PRA-1001の写真
DENON PRA-1001
CONTROL AMPLIFIER ¥138,000

1976年にデンオン(現デノン)が発売したコントロールアンプ。デンオン初の本格的なソリッドステートセパレート
アンプのペアをなすコントロールアンプで,前年の真空管コントロールアンプPRA-1000Bとは違った,ソリッドス
テートアンプならではの魅力を追求した1台でした。

イコライザーアンプは,差動増幅2段,カレントミラー,終段A級コンプリメンタリー・プッシュプル接続の7石構成と
して,高利得(1kHz,40dB),低歪み(0.005%),高ダイナミックレンジ(許容入力300mV),高SN(78dB)
を実現していました。±50Vの高供給電圧により,ノン・クリップ特性は10Hz〜50kHzにわたり30Vrms以上の
大出力が確保されていました。
トランジスターは,すべてローノイズ高耐圧のエピタキシャル形が使用され,RIAA負帰還回路に使用するC・R素
子も高品位な,誤差1%以内のポリプロピレンコンデンサーと誤差2%以内の金属皮膜抵抗が使用され,RIAA偏
差を±0.2dB以内の高精度に抑えていました。
イコライザーアンプをはじめ各アンプ部の主要入出力回路の結合コンデンサーには,高周波数帯域まで特性のすぐ
れた吟味されたタンタルコンデンサーが使用されていました。

PRA-1001のボリューム

ボリュームは,クロストークを改善するためL・Rが近接しない特殊構造の21クリック付ボリュームで,精密にトリミ
ングされた抵抗体により,ギャングエラーを最悪でも±1.5dB以内とし,絞っても高域特性が劣化しない設計とな
っていました。
ファンクションスイッチ,モードスイッチ,ボリュームに続いて無利得バッファーアンプ,ゲインスイッチという構成にな
っていいました。このゲインスイッチがPRA-1001独特のもので,ゲイン最大で10dBのアンプが入り,標準の最
大利得,−10dBでこのアンプは信号系から外れ,トーン及びフィルターを使用しないかぎり信号はストレートにバッ
ファーアンプにつながり,さらにゲインスイッチを下げることによって,今度はフィルター回路の直後にある抵抗減衰
器が入り,2段ミューティングとなるようになっていました。ボリュームとこのゲインスイッチを組み合わせて使用する
ことで入力レベルに合わせて最適なゲインを選んで再生できるようになっていました。ミューティング抵抗器の後に
バランス,そして終段のバッファーアンプ,出力となっていましたが,ボリュームとバランスは2軸連動の4連形とな
っていました。

トーンコントロールは,BASS,TREBLE独立型でかつ左右独立型となっており,ロータリースイッチを使用していま
した。トーン可変のステップ抵抗はローノイズ集積抵抗を使用し,回転切換時のフィーリングを考え,高品位ダブルク
リック付きの構造となっていました。回路構成は,コンプリメンタリープッシュプルバッファーを通し,差動増幅と反転
増幅回路によるNFB形トーンコントロールアンプとなっていました。
ターンオーバー周波数は2段切換で,3連ボタンになっており,中央のDEFEATボタンを押すとターンオーバーの時
定数(CR)回路を切り離して平坦な伝送特性になるようになっていました。さらに,別にTONE DEFEATボタンを
押すことで,トーンコントロール回路を信号系から切り離すことができるようになっていました。

フィルターは,ハイカット,ローカットともカットオフ周波数が2点切換方式で,ハイカットが6dB/oct(7kHz)と18dB/
oct(14kHz),ローカットが18dB/oct(10Hz,40Hz)という減衰特性となっていました。回路構成はPNP,NPN
ローノイズトランジスターによるコンプリメンタリー・エミッターフォロアー構成で,低歪率,高安定化が図られていまし
た。また,カットオフ周波数の切換はフィルター時定数(CR)を切換える簡易方式ではなく,各周波数別に独立した
フィルターアンプ使用し,これを切換えるという方式となっていました。フィルタースイッチがOFFの位置ではフィルター
回路は信号系から切り離されるようになっていました。

パネルデザインは,当時デンオンアンプに共通のイメージを持ったもので,使用頻度の高いボリューム,トーンコント
ロール,ファンクション切換などは上段に,使用頻度の少ないスイッチなどは下段に配置し,ストラップドアー内部に
収められ,全体として下段を濃いブラウンとしたデンオンらしいツートーンカラーのデザインとなっていました。

PRA-1001,POA-1001のペア

以上のように,PRA-1001は,パワーアンプPOA-1001とペアをなすデンオン初の本格的ソリッドステートコントロ
ールアンプとしてしっかりした作りを持ち,後のデンオンのセパレートアンプでの活躍を示唆するような,クリアで緻密
な音を持った実力派の1台でした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


特長
1. 豊富なファンクション機構を装備し,かつシンプルに信号が
 流れる完全デフィート方式採用のSimple is Best設計。
2. ローノイズ・高耐圧トランジスター,カレントミラー回路採用で
 超低ひずみ(0.005%),高S/N(78dB)を実現したイコライ
 ザーアンプ。
3. 高級機らしく8個のフィルターアンプを駆使して,確実なフィル
 ター特性とひずみ低減に成功。
4. コントロールセンターとして接続特性を重視した入出力端子
 機能。
5. PHONO〜PRE OUT 80dB以上の驚異的なノンクロス
 トーク,ハイセパレーション。
6. 新しいミューティング回路で,電源ON-OFFノイズを着実に
 排除。
◎高性能,超低歪率,カレントミラー構成の
 イコライザーアンプ部
◎コントロールセンターとして,充実した入出力機能を装備
◎特殊な分離構造の高精度4連ボリウムと合理的なレベル設定
◎L・R独立のNFB形トーンコントロール回路
◎ハイカット2回路,ローカット2回路,独立したフィルターアンプ
◎ノンクロストーク,ハイセパレーションをより高度に完成
◎電源スイッチON-OFF直後のミューティング回路
◎使い勝手を重視したパネルロケーション
◎モニター用本格的ヘッドホンアンプ内蔵


●PRA-1001の定格●


回路方式 シリコントランジスター式プリアンプ
使用トランジスター 2SA872A×14,2SC1775A×16,2SA872×11
2SC1775×18,2SD526×1,2SA850×1
2SA673A×2,IC×1,ダイオード×25
イコライザーアンプ部(PHONO IN〜REC OUT)
入力感度(ゲインスイッチ0dB)/
入力インピーダンス
PHONO1:3.2mV/50kΩ
PHONO2:3.2mV/30・50・100kΩ切換
最大許容入力 300mV(1kHz)
最大出力/定格出力 30V/320mV
全高調波ひずみ率 0.003%(出力6V,1kHz)
RIAA偏差 ±0.2dB(20Hz〜20kHz)
SN比(IHF-A) 78dB以上
セパレーション 90dB以上(20Hz・1kHz・20kHz)
ゲイン 40dB
コントロールアンプ部(AUX IN〜PRE OUT DEFEAT時)
入力感度(ゲインスイッチ0dB)/
入力インピーダンス
TUNER:320mV/50kΩ
AUX-1&2(ADJ VOL付):320mV/50kΩ&40kΩ
TAPE PB-1&2(ADJ VOL付):320mV/50kΩ&45kΩ
最大出力/定格出力 10V/1V
全高調波ひずみ率 0.003%(出力2V・1kHz)
伝送周波数特性 10Hz〜100kHz+0.1,−0.5dB
(TONE FLAT時:20Hz〜50kHz+0.1,−0.3dB)
SN比(IHF-A) 103dB以上
セパレーション 85dB以上(20Hz・1kHz・20kHz)
ゲインコントロール
(ミューティング)
0・−10・−20・−30dB
テープモニター 2系統
テープダビング 1→2,2→1
フラットアンプ部
ゲイン 10dB
トーンアンプ部
トーンコントロール可変範囲 BASS
 ターンオーバー周波数=320Hz,600Hz:
  ±12.5dB(2.5dBステップ)/30Hz・60Hz
TREBLE
 ターンオーバー周波数=1.6kHz,3.2kHz:
  ±12.5dB(2.5dBステップ)/17kHz・34kHz
フィルターアンプ部
LOW 10Hz・40Hz:18dB/oct
HIGH 7kHz:6dB/oct,14kHz:18dB/oct
ヘッドホンアンプ部
定格出力 30mW
全高調波ひずみ率 0.5%
伝送周波数特性 25Hz〜100kHz+0,−3dB
総合
セパレーション 80dB以上(20Hz〜20kHz)
電源 AC100V,50Hz/60Hz
消費電力 16W
寸法 410W×152H×271Dmm
重量 約8kg
付属品 低容量コード
※本ページに掲載したPRA-1001の写真,仕様表等は1976年11月の
 DENONのカタログより抜粋したもので,デノン株式会社に著作権があり
 ます。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律
 で禁じられていますのでご注意ください。

 
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