SC-Λ99の写真
Aurex SC-Λ99
POWER AMPLIFIER ¥550,000

1981年にオーレックス(東芝)が発売したパワーアンプ。あのプリアンプの名機SY-Λ88Uとのペアを想定さ
れた同社の最高級機で,外観は素っ気なくシンプルですが,同社自慢のΛコンデンサーをはじめ,パーツにしっ
かりとお金をかけた中身が贅沢なパワーアンプでした。

SY-Λ88UとSC-Λ99の組み合わせ

回路構成は,デュアルFET差動カスコード接続,3段ダーリントン接続,トリプルパラレル出力段の完全対称型
になっていました。出力段は,Pc150WのスーパーfTパワートランジスタを使用し,150W×3=450Wの許容
電力を確保し,純A級動作で50W+50W,AB級動作で200W+200Wのハイパワーを実現していました。
また,裸特性を重視し,高域の位相補正用コンデンサーの容量と数を少なく抑え,高域まで安定したゲインを得る
構成として,小出力時から大出力時までの歪み,特に高域の歪みを抑え込み,純A級動作で0.0028%(定格
出力時,20Hz〜20kHz,8Ω),AB級動作で0.003%(定格出力時,20Hz〜20kHz,8Ω)の低歪みを実
現していました。

SC-Λ99はデジタル時代に備え,高SN比化も図られていました。入力段に1チップデュアルFET(2SK270A
-Nch,2SJ90A-Pch)を完全対称型で使用し,ローノイズ,ローインピーダンスの「スーパーΛ電源」の搭載,
280μ厚のPC板の使用,ワイヤリングシンプル化などにより,パワーアンプとしては−128dBの入力換算雑音
を実現していました。当時の一般的なパワーアンプでは,およそ−120dBですから,8dBの差はパワー値に換算
して約6倍のダイナミックレンジを持つということで,オーレックスもその優秀性を主張していました。

「スーパーΛ電源」は,純A級動作では特に電源部のインピーダンスがアンプの動作に影響を与えるため,AC電
源→アンプ間のローインピーダンス化を促進したもので,DC〜100kHzまで,わずか0.5mΩという超ローインピ
ーダンスでローノイズを実現していました。
「スーパーΛ電源」の中心部は差動1段としてシンプル化を促進し,高ゲイン,高安定度で応答性にすぐれた電源
部としていました。また,制御用電力トランジスタをパラレル使用することで電源に充分な余裕を確保していました。
ACコードは,大容量15A極性表示付のものを使用し,電源トランスには,大型のパワー用トロイダルトランスとドラ
イバー回路用のトロイダルトランスの大小2個のトランスを搭載するという強力な構成となっていました。
さらに,パワースイッチを大容量のものとし,整流器,電解コンデンサー,各種フィルムコンデンサーなどをパラレル
使用することでインピーダンスを1/2に引き下げ,ローインピーダンス化を徹底していました。

SC-Λ99の高品質パーツ

SC-Λ99には,新開発の高性能素子が数多く搭載され,パーツの面で実に贅沢な作りとなっていました。
電源用大形電解コンデンサーには,新開発のものが採用され,18,000μF/80V×4,1,000μF/80V×4
820μF/80V×4,560μF/100V×4という構成になっていました。アンプ全体のローインピーダンス化に加
えて,異種金属の接触の減少と振動防止の側面からも高品質なパーツが採用されていました。信号系および電源
系のコンデンサーは,すべて銅箔スチロールコンデンサーとuΛ-U形Λコンデンサーが使用され,理想的な銅箔使
用の素子が要所に投入されていました。インジケーター部を除くすべてのプリント基板に,純度の高い無酸素銅280
μ厚のガラスエポキシ基板が使用され,ローインピーダンス化と基板自体の振動抑制が図られていました。
出力段のエミッタ抵抗には,銅を抵抗体としたΛ抵抗をふくむ「Λループ」が採用され,大電流の流れる経路はすべ
て銅を使用した素子で統一されていました。

ワンチップデュアルFETヒートパイプ

放熱には,気化熱を利用したヒートパイプが搭載され,銅棒に比べて高い熱伝導率を確保していました。このヒート
パイプには,アルミ押し出し材の大形のヒートシンクが取り付けられていました。パワートランジスタ取付部は,大形
のアルミ材と2mm厚銅板によるサンドイッチ構造が採用され,高い放熱効果とトランジスタの振動抑制が図られて
いました。シャーシ構造も完全な左右の干渉を防ぐ左右対称型で,フラックス(磁束)がシャーシを廻ることを防ぐた
めに良質なアルミ材が使用されていました。

SC-Λ99の内部

以上のように,SC-Λ99は,パーツの高品質化と信号通過系のシンプル化を徹底して図ることで,色づけを徹底
して排除した高性能パワーアンプでした。その設計のねらい通り,色づけの少ない癖がなく力を秘めた音をもって
いました。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




素子から基板まで,
純A級パワーアンプを追求。
デジタルソースにも余裕しゃくしゃく。

一点一点の部品からシャーシ構造,内部レイアウトをはじめ,
高性能素子によるΛ電源,Λループなどあらゆる面で音質を追求。
純A級独特のキメ細かさと力強さを両立させた,パワーアンプSC-Λ99。
あふれんばかりの情報量が,次元の高い音を繰り出します。

◎純A級動作50W+50W,AB級動作200W+200W
◎20kHzまで,A級0.0028%,AB級0.003%の低歪率
◎デジタル時代の高SN比−128dB(入力換算)
◎ダンピングファクタ−500を実現
◎信号経路のシンプル化を促進する,スーパーΛ電源
 ●カスコードカレントミラー差動1段の帰還形電源部
 ●あらゆる面で音質を追求
 ●高性能素子をパラレル使用
◎新開発の高性能素子を,惜しみなく投入
◎新開発ハイgmローノイズワンチップデュアルFET
◎重量級の大形無振動タイプのヒートパイプブロック
◎アルミ材を主材にした,特殊シャーシ構造
●主な仕様●


定格出力
(20Hz〜20kHz)
A級  50W+50W
AB級 200W+200W
全高調波歪率
(20Hz〜20kHz,8Ω)
A級  定格出力時0.0028%
     1/2出力時0.0025%
AB級 定格出力時0.003%
     1/2出力時0.0028%
混変調歪率
(50Hz:7kHz=4:1)
A級  定格出力時0.0028%
     1/2出力時0.0025%
AB級 定格出力時0.003%
     1/2出力時0.0028%
周波数特性 DC〜500kHz +0 −1.5dB
出力帯域幅 A級  5Hz〜100kHz(8Ω,0.005%歪,−3dB)
AB級 5Hz〜100kHz(8Ω,0.01%歪,−3dB)
入力感度(インピーダンス) A級  0.67V(50kΩ)
AB級 1.34V(50kΩ)
残留雑音 70μV(8Ω,入力ショート)
SN比(IHF,Aネット) −128dB(入力換算)
ダンピングファクター 500(1kHz,8Ω)
スピーカーインピーダンス 4Ω〜16Ω
電源電圧 AC100V 50/60Hz
消費電力 370W
外形寸法 450W×172H×473Dmm
重量 30kg
※本ページに掲載したSC-Λ99の写真,仕様表等は1981年12月のAurex
 のカタログより抜粋したもので,東芝株式会社に著作権があります。
 したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられ
 ていますのでご注意ください。
 
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