marantz Sc1000
STEREO CONTROL CONSOLE ¥490,000
1981年にマランツが発売したコントロールアンプ。もともとアメリカのブランドだったマランツは,
1975年にスタンダード工業から名称を変え て日本マランツとなり,その後1980年にはフィリッ
プス傘下に入りました。現在では日本マランツ は国内でも数少ない高級オーディオブランドとして
頑張っています。Sc-1000は,大出力形パワーアンプ
Sm1000,
Sm700等とのペアを想定
されたコントロールアンプでした。
Sc1000は,コントロールアンプと称しながら,できるだけ信号経路をシンプル&ストレート化し
音の純度を高めようとした設計が大きな特徴でした。全体の構成としては,全ブロックを完全プッ
シュプルの純A級DCユニットアンプ化して裸特性が高められていました。シャーシ構造は,磁気
ループを作らないように配慮された構造となっていました。
また,パワーアンプへの出力をトーンコントロールを経由するTONE OUTとトーンコントロール
を全く通らずよりシンプルな信号経路とされたFLAT OUTの2系統の出力が独立して設けられ
ていました。両出力とも,あらゆる負荷条件で 50Ωという安定した超低出力インピーダンスが実
現されていました。出力は,ピンジャックと並行にバランス出力端子も装備されていました。
ボリュームは,L・R独立可変の高精度コンダクティブ方式が採用され,バランスコントロールは
省略されていました。トーンコントロールも音質劣化や特性の乱れをできるだけ避けるように,
プッシュスイッチ形とされていました。
パネル面は,電源スイッチ,入力切換スイッチとボリュームのみのシンプルなもので,トーンコン
トロールなど,その他の機能はシーリングパネル内に納められていました。
Sc1000のもう一つの大きな特徴として,信号系を電源変動から開放するため,シャーシの半
分を占めるほどの強力な,電源部を搭載していることがありました。事実上の電源インピーダン
スゼロを実現した6組のシャントレギュレーターを含む8組の独立パワーサプライを搭載するとい
う,コントロールアンプでは前代未聞の電源部でした。
イコライザー回路は,ダイナミックレンジと過渡応答特性に優れたNF-CR型が搭載され,高精度
CR素子により,RIAA偏差20Hz〜100kHz±0.2dBを実現していました。また,このクラスの
コントロールアンプを使用するユーザー層を考慮し,ユーザー自らがMCへのステップアップ手段
や機材を選び,微妙な音作りを楽しむという方 向で,MCカートリッジに対するステップアップ回路
はあえて内蔵されていませんでした。
パーツも厳選されたものが使用され,各ユニッ トアンプ間等の配線は,高純度無酸素銅線と高シー
ルド効果を持つ同軸ケーブルが用いられ,一般的なハンダ付けで問題となるハンダ素材による音
質劣化にも配慮してコネクターを用いない圧着方式がとられていました。電源コードは,極性表示
付き大容量15Aのものが搭載され,フロントパネルのツマミはアルミブロックからの削り出しが使
用されていました。ウッドキャビネットも美しいピアノフィニッシュが施されていました。
以上のように,Sc1000は,当時のマランツが最高級機として作り上げた高性能なコントロール
アンプで,往年のマランツサウンドの華やかな香りをわずかに残しつつ,より現代的な方向の,鮮
明で濁りのない音は,高い評価を得ていました。

marantz Mc1000
MC CARTRIDGE TRANSFORMER ¥120,000
MCカートリッジに対するステップアップ回路をもたないSc1000との組み合わせを想定した昇圧
トランスとしてMc1000が発売されていました。デザイン的にもマッチングがとれるよう,ゴールド
パネルとピアノフィニッシュのウッドキャビネットの組み合わせとなっており,マランツの個性を感じ
させる上品な外観となっていました。
昇圧トランスの音質に大きく影響するコアには,パーマロイ(透磁率の高い鉄とニッケルの合金)製
のE128規格のハイ・ミュー(高透磁率の意)コアがツインで搭載されていました。コイルには,0.6
φ無酸素銅線の巻線が用いられ,昇圧トランスとしては異例に大きなものとなっていました。このよ
うなツイン・ハイミュー・コア構成による高インダクタンスと極太コイルによる低直流抵抗とが両立さ
れ,0.001%以下という超 低歪率と昇圧トランスではヘッドアンプに比べて不利といわれる低域に
おいても優れた特性を実現していました。
特殊なコイル配列と三重のシールド構造により外部からの誘導ノイズを排除し,特殊充填剤によっ
てコアとコイルを固定して外部からの音圧などの影響による機械的振動の発生を抑えていました。
内部は左右独立構成で,40Ω/3Ωのそれぞれの端子に差し替える方式がとられ,アースラインの
切換の他は,インピーダンス切換/信号パススイッチが排され,コイル直結の出力端子とあわせ,信
号経路のシンプル化が徹底されていました。
入力端子から内部コイル,さらに出力端子に至る信号ラインには,音質・伝送特性に優れた無酸素
銅線が採用され,特に出力ラインは,無酸素銅のシールドコードの外側にパーマロイ編線を配した三
層構造がとられるなどして,信号経路の伝送特性が高められていました。
以上のように,Mc1000は,単体のMC昇圧トランスとしてパーツの面からもコンストラクションの面か
らも最高級機をめざしたハイグレードな設計と作りが特徴で,優れた低域特性に支えられた雄大で伸
び伸びとした音を実現していました。