POA-1001の写真
DENON POA-1001
SOLID STATE STEREO POWER AMPLIFIER
                           ¥178,000

1976年にデンオン(現デノン)が発売したパワーアンプ。前年に真空管パワーアンプの名機POA-1000B
を発売したデンオンが初めて発売した本格的ソリッドステートセパレートアンプのペアのパワーアンプで,ソリ
ッドステートならではの魅力を追求した力作でした。

パワー段の回路構成は,差動2段増幅,カレントミラー方式による平衡ドライブ回路,および±2電源方式に
よるシングルプッシュプルの終段という構成で,ワイドレンジ(伝送周波数特性3Hz〜100kHz),低ひずみ
(全高調波歪率:20Hz〜20kHz・100W時,0.05%)を実現していました。
出力段は,パラレルプッシュプル方式で発生しやすい各トランジスタ特性のばらつきによる音質劣化をさける
ために,あえてPc(許容コレクター損失)150Wクラスのバイポーラトランジスタによるシングルプッシュプル
構成がとられ,シングルプッシュプルで100Wの大出力を実現していました。このシングルプッシュプルによ
る大出力化,後にUHC-MOSによるシングルプッシュプルのアンプを開発したデンオンのこだわりが感じら
れるところだと思います。また,大電流動作領域での高域ひずみを低減させるために,スイッチング特性を大
きく改善した新開発のパワートランジスタ2SC1584,2SA908が使用されていました。さらに,0.8℃/W
の余裕あるヒートシンクにパワートランジスタを1個ずつ取り付け,温度上昇を抑えて安定したアンプ動作を確
保していました。

ヒートシンクとパワートランジスタ

電源部は,コンデンサー部は,22,000μFのコンデンサーを左右2個ずつ使用し,合計88,000μFの容
量を持ち,オリエントコア使用の電源トランスとともに,安定した余裕ある電源供給を実現していました。
また,静的,動的クロストークを抑えるために,2電源トランス方式をはじめ,調節器類の左右分離,各種部品
配置からアースポイントの取り方に至るまで,コンストラクションの上からも,完全な2モノラルコンストラクション
がとられていました。

POA-1001の前面パネルには大型のパワーメーターが搭載されていました。このパワーメーターは負荷8Ω
で100Wのピークレベル80Vp-pを0dBとして−50dB(1mW)〜+3dB(200W)まで,レンジ切換なしで表
示できるものでした。メーター回路の周波数応答も,10kHz正弦波一波(0.0001秒以内のピーク信号)で,
−2dB以内,連続正弦波では10Hz〜100kHzで−3dB以内の性能が確保されていました。

プロテクション回路には,サイリスタ(SCR)を使用してスピーカー回路のリレーが定格電圧で瞬時に動作する
新開発のものを搭載し,リレーの接点不良防止効果も高めていました。また,ミューティング回路には,OFF検
出にリップル(脈流)率の小さい位相検波方式を採用した,これも新開発のものを搭載し,アンプ回路を守ってい
ました。

入力レベルボリュームは,L・R独立で21クリック付のディテント形を搭載していました。また,サブソニックフィル
ターがL・R独立で搭載され,L・R個別にフィルターが挿入できるようになっていました。さらに,スピーカー切換
もL・R独立で搭載され,Lch,Rchで別のスピーカーに出力できるようにもなっていました。

PRA-1001とPOA-1001のペア

以上のように,POA-1001は,デンオン初の本格的ソリッドステートパワーアンプとして,しっかりした作りと最新
の回路が投入された力作でした。ソリッドステートならではのストレートで力強い音を持った1台でした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


特長
1.バイポーラトランジスターの極限までスイッチング特性を
 改善した,新開発Pc150Wクラスのトランジスターを採用。
 全段直結差動2段増幅,カレントミラー回路による平衡ドラ
 イブ方式のOCL構成。
2.大容量ヒートシンク,大出力時にもビクともしない強力な
 電源回路を構成する88000μF大容量コンデンサー。
3.左右チャンネル間の動的ひずみ(クロストーク)を排除する
 2電源トランス方式2モノーラル・コンストラクション。
4.指示偏差±1.5dBの大形かつ高精度ピークメーター搭載。
5.トランジスター,スピーカーを保護,ポップノイズを排除する
 瞬時動作の,新しいプロテクション回路,ミューティング回路。
◎出力段トランジスターにはPc150Wクラスのハイパワー
 トランジスターを使用。
◎差動2段,カレントミラー回路による平衡ドライブ方式。
 (実新申請中)
◎大出力時にもビクともしない,チャンネル当り44000μF
 の大容量電解コンデンサーの高性能電源。
◎動的歪みを排除する2電源トランス,ノンクロストーク,
 ハイセパレーション設計。
◎対数圧縮高精度ピークメーター搭載。
◎高速プロテクション回路
◎完全なポップノイズ・ミューティング回路
◎L・R独立操作可能のサブソニックフィルター回路
 (実新申請中)
●L・R両チャンネルとも単独に入力レベルが調節可能。
 21クリック付のディテントボリウムです。
●A・B2系統のスピーカー選択はもちろん,そのL・Rの選択までできます。
 従ってLchはA系統のスピーカーで,RchはB系統のスピーカーで聴くと
 言ったこともできます。
 
 
●POA-1001定格●

 
回路方式 シリコントランジスター式パワーアンプ
使用トランジスター 2SC1775A×4,2SA872A×6,2SA872×32SC1708×1
2SA818×2,2SC1628×4,2SD478×2,2SA839×2
2SC984×2,2SC1584×2,2SA908×2,2SC1000×10
2SD526×2,2SK30×2,IC×2,ダイオード×49,SCR×1
ダイナミック出力(負荷8Ω) 125W+125W
定格出力(両チャンネル駆動・正弦波連続出力
      ・20Hz〜20kHz)
140W+140W(負荷4Ω)
100W+100W(負荷8Ω)
全高調波ひずみ率 0.01%(1kHz),0.05%(20Hz・20kHz)
混変調ひずみ率(60Hz/7kHz=4:1) 0.05%(定格出力100W相当時)
出力帯域幅(IHF・両チャンネル駆動) 3Hz〜70kHz
伝送周波数特性 3Hz〜100kHz+0,−3dB
入力感度/入力インピーダンス 1Vrms/50kΩ
出力インピーダンス/ダンピングファクター 0.08Ω/100(負荷8Ω)
残留雑音 0.35mV以下
SN比(IHF-A) 110dB
スピーカー端子 A・B2系統
サブソニック・フィルター特性 10Hz・18dB/oct
セパレーション 90dB以上(20Hz・1kHz・20kHz)
  レベルメーター特性
指示範囲 −50〜+3dB(1mW〜200W)
指示誤差 −20〜+3dB/±1.5dB
周波数特性 10Hz〜100kHz
応答時間 100ms(機械的応答)
復帰時間 0.5sec
インピーダンス 50kΩ
  総合
電源 AC100V,50/60Hz
消費電力 260W(電気用品取締法による)
寸法 410W×200H×280Dmm
重量 約22kg
※本ページに掲載したPOA-1001の写真,仕様表等は1976年11月の
 DENONのカタログより抜粋したもので,デノン株式会社に著作権があり
 ます。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律
 で禁じられていますのでご注意ください。
 
★メニューにもどる           
 
 

★セパレートアンプPART4にもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。                      


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp