Technics SB-MX200
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥232,000(ネット付,1本)
1988年にテクニクスが発売したトールボーイのフロア型スピーカーシステム。光沢ある突板仕上げの美しいエンクロー
ジャーに高性能なユニットを搭載し,トールボーイ型スピーカーに早くから取り組んでいたテクニクスの実力を発揮した
高性能なスピーカーシステムでした。

SB-MX200の大きな特徴は,すべてのユニットの振動板にピュアマイカを使用していることでした。天然素材である
マイカ(雲母)は,軽量でアルミニウムの約3倍の曲げ剛性を持ち,適度な内部損失を持つなど振動板素材として優
れた特性を持つもので,各オーディオメーカーで採用された例が見られるものです。SB-MX200では,天然マイカを
直径200μに微細化し,金型で振動板の形状に加熱硬化成形したものを振動板として使用していました。チタンより
も大きな比弾性率,内部損失を持ち,幅広いピストンモーション帯域を実現していました。

ウーファーは,27cm口径のコーン型で,TMD(Technics Monocoque Diaphragm)と称するコーン部とセンター
キャップ部一体構造の振動板を搭載していました。一体構造化し,数多くのコンピューターシミュレーションと試作によ
り決定された独自の形状により,従来のコーン型の約2倍ものピストンモーション帯域を実現し,SB-MX200のウー
ファーでは,3.5kHz以上までの帯域を確保していました。さらに,ピュアマイカ振動板に漆をコーティングして不要な
振動を抑制し,自然な響きを確保していました。光沢のある表面の仕上がりは工芸品的味わいもある美しいものでし
た。
磁気回路は,主マグネットに直径145mm,厚さ20mmのストロンチウムフェライトを,キャンセルマグネットに直径120
mm,厚さ15mmのバリウムフェライトを二重構造にして採用し,強力な駆動力と低い磁気漏洩を両立していました。
ボイスコイルは,ポリアミド系融着線による巻き幅24mmのロングエッジワイズ巻きで,250度もの耐熱性を持ち,高
耐入力かを実現していました。
フレームは亜鉛ダイカストを構造的にも共振を分散する形状として設計したもので,エンクロージャーへの取り付けも
内部から行い,フレーム外観部をラバーガスケットで覆ったシールデッドフレームとして不要輻射の影響を抑えていま
した。

SB-MX200のユニット

ミッドレンジは,6cm口径のピュアマイカドーム振動板で,ウーファーと同様に本漆コーティングが施されたものでし
た。直径60mmのエッジワイズ巻きボイスコイルで駆動され,10kHz以上までのピストンモーション帯域を実現して
いました。磁気回路には,主マグネットに直径130mm,厚さ20mm,キャンセルマグネットに直径110mm,厚さ15
mmのバリウムフェライトを二重構造にして採用し,銅リング,ボイスコイルの振幅がトッププレートから出ないショート
ボイスコイル化がなされ,低歪み化が図られていました。また,アルミダイカストパネルは微細繊維による防振リン
グを貼った防振設計とされ,外周はラバーガスケットでシールドされたシールデッドフレームとなっていました。

トゥイーターは,2.5cm口径のドーム型で,ピュアマイカにダイヤモンドをプラズマCVD法でコーティングした振動板
を搭載し,45kHz(−16kHz)という高域再生を実現していました。磁気回路には,強力な磁気特性を持つネオジ
ウムマグネットを採用し,ミッドレンジ同様,不要輻射を抑えるために防振塗装を施したアルミダイカストパネルを貼り
外周もラバーガスケットでシールドが施されていました。

SB-MX200の内部

エンクロージャーは,バッフル板面積を小さくして不要輻射を抑えるために幅をスリムにしたラウンドバッフルが採用
され,テクニクスが早くから取り組んでいたトールボーイスタイルになっていました。バッフル板はユニット相互の干渉
を抑えるためにウーファー用とトゥイーター,ミッドレンジ用に分割された構造とされ,ユニット取り付け部もウーファー
30mm,ミッドレンジ45mm,トゥイーター40mmと板厚が変えられ,スリムなバッフル板の効果と合わせて高い剛性
を確保していました。また,ウーファーの上下にはスリットを入れ,内部の桟には針葉樹素材を採用して振動伝搬モ
ードを変えるなど,ユニット相互の振動伝搬を抑えていました。さらに,ミッドレンジ,トゥイーターの周囲に粘弾性素
材を貼り付けるなど,不要音による影響を様々な局面から極力抑えるようになっていました。
SB-MX200のエンクロージャーは前面バッフルより奥行きが大きく,側板の面積が大きいという構造のため,側板
の振動を抑えるために,「クロス・ブリッジド・エンクロージャー」を採用していました。これは,SB-MX10で初めて採
用されたもので,スピーカー内中心部に仕切板状の補強板を組み込むことで,不必要な重量を増やさず,内容積を
むやみに減らすことなくエンクロージャー側板の振動を排除することができるというものでした。
エンクロージャー表面は,オーク突板仕上げで,非常に目のつまったオークの柾目を,光沢塗装することで美しい
外観と同時に,不要な共振や響きを抑制する効果も持たせていました。エンクロージャーの底部にはコイン状OFC
インシュレーターが装備され,床との間は4点接地となるようになっていました。

ネットワークは,相互干渉を抑えるために,3分割の分散配置とされ,パーツも厳選された高品位なものでした。チョ
ークコイルにはコアに磁気飽和点が高い大型低歪みフェライトが使用され,極太のLC-OFCクラス1ケーブルが巻
かれ,硬化ワニスで防振処理がなされたものが搭載されていました。コンデンサは,音響用大型電解コンデンサと
高品位ポリエステルフィルムコンデンサが搭載され,内部配線にはLC-OFCクラス1ケーブルが使用されていまし
た。スピーカー端子も,バイワイヤリング接続が可能な大型金メッキOFCによる4端子ターミナル搭載されていまし
た。

以上のように,SB-MX200は,美しい外観を持つ高性能なトールボーイ型スピーカーでした。テクニクスらしい歪
み感の少ない音を持ち,そのルックス同様に艶と輝きのある音は美しく,ゆったりしたエンクロージャーによりたっぷ
りした低域も聴かせてくれるバランスのとれた高性能スピーカーでした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



不要振動や不要輻射による影響を
徹底して抑制。
かつてない高SN比再生を実現する
フロア型3ウェイ。

◎サイレントテクノロジーの結晶
 余韻まで美しく再現するフロア型3ウェイ
◎全ユニットに理想的と言われる
 振動板素材,ピュアマイカを採用
◎高剛性に磨きをかける独自の振動板構造
 TMD(Technics Monocoque Diaphragm)
◎歯切れよい重低音を再生する
 ピュアマイカ採用27cmTMDウーハ
◎ナチュラルな音楽帯域の再生
 ピュアマイカ採用6cmミッドレンジ
◎ダイヤモンドコーティングを施した
 ピュアマイカの2.5cmドームツイータ
◎不要音の発生を根本的に改善する
 SR(スリム&ラウンド)エンクロージャー
◎高品位オーディオパーツ採用の
 デバイディングネットワーク
◎落ち着きと気品あるオーク突板仕上げ
●SB-MX200主な定格●
 
型式 3ウェイ3スピーカーシステム(バスレフ型)
使用スピーカー ウーファー 27cmTMD形
ミッドレンジ 6cmドーム形
ツイータ  2.5cmドーム形 
許容入力 250W(MUSIC),125W(DIN)
出力音圧レベル 88dB/W(1.0m)
インピーダンス 6Ω
クロスオーバー周波数 450Hz,4kHz
再生周波数帯域 25Hz〜45kHz(−16dB)
外形寸法 380W×863H×415Dmm
重量 43kg(1本)


Technics SB-MX200D
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥300,000(ネット付,1本)
1991年に,SB-MX200はSB-MX200Dにモデルチェンジされました。基本部分は受け継ぎつつ,全ユニットが新た
に設計しなおされるなど,当時,新たにTechnicsブランドに付けられた「Gシリーズ」の一つとして,グレードを高めた作り
となっていました。
ウーファーは,27cmと口径は同一ながら,振動板は新たにマイカにパルプとアラミド繊維を混抄したものに漆をコーティ
ングしたマイカ複合振動板が採用されていました。ストロンチウムフェライトのメインマグネットとバリウムフェライトによる
キャンセルマグネットを搭載した強力な磁気回路には,ボイスコイルに新開発の電着塗装技術で被膜を従来の13μか
ら2μまで薄くした平角線をエッジワイズ巻きにして占積率を向上させて使用していました。また,線材には,新たに高純
度無酸素銅7N-OFCを使用していました。
ミッドレンジには,ピュアマイカに漆をコーティングした6cm口径のドーム型,トゥイーターには,ピュアマイカにダイヤモン
ドをプラズマCVD法でコーティングした2.5cmドーム型という型式は同一でしたが,振動板の断面が楕円形をしたオー
バルドーム形状とすることで高域の限界周波数を拡大して,より余裕ある動作を可能にした新開発のオーバールドーム
振動板が採用されていました。また,ボイスコイルには,ウーファー同様に新開発の接合技術を採用した純アルミの平
角線をエッジワイズ巻きとして,中高域の応答性を改善していました。
エンクロージャーは,スリットがウーファーの上下に入ったセパレート・バッフル,幅を狭くしたラウンドバッフル形状,トゥ
イーター,ミッドレンジの周囲に配置された制振素材,バッフルのスリットに対して垂直の補強材を入れるクロスブリッジド
コンストラクションなど,補強材と特殊防振ゴムを巧みに組み合わせた基本構造は踏襲されていましたが,さらに,木製
芯材をイソプレン・ゴム系複合材でくるんだゴム台座が標準装備され,低域のエネルギーを損なうことなく中高音の不要
な振動を吸収してしまうことで,エンクロージャーからの振動と床からの振動を相互に隔離して,音の濁りを低減していま
した。外観仕上げもオーク突板光沢塗装仕上げが継承され,5回もの塗装工程によって美しさとともに,響きの微妙なコ
ントロールが行われていました。
以上のように,SB-MX200Dは,前モデルから各部を改良・強化し,品位の高い美しい音を聴かせてくれる,美しいス
ピーカーとして完成度が高められていました。テクニクスの基本技術の高さが発揮された1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



熟練した職人芸が完成度を
ひときわ大きく左右するスピーカー。
それは,技術とクラフトマンシップが
高次元で融合した逸品でもあります。

理想的な天然振動板素材マイカ
それを活かしきるテクノロジーと,
音楽を知り尽くした耳。
音の品位が聴く人の心を満たします。

◎理想的な天然素材マイカを
 全てのユニットに用いた3ウェイ

●新開発複合振動板を採用した
 27cmウーハー。
●ピュア・マイカ・オーバルドーム振動板採用の
 6cmミッドレンジ。
●ミッドレンジと同じオーバルドームの
 2.5cmツィータ。

◎新開発ボイスコイルの採用で能率と
 応答性を大幅向上。
◎制振・防振の両面から振動による
 音の濁りを徹底排除。

●各ユニット間の電気的な相互干渉を
 極限まで抑制した分割配置のディバイ
 ディング・ネットワーク。
●外観仕上げはオーク突板光沢塗装。




●SB-MX200D主な定格●

型式 3ウェイ3スピーカーシステム(バスレフ型)
使用スピーカー 27cmコーン型ウーハー
6cmドーム型ミッドレンジ
2.5cmドーム型ツィータ 
許容入力 250W(MUSIC),125W(DIN)
出力音圧レベル 88dB/W(1.0m)
インピーダンス 4Ω
クロスオーバー周波数 450Hz,4kHz
再生周波数帯域 23Hz〜45kHz(−16dB)
外形寸法 344W×903H×423Dmm(ネット付)
重量 47.0kg(1本)
※本ページに掲載したSB-MX200,SB-MX200Dの写真,仕様表等は
 1989年4月,1993年3月のTechnicsのカタログより抜粋したもので,
 パナソニック株式会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を
 無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますのでご注意くだ
 さい。

 
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