PIONEER
S-9500
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥108,000
1983年に,パイオニアが発売したスピーカーシステム。1979年発売の
S-933の後継機で,同
じ3
ウェイ・ブックシェルフ型の形態をとりながら,特に低域レンジの拡大で,ワイドレンジとデジタルオーディ
オへの対応をめざしたシステムでした。そして,¥108,000という価格には,当時の10万円クラスの
ベストセラーであった
NS-1000Mへのパイオニアの強い対抗心を感じさせられます。
S-9500の最大の特徴は,低域レンジの拡大を実現した「EBD(Electronic Bass Drive)方式」の
採用でした。「EBD方式」は,ウーファーに2つのボイスコイルを設け,その一方に超低域信号のみを
加えて,電気的に低域を拡大するもので,確かに,聴感上も低域レンジの拡大を実感できるものでした。
EBD方式によりドライブされるウーファーは,32cm口径で,カーボン繊維を混抄した軽量で剛性の高い
カーボングラファイトコーンを採用していました。EBD動作を可能にするダブルボイスコイルは,平角線を
横巻きとして駆動力を向上させ,さらにサブボビンをつけることにより,ボイスコイルボビンの円筒強度を
高め,伝達ロスを排除していました。また,支持機構には,空気の透過率が高く機械抵抗の小さい二重綾
織ダンパーにより,すぐれた振幅リニアリティを実現した「DRS(Dynamic Responce Suspention)」
が搭載されていました。
ミッドレンジは,7.6cm口径で,軽量・高剛性の純ベリリウムダイヤフラムによるドーム型ユニットを搭載
していました。ボイスコイルと振動板の接着には,セラミックと同等の堅さを持つ特殊接着剤を使用し,伝
達ロスを極少に抑え,応答性に優れたタンジェンシャルエッジとともに,リニアリティを高めていました。こ
のダイアフラムを,直径156mmの大型ストロンチウムフェライトマグネット磁気回路により駆動する高感度
な駆動系を形成していました。
トゥイーターは,アルミニウムに比べて軽量で剛性の高いベリリウムダイアフラムを使用したリボン型が搭
載されていました。きわめて軽い振動板と強力な磁気回路に加え,2重3重の機械インピーダンスの異な
るサスペンションで支持されたDRSが採用され,ローレベルでの初動感度の向上,付随音の排除,歪み
の低減が達成されていました。
ネットワークは,ウーファーの逆起電力の吸収とアースラインによる信号のリークを防ぐ平衡型ネットワーク
回路が搭載され,素子からビスやナットに至るまで磁性体が排除されていました。リード線,チョークコイル
には,無酸素銅線が使用され,コンデンサーには,従来のフィルムコンデンサーよりESR(等価直列抵抗)
がひときわすぐれた素子が使用されていました。また,フロントバッフル面にトゥイーター,ミッドレンジのレ
ベルコントロールが装備されていました。
エンクロージャーは,音響特性に優れた針葉樹パーチクルボード製で,補強桟にはアピトン合板が使用さ
れていました。エンクロージャーはバスレフ型で,設計には振動解析にモーダル解析が駆使され,ユニット
配置は定位と音像感を考慮した左右対称とされ,表面仕上げは美しいマーブルエボニー仕上げとなって
いました。
以上のように,S-9500は,
S-955Vの弟機として,また,激戦の10万円クラスの主力モデ
ルとして,意
欲的な設計が行われ,コストパフォーマンスの高い実力機となっていました。低音の支えもしっかりしたワイ
ドレンジで明るい音をもつ,音楽を楽しく聴ける使いやすい1台でした。