S-5000twinの写真
PIONEER S-5000twin
2WAY VERTICAL TWIN SPEAKER SYSTEM
                          ¥500,000

1990年にパイオニアが発売したフロア型スピーカーシステム。1987年発売のS-55twin以来パイオニ
アが展開していた仮想同軸型2ウェイシステム,「バーチカルツイン」シリーズとして,パイオニアブランドで
は最上級機にあたる1台でした。

S-5000twinでは,バーチカルツイン方式のメリットを生かすために,各ユニットから放射された音の波面
がどのように広がっていき,耳まで到達するかを科学的に解明する,波面コントロール技術を駆使して壮大
な音場再生を実現しようとしていました。

トゥイーターには,新開発の「全結晶質ダイヤモンド振動板」による3cm口径のドーム型トゥイーターを搭載
していました。この「全結晶質ダイヤモンド振動板」は,新しいダイヤモンド薄膜形成技術の開発から生まれ
たもので,チタンなどの基材にダイヤモンドをコーティングしたものではなく,振動板そのものが100%ダイ
ヤモンドでできており,硬質であるというダイヤモンド本来の特性を十分に生かすものでした。音速はチタン
の約3.3倍,再生周波数帯域はチタンの3〜5倍と,クリアながらさわやかな中高域再生を実現していま
した。

S-5000twinのトゥイーター

トゥイーターには,前面に波面コントロール技術を駆使したニューW.F.(ウェイブ・フロント)ダイレクターが採用
されていました。ダイレクターの素材は高剛性で音響特性にすぐれたイタヤカエデ積層板削り出しで,美しい
仕上げとなっていました。ウーファーとのエネルギー特性,時間特性を合致させるために,振動板取付位置を
厳密に調整し,上下方向の指向性を改善するためにホーン形状のくふうされたダイレクターが採用されていま
した。また,磁気回路には,高磁束密度が得られ,高調波歪みの少ないアルニコマグネットを採用していまし
た。トゥイーターのフランジには,アルミの2.6倍の比重を持つ亜鉛ダイキャストが採用され,フランジの固有
振動が抑えられ,さらに亜鉛表面には植毛加工が施され余分な共振が抑えられて,クリアな中高音が実現
されていました。

ウーファーには,4年をかけて開発された20cm口径ALCC(アルギン酸コンポジットコーン)振動板を採用して
いました。これは,パルプにアラミド繊維を混抄してできる複合振動板に,アルギン酸繊維を混入したもので,
バイオテクノロジーを応用したものでした。アルギン酸繊維は,海藻から抽出したアルギン酸を糸状にし繊維
化したもので,これがパルプとアラミド繊維のバインダー(のり)の役目を果たすことで,両者のなじみを良くし
結合を強めていました。この結果,剛性を高めるとともに,アルギン酸繊維の内部損失が振動板に適度な内
部損失を実現していました。

S-5000twinのウーファー

ウーファーには,新開発の「ハイリニアリティ磁気回路」が搭載されていました。プレート厚を従来の2.5倍に
拡大し,ボイスコイルが磁気ギャップに完全に収まるショートボイスコイル化を実現していました。ボイスコイル
の大振幅時においても,磁束密度の低下が抑えられ,リニアリティが高められていました。また,ウーファー
にも,アルニコマグネットが採用されていました。

ウーファーのフレームには,トゥイーター同様に亜鉛ダイキャストを採用し,高比重・高剛性化により,不要振動
を抑えていました。振動板への空気抵抗が小さくなるように各部の形状も工夫されていました。また,ウーファ
ーのガスケット表面には植毛加工が施され,コーンやエッジからの音の反射を抑えていました。さらに,ガスケ
ット自体の制振効果によりクリアな再生につなげていました。

各ユニットのマウントには,ユニットからの不要振動をバッフルに伝えない「フルミッドシップマウント」が採用さ
れていました。ウーファーはエンクロージャー内のインナーバッフルに,トゥイーターは植毛層を介してバッフル
の裏面に固定されていました。ユニットをバッフルの表面以外に固定することで,バッフルの不要振動が大き
く低減され,ユニット間の干渉も抑えられていました。さらに,天板の不要振動を抑えるフローティングトップ,フ
レームからの振動を遮断するシールドフレームを採用するなど,凝ったエンクロージャー構造がとられていまし
た。また,ネットワークのマウントも,各ユニット回路を分離し,とくにトゥイーター回路は下にフェルトを敷いてマ
ウントされ,エンクロージャーからの不要振動の影響を排除し,中高域のSN感を向上させていました。
ネットワークは,カシメ圧着配線がとられ,信号のロスを低減するとともに,各素子のマウントにも入念な防振
対策が行われ,クロストークの影響を受けないよう配慮してレイアウトされていました。また,ネットワークへの
入力は,ダイレクトかつ均一に信号伝送できるようにラジアル給電方式が採用されていました。スピーカー端
子はバイワイヤリング接続対応となっていました。

エンクロージャー内部には,吸音効果が高く音質的に有利なウール吸音材が使用され,内部の定在波を効果
的に低減していました。エンクロージャーの仕上げはウォールナットリアル材突板貼りで,通常のオイルフィニッ
シュに比べ,研磨回数を増やし平滑性を高めた高品質な美しい仕上がりを実現していました。

以上のように,S-5000twinは,パイオニアブランドのバーチカルツインスピーカーの最上級機として,高級感
のある美しい仕上がりの外観と,繊細でやさしい音を持った1台でした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


これほど自然で
やわらかい音を知らない。
ダイヤモンドのバーチカルツイン。
全結晶ダイヤモンド振動板トゥイーター,
ALCC振動板ウーファーを搭載した,
パイオニア・バーチカルツインの頂点。
◎全結晶ダイヤモンド振動板トゥイーター搭載。
◎イタヤカエデ積層板削り出しの
 ニューW.F.(ウェイブフロント)ダイレクター。
◎サイレント亜鉛ダイキャストフランジ採用。
◎バイオテクノロジーの応用から生まれた
 新開発ALCC振動板ウーファー採用。
◎新開発ハイリニアリティ磁気回路を搭載。
◎不要振動を低減する亜鉛ダイキャストフレーム。
◎音の反射を抑えるサイレントガスケット。
◎波面コントロール技術を駆使した
 バーチカルツインシステム。
◎バッフルの不要振動を抑える
 フルミッドシップマウント。
◎ダイレクトコンストラクションネットワーク。
◎高級ウール吸音材を採用。
◎高級オイルフィニッシュのエンクロージャー。
●S-5000twinの主な仕様●
 
型式 位相反転式トールボーイ・フロア型
スピーカー ウーファー:20cmコーン型×2
トゥイーター:3cmドーム型+W・Fダイレクター
インピーダンス 6Ω
再生周波数帯域 28〜20,000Hz
出力音圧レベル 91dB/W(1m)
最大入力 180W(EIAJ)
クロスオーバー周波数 1,800Hz
外形寸法 298W×1080H×425Dmm
重量 49.5kg
※本ページに掲載したS-5000twinの写真・仕様表等は1995年6月
のPIONEERのカタログより抜粋したもので,パイオニア株式会社に著作
権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をする
ことは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

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