Technics
SB-8000
4WAY LINEAR PHASE SPEAKER SYSTEM
¥150,000
1979年にテクニクスが発売したフロア型スピーカーシステム。1975年に
SB-7000(テクニクス7)
で,世界に先駆けて位相周波数特性の問題に着目し,スピーカーユニットを階段状に配置した「リニ
アフェイズ」を提唱したのがテクニクスでした。そのテクニクスが発売した,同機の上級機がSB-8000
で,SB-7000に対して大型化とワイドレンジ化が図られていました。
SB-8000は,テクニクス自慢の「リニアフェイズ」化のために,独特の階段状のユニット配置を受け継
ぎつつ,SB-7000の3ウェイ構成から4ウェイ構成になり,各ユニットが余裕を持って各帯域を再生で
きるシステムとして,30Hz〜125kHzというきわめてワイドな周波数特性を実現していました。当時,世
界のスピーカーシステムと比べてもトップクラスのワイドレンジな特性でした。
SB-8000のワイドレンジ化のキーであり,最大の特徴は,テクニクス自慢の「リーフトゥイーター」の搭
載にありました。「リーフトゥイーター」は,テクニクスが1977年にEAS-10TH1000として商品化に成
功したもので,リボン型トゥイーターをテクニクスが改良・開発したものでした。振動板はアルミフォイル
に高耐熱高分子フィルムをコーティングし,ボイスコイルパターンをエッチングしたもので,重量わずか
17mgで,従来の金属ドーム型振動板よりはるかに軽量な振動板としていました。また,従来のリボン
型ユニットが一枚のアルミ箔に振動板とボイスコイルの役割を兼ねさせていたのに対し,駆動時の振動
板内の温度分布解析に基づいた高耐熱高分子フィルムのコーティングにより高い耐入力(20W・RMS)
を実現していました。
磁気回路は,重量1.2kgの大型のマグネットを使用し,I型とL型の低損失ヨークで挟み込んだ構造で
テーパー状の磁極部構造とともに磁束漏洩を抑え,強力な磁界発生を可能としていました。振動板前
後にマグネットを配した構造と異なり,振動板が均一な磁界で一気に駆動され,125kHzという超高域
まできわめて平坦に伸びた周波数特性と,95dB/W/mという高能率を実現していました。
このトゥィーターユニットは,機械共振やインダクタンス成分がないため,全帯域にわたってインピーダン
スが一定で,インピーダンス変動による周波数特性の乱れもないという特徴を持ち,しかもリボン型なが
ら8Ωのインピーダンスに設計されているため,システムとして使いやすいトゥイーターとなっていました。
構造上2つに分かれている振動板放射面は,高い周波数での干渉による指向特性の劣化を防ぐため
に,2つの放射面の間に高精度なアルミダイカスト製イコライザフィンが設置され,指向特性の改善が図
られていました。また,このユニットは,EAS-10TH800(¥40,000)として単売もされていた実力派
のユニットでした。
ミッドハイユニットは,8cm口径のコーン型で,高域特性の改善を図ったコーン紙の設計と小口径19φ
のボイスコイルにより高域特性の伸張が測られ,さらにエッジレスタイプとすることで高域での滑らかな
周波数特性と指向特性を実現していました。また,耐入力が問題になる小口径ボイスコイルながら,放
熱性にすぐれたアルミボビンと耐熱性CCAW(銅被覆アルミ線)ボイスコイルの採用などにより,200W
(ミュージック)の高耐入力が実現されていました。
ミッドローユニットは,16cm口径のコーン型で,狭幅のエッジと低歪磁気回路により,低歪でクリアな中
低音再生が可能となっていました。
ウーファーは,新設計の36cm口径ストレートコーン型で,ダンプドバスレフ方式とともに,締まった低音
再生を実現していました。
ネットワークは,リニアフェイズに合わせた特殊な設計が行われ,さらに広帯域特性に合わせた高性能・高
信頼性を吟味した素子により構成されていました。
SB-7000以来のリニアフェイズ方式のユニット配置は,現在では,B&Wなどで見慣れた感じもしますが
当時は,トゥイーターユニット,ミッドハイユニットが階段状に配置されたエンクロージャーは,斬新で,オーディ
オファンに強い印象を残しました。
以上のように,SB-8000は,リニアフェイズシステムに広帯域特性を併せ持たせた設計により,スムーズで
豊かな音が実現されていました。名機SB-7000(テクニクス7)の陰に隠れた感じがあり,大きく目立つ存在
ではありませんでしたが,実力派のシステムでした。