SB-MX10の写真
Technics  SB-MX10
3WAY  SPEAKER SYSTEM ¥109,000

1986年にテクニクスが発売したスピーカーシステム。平面振動板を搭載したスピーカーシステ
ムで高い評価を得ていたテクニクスが次に開発したオーソドックスな3ウェイシステムで,各ユニ
ットにはテクニクスならではの高い技術が投入された1台でした。

SB-MX10の最大の特徴は,ウーファーとミッドレンジに採用された,新開発のTMD (テクニクス・
モノコック・ダイヤフラム)でした。TMDは,NASAで開発されたコンピューター振動解析を新たに
導入して,何百回ものシミュレーションと試作を繰り返した結果開発された振動板の構造と形状の
総称で,優れた剛性や振動特性をもつというものでした。従来のコーン型では別ピースであったコー
ン部とセンターキャップ部を一体構造化し,シミュレーションの結果選びぬかれた独自の形状を採用
することで,剛性を飛躍的に高めていました。独自の形状は,センターキャップの大きいコーンとドー
ムの複合ともいえる形状で,この振動板をカップリングコーンによる節駆動(このあたりには同社の平
面形ユニットでの技術が生きていそうです。)を行い,従来のコーン型の2倍にも及ぶピ
ストンモーショ
ン域の拡大を実現していました。


TMDの構造図

ウーファーは32cm口径のコーン型で,3000フィラメントのピュアクロスカーボンをベースにしたTMD
を採用していました。ウーファーでは,このピュアクロスカーボンを2層重ね,ポリエステル系のダンピン
グファイバー層を裏打ちした3層構造でTMDと相まって軽量・高剛性化とともに高内部損失化をも実現
し,400Hzのクロスオーバーに対し十分に余裕のある4kHzまでの再生能力を実現していました。磁気
回路には,外径156mm,厚さ20mm,重さ1.4kgのストロンチウムフェライトマグネットを搭載していまし
た。磁気回路の支持には,4組のY字型アームでストレートに結合支持するウィッシュボーン構造のアル
ミダイカストフレームを採用し,不要振動を抑えていました。

SB-MX10のユニット

ミッドレンジは,12cm口径のコーン型で,ウーファー同様にTMDを搭載していました。 ミッドレンジでは,
ピュアクロスカーボンとカーボンシートの2層構造TMDを採用し,10kHzまでのピストンモーション領域を
実現し,3.5kHzのクロスオーバー周波数に対して余裕のある設計でした。

トゥイーターは,2.8cm口径平面型で,ピュアマイカ振動板を採用し,高域限界は 48kHz(−16dB)を
実現していました。前面には,アコースティックイコライザーが設けられ,ハイエンドの特性や指向性を整
えていました。

SB-MX10の内部

ネットワークは,「リニアフェイズネットワーク」と称したもので,高品位パーツが厳選して使用されていま
した。コンデンサにはメタライズド・ポリプロピレンフィルムコンデンサを加えることで高音域の改善を図り
大型の音響用電解コンデンサの使用で中低音域の改善を図っていました。さらに,配線にはLC-OFCを
プリントパターンを使用せずにストレート結線をし,チョークコイル締め付け用ビスには非磁性体を使うな
ど細かな配慮がなされていました。また,各ユニット用の回路は干渉を防ぐように完全独立配置となって
いました。

エンクロージャーは,バッフル板と側板のジョイントに日本古来の蟻形嵌込構造にヒントを得た新胴組法
MCDジョイント工法を開発・採用し,バッフル板と側板が常に圧着されているダイナミック バランスド・エン
クロージャーとして高い剛性を得ていました。また,前面のバッフル板には40mm厚の肉厚板を使用し,
的確な内部補強とも相まって不要振動の発生を徹底的に抑え込んだエンクロージャを実現していました。

以上のように,SB-MX10は,リニアフェイズ,平面形と独自技術を展開してきたテクニクスが発売した
一見オーソドックスなスピーカーシステムでしたが,各ユニットにはこれらの技術的な成果が継承され,
見ごく普通に見える地味なモデルではありましたが,すぐれ た性能を持つ1台となっていました。



以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



真・デジタルレスポンス。
テクニクス・モノコック・ダイヤフラム
TMD
真・デジタルレスポンスの実現へ
振動板は軽く,剛く


◎デジタル時代の原音忠実再生へ向けて
 テクニクス・モノコック・ダイヤフラム
◎ピストンモーション域の拡大へ
 コーンとセンターキャップを一体構造化
◎強く,軽く,素早いレスポンス
 ピュアクロスカーボン&3層構造
◎不要な振動を抑え込む@
 ウィッシュボーン構造フレーム
◎不要な振動を抑え込むA
 ダイナミックバランスド・エンクロージャ



●SB-MX10主な定格●

形式
3ウェイ3スピーカーシステム(密閉型)
使用スピーカー
外径32cmTMD形ウーハ
外径12cmTMD形ミッドレンジ
外径2.4cm平面ツィータ
インピーダンス
6Ω
出力音圧レベル
91dB/W(1.0m)
許容入力
240W(MUSIC),120W(DIN)
クロスオーバー周波数
400Hz,3.5kHz
再生周波数帯域
30Hz〜48kHz(−16dB)
40Hz〜40kHz(−10dB)
外形寸法
390W×670H×361Dmm
重量
34kg(1本)


※本ページに掲載したSB- MX10の写真,仕様表等は1986年9月
 のTechnicsのカタログより抜粋したもので,松下電器産業株式
 会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で
 転載,引用等をすることは法律で禁じられていますのでご注意
 ください。


 

★メニューにもどる        
 

★スピーカーのページ4にもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や
印象のある方,そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp