S-HE100の写真
PIONEER  S-HE100
2WAY VERTICAL TWIN SPEAKER SYSTEM
                          ¥148,000


1992年にパイオニアが発売したフロア型スピーカーシステム。パイオニアは1987年の
S-55TWIN以来 「バーチカルツイン方式」と称する仮想同軸配置のスピーカーシステムを
数々開発,発売し高い評価を得てきました。そうした中,この方式の良さを生かしながら,
さらにアンプに対する感度の良さ・能率の良さを追求し,新たな展開を行った「S-HEシリー
ズ」の最上級機でした。

S-HE100では,トゥイーターにリアタイプのコンプレッションドライバーによる本格的なホー
ン型ユニットを搭載していました。このコンプレッションドライバーは基本的にはTAD(Tech
-nical Audio Devices)やEXCLISIVEのS5に搭載されたものと同じ方式のもので,流
体力学の研究から設計されたフェージングプラグによって中心部に導かれ,圧縮された強
力なサウンドとしてホーンにより放射されるようになっていました。振動板には,軽量・高剛
性の3cm口径の窒化チタン振動板が採用され,振動板の背後には耐振性に優れるアルミ
ダイキャスト製のバックカバーが装着され,不要振動の発生が抑えられていました。

S-HE100のトゥイーターホーンのカットモデル

コンプレッションドライバーには,大型のオーバルウェイブホーンが組み合わされていました。
音の波面コントロールをさらに進めたこのホーンは,球面波を送り出すようにフレアの形が
設計され,点音源に近い自然な音の拡がりを実現していました。また,ホーンの形状として
開口端は丸められて外とのつながりが考慮され,横長のオーバル形状により水平方向に
広い指向性を持つようになっていました。ホーンの材質はアルミダイキャストが使用され,不
要なホーン鳴きも抑えられていました。
さらに,ホーン上部にレゾネーターを設けてカットオフ周波数付近の位相の急激な変化を抑
える「AFAST(Accoustical Filter Assisted System Tuning)」という,TADで開発さ
れた技術が採用され,安定した音像定位と自然な再生音が実現されていました。

S-HE100のウーファー

ウーファーは,25cm口径で,ALCC振動板を採用していました。ALCCは「アルギン酸コン
ポジットコーン」の略で,バイオテクノロジーから生まれたもので,スーパー繊維のひとつであ
る高強力ポリアリレートとパルプとの結合を強めるために,海藻から抽出したアルギン酸を糸
状に繊維化したアルギン酸繊維を混抄したもので,振動板の剛性を高め,軽量な繊維である
ため高い内部損失も得ることができ,強くしなやかな振動板が実現されていました。
ウーファーの磁気回路には,キャンセリングマグネットを加えた防磁型ダブルマグネット磁気
回路が採用され,14,300ガウスの高磁束密度をもつ強力なものとしていました。さらに,T型
ポールが採用され,常に前後で均一の磁束密度が確保され,振幅のリニアリティが高められ
ていました。
また,形状の吟味された蝶型ダンパーの採用により,小入力から大入力まで応答性がより高
められていました。

エンクロージャーは100リットルの大きな容積を持つもので,厚みのあるバッフルでラウンドバ
ッフルが採用されていました。エンクロージャー全体は高密度パーチクルボード製の堅牢なも
ので,ダークブラウンの花梨調仕上げとなっていました。
この余裕ある容積のエンクロージャーにウーファーを2つ搭載たツインドライブ方式で量感とス
ピード感を両立させた低音部を実現していました。ウーファー,トゥイーターとも,バッフルに不要
振動を与えないようにエンクロージャー内部にしっかり固定された,パイオニア自慢のミッドシッ
プマウント構造がとられていました。
低域を増強するバスレフ効果を十分引き出すために,フロントに2つのポートを設置していまし
た。同じ面積の1つのポートに比べ,エンクロージャー内からの中音域の漏れが少なく,ユニット
からの干渉による音の濁りを防止する効果があるというものでした。また,開口部はR形状の
特殊弾性体を使用し,スムーズな音波の放射を可能にしていました。

ネットワークは,厳選された素子で構成され,各ユニットごとに分散配置されてユニット同士の磁
気的干渉を防止していました。ネットワーク基板は,エンクロージャーからフローティングされ,ユ
ニット等からの振動が伝わりにくようになっていました。
背面の入力端子の下部には,高域レベルの調整が可能なアッテネータースイッチが装備され,
NORMAL,DECREASEの2ポジションで音質調整が可能となっていました。

以上のように,S-HE100は,パイオニア自慢の「バーチカルツイン」方式のスピーカーに,高能
率という要素を加え,明るくおおらかな鳴りの良さを実現し,大きい割に鳴らしやすく使いやすい
1台でした。

S-HE10の写真
PIONEER S-HE10
2WAY VERTICAL TWIN SPEAKER SYSTEM
                          ¥65,000


S-HE7の写真
PIONEER  S-HE7
2WAY VERTICAL TWIN SPEAKER SYSTEM
                    ¥60,000(2台1組)


「S-HEシリーズ」には,さらに弟機として同様のコンセプトによるS-HE10,S-HE7があり,これ
らも鳴りっぷりのよいスピーカーシステムでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



大胆にして繊細な表現力
高分解能コンプレッションドライバー搭載。
トールボーイ・フロア型
25cm2ウェイ・バーチカルツイン。


◎解像力,位相特性にすぐれたリアタイ
 プのコンプレッションドライバー搭載。
◎ナチュラルな球面波を送り出す
 大型オーバルウェイブホーン。
◎新開発AFASTをホーンに装備。
 ナチュラルな音像定位を実現します。
◎高感度・高能率96dB/w/mを達成。
 ALCC振動板ウーファー。
◎ダブルマグネットによる磁気回路を採用。
 高磁束密度を実現しました。
◎ハイリニアリティ蝶ダンパー。
 入力に対する応答性にすぐれています。
◎ツインフロントポート。
 中音域の音漏れ,音の濁りを減少します。
◎分散配置を採用した低歪率ネットワーク。
◎バッフルの不要振動を防止します。
 フルミッドシップマウント。
◎100リットル大容積エンクロージャー。
◎音質調整可能なアッテネーター





●主な仕様●


■S-HE100■

型式
位相反転式トールボーイ・フロア型
スピーカー
ウーファー:25cmコーン型×2
トゥイーター:3cmコンプレッションドライバー+オーバルウェイブホーン
インピーダンス
6Ω
再生周波数帯域
28〜30,000Hz
出力音圧レベル
96dB/W(1m)
クロスオーバー周波数
2,000Hz
最大入力
120W(EIAJ)
外形寸法
330W×1090H×433Dmm
重量
42.0kg



■S-HE10■

型式
位相反転式ブックシェルフ型
スピーカー
ウーファー:25cmコーン型×2
トゥイーター:3cmコンプレッションドライバー+スラントアングル・オーバルウェイブホーン
インピーダンス
6Ω
再生周波数帯域
35〜30,000Hz
出力音圧レベル
98dB/W(1m)
クロスオーバー周波数
2,000Hz
最大入力
120W(EIAJ)
外形寸法
380W×680H×410Dmm
重量
28.1kg


■S-HE7■

型式
位相反転式ブックシェルフ型
スピーカー
ウーファー:14cmコーン型×2
トゥイーター:2cmドーム型+W.F.ダイレクター
インピーダンス
6Ω
再生周波数帯域
50〜40,000Hz
出力音圧レベル
93dB/W(1m)
クロスオーバー周波数
4,000Hz
最大入力
100W(EIAJ)
外形寸法
250W×340H×256Dmm
重量
7.1kg

※本ページに掲載したS-HE100,S-HE10,S-HE7の
 写真・仕様表等は1992年11月のPIONEERのカタログ
 より抜粋したもので,パイオニア株式会社に著作権があり
 ます。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等
 をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

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