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PIONEER S-922
3WAY SPEAKAER SYSTEM ¥89,8001980年にパイオニアが発売したスピーカーシステム。型番から分かるようにS-955,S-933の弟機とし
て発売されましたが,大型のフロア型エンクロージャーを採用し,大口径のパッシブラジエーターを搭載する
などワイドレンジを志向した意欲作でした。S-922は,一見4ウェイに見えますが,基本的には,26cm+6.6cmのコーン形2ウェイを基本として基
本帯域を再生し,超高域再生をリボン型,超低域をパッシブラジエーターで強化するという構成をとっていま
した。このような構成により,基本帯域のつながりのよさや音像定位と,ワイドレンジを両立させようとした設
計となっていました。ウーファーは,26cm口径で,パルプにカーボン繊維を混抄したカーボングラファイトコーンで,広いピストニッ
クモーション帯域と,経時変化や温度・湿度による特性変化の少ない安定した再生を実現していました。駆
動系には140φmmの大口径マグネットを採用し,下部の大口径パッシブラジエーターに対しても十分な駆
動力を持つようになっていました。トゥイーターは,6.6cm口径で,ウーファー同様にカーボングラファイトコーンを採用し,800Hz〜20kHzの
広帯域化を実現していました。スーパートゥイーターを搭載していることで,このトゥイーターユニットは2kHz〜
10kHzの使用帯域に設定され,歪みの少ない余裕ある再生を実現していました。
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パッシブラジエーターは,36cmの大口径で,ウーファー同様に軽く剛性の高いカーボングラファイトコーンを
使用し,内容積91リットルのエンクロージャーとの組み合わせで,迫力ある低音再生を実現していました。
このパッシブラジエーターは,ウーファーに肩代わりする30Hz〜80Hzの超低域のみで共振し,超低域を再
生,スーパーウーファーと同様の効果を持っていました。しかも,この帯域のエネルギーは,パッシブラジエー
ターが吸収するため,ウーファーの振動が大幅に減少し,大音量再生時の中低域の音くずれを起きにくくして
いました。また,このパッシブラジエーターは,共振周波数以下では振動せず,輪郭のはっきりした重低音を
実現し,しかも,パッシブラジエーターの上部という比較的高い位置にウーファーがあることで,床からのかぶ
りの少ないクリアな低域再生を実現していました。
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10kHz以上の超高域再生には,空気になじむような澄み切った音質を誇るリボン型トゥイーターをスーパートゥ
イーターとして搭載していました。このスーパートゥイーターは,単体で販売されていたリボン型ユニットPT-R5
をベースにしたもので,9ミクロンの極薄アルミ箔を連続六角錘成形としてリボンを剛体化した構造を持ち,ワイ
ドレンジとすぐれたリニアリティを実現していました。エンクロージャーは,91リットルの大容量のフロア型で,床面積を抑えたスリムなスタイルをとっていました。バ
ッフル面のユニットは,音源を集中させる集中配置とし,左右対称としてすぐれた音像定位を実現していました。
仕上げは天然木マスールローズの木目を生かした美しいものでした。以上のように,S-922は,上級機とは異なるワイドレンジをめざした独自の設計で,また違った特徴のある再生
音を実現していました。万人向きとは言えないまでも,周波数帯域もダイナミックレンジもワイドな音は魅力あるも
のでした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎基本はシンプルな2ウェイ。超高域にリボン型,
超低域にパッシブラジエーターを採用。
◎ウーファー,トゥイーター,パッシブラジエーター
には,新開発のカーボングラファイトコーンを採用。
◎解像力の鋭い,タイトでパワフルな重低音を可能に
した36cmパッシブラジエーター。
◎スーパートゥイーターは,空気に自然ととけ込むような
音質のリボン型。全帯域にわたって音のクオリティを
高めています。
◎エンクロージャーは91リットルのフロア型。
仕上げは格調高い天然木マスールローズ。
型式 | 36cmパッシブ・3ウェイフロア型 |
使用スピーカー | ウーファー 26cmコーン型
トゥイーター 6.6cmコーン型 スーパートゥイーター リボン型 パッシブラジエーター 36cmコーン型 |
インピーダンス | 6.3Ω |
再生周波数帯域 | 30〜120,000Hz |
出力音圧レベル | 94dB/W/1m |
最大入力 | 80W |
クロスオーバー周波数 | 2,000Hz 10,000Hz |
外形寸法 | 465W×910H×341Dmm |
重量 | 35kg |
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PIONEER S-922U
3WAY SPEAKAER SYSTEM ¥85,000S-922は,1983年にS-922Uにモデルチェンジを受けました。価格はやや安くなっていましたが,基本的
な構成は同じで,各部の改良が行われていました。また,設計思想として3ウェイ+パッシブラジエーターとい
う形に改められていました。最大の改良点がスーパートゥイーターでした。S-922Uには新たに新開発のベリリウムリボントゥイーターが
搭載されていました。ヤマハのNS-1000Mの中高域ユニットでも有名なベリリウムは軽量で剛性が高く,振
動板としてすぐれた特性を誇るもので,ベリリウムリボンの量産化技術と手作り技術を融合させて完成させた
ものでした。
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36cm口径のカーボングラファイトコーンによるパッシブラジエーターは新たにワイヤーサスペンションが搭載され,
リニアリティを高めていました。ウーファーは同じ26cm口径カーボングラファイトコーンで,リニアリティを改善した
ダイナミックレスポンスサスペンションが採用されていました。トゥイーターユニットは同一のものでしたが,S-922U
では,ミッドレンジユニットと位置づけられていました。
エンクロージャーは93リットルとわずかに内容積が大きくなり,天然木ウォールナット仕上げとなっていました。以上のように,S-922Uは,S-922の改良型として,同じく強力な内容をもつ1台で,ワイドレンジでダイナミックな
再生音をもっていました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎基本はベリリウムリボントゥイーター搭載の3ウェイ。
超低域にパッシブラジエーターを採用。
◎高耐入力,すぐれたパワーリニアリティを確保。
ベリリウムリボントゥイーター搭載。
◎解像力の鋭い,タイトで弾みのある重低音を可能に
した36cmパッシブラジエーター。
◎ウーファー,ミッドレンジ,パッシブラジエーターには
高剛性,高気密製のカーボングラファイトコーンを採用。
◎エンクロージャーは93リットルのフロア型。
仕上げは格調高い天然木ウォールナット。
型式 | 36cmパッシブ・3ウェイフロア型 |
使用スピーカー | ウーファー 26cmコーン型
ミッドレンジ 6.6cmコーン型 トゥイーター ベリリウムリボン型 パッシブラジエーター 36cmコーン型 |
インピーダンス | 6.3Ω |
再生周波数帯域 | 30〜50,000Hz |
出力音圧レベル | 94dB/W/1m |
最大入力 | 120W(定格/40W) |
クロスオーバー周波数 | 1,500Hz 6,000Hz |
外形寸法 | 465W×928H×341Dmm |
重量 | 37.5kg |
※本ページに掲載したS-922,S-922Uの写真,仕様表等は
1981年9月,1983年11月のPIONEERのカタログより抜粋
したもので,パイオニア株式会社に著作権があります。したがっ
てこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁
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