向に分散する
共振解消構造を施すことで,歪みを大きく低減していました。トゥイーターユニットは,2.5cm口径のドーム型ユニットで,スコーカーと同様のダイヤモンド結合被膜振動板と共振解消
テクノロジーを融合させた高性能ユニットで,低歪みで可聴帯域を超える45,000Hzまでの再生を可能にしていました。ネットワークは,厳選された高性能パーツを使用し,パーツのわずかな振動が与える影響も排除するために,「ジルコンサ
ンド充填ネットワークボックス」を採用していました。これは,近接させても相互干渉の問題がないネットワークの大部分の
部品を専用ネットワークボックスの中に収納し,これに,きわめて細かく高比重なジルコンサンドを充填したもので,ネット
ワークパーツ類の微振動が取り除かれ,不要共振による歪みが完全に排除されるというものでした。チョークコイルは,ネ
ットワークボックスの外側に配置され,相互干渉を防ぎ,そのうえ,ネットワークの純度を保つため,プリント基板やハンダは
全く使用せず,各素子と配線はすべて圧着端子でダイレクトに接続されていました。以上のように,Scepter5001は,オーソドックスな外観に凝りに凝った中身を凝縮した高性能なスピーカーシステムでした。
当時,その全く硬さや歪み感を感じさせることなく,細かな音まで自然に再生する音には驚かされました。欲しいとは思いま
したが,その価格に手が出なかった憧れの1台として心に引っかかっている1台です。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
−高剛性と無共振とを融合させた,音楽再生純化の新領域−Purityの到達点。
◎高剛性振動板素材の開発
◎共振解消構造ダイヤフラム
◎システム全体に無共振思想を徹底
形式 | 3ウェイ・バスレフ型 |
インピーダンス | 4Ω |
最大入力 | 300W |
出力音圧レベル | 90dB/W/m |
再生周波数帯域 | 20Hz〜45,000Hz |
クロスオーバー周波数 | 400Hz,3500Hz |
キャビネット内容積 | 113リットル |
使用スピーカー | ウーファー:35cmピュア・クロスカーボンコーン型
スコーカー:5cmダイヤモンド結合皮膜振動板ドーム型 ツイーター:2.5cmダイヤモンド結合皮膜振動板ドーム型 |
外形寸法 | 432W×756H×490Dmm |
重量 | 73.5kg |
※本ページに掲載したScepter5001の写真,仕様表等は1987年2月の
ONKYOのカタログより抜粋したもので,オンキョー株式会社に著作権があ
ります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律
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