Accuphase P-800
BALNCED STEREO POWER AMPLIFIER ¥680,000
アキュフェーズが1988年に発売したステレオパワーアンプ。前年に発売された1000W(8Ω)の高出力を誇る
モノラル機M-1000をステレオ化したものといえますが,400W+400Wの高出力と微少信号も忠実に増幅で
きる高品位な再生能力を両立させるという設計思想のもとに高い完成度を実現していました。P-800の最大の特徴は,完全なバランス増幅方式を採用していることでした。コレクター損失(Pc)130Wの広
帯域トランジスターを7-パラレルプッシュプルで構成した出力段を片チャンネルあたり2組搭載したブリッジ構成
で,完全なバランスアンプを実現していました。したがって,チャンネルあたり14ペア,28個のトランジスターとい
う豪華な出力段で,総コレクター損失は3.6kWという400Wの出力に対し圧倒的な余裕をもつ設計になってい
ました。これが,アルミムクの大型のヒートシンクに取り付けられ,放熱ファンなしで使用することが可能になって
いました。
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電源部は,2トランスによる左右独立専用電源を搭載していました。1個でも大出力ステレオ機が構成できるほ
どの大容量(1.5kVA)のトロイダルトランスを左右独立で合計2個搭載し,電源コードから左右独立という徹底
した設計になっていました。内部写真では1個に見えますが,トランスが上下に2段重ねで搭載されていました。
フィルターコンデンサーも大容量で,82,000μF×4,総計328,000μFの容量を持ち,強力な電源供給能
力を誇りました。
P-800では,1〜16Ω前後の広範なインピーダンスのスピーカーに対応するために,「ローロード・インピーダ
ンス」スイッチを備えていました。4Ω以上の高インピーダンス負荷のスピーカーに有効な電力を送り込むに
は出力素子を高電圧でドライブする必要があり,低インピーダンス時には,ドライブ電圧を下げて電流供給能
力を向上させる必要があります。そこで,供給電圧を切り替える「ローロード・インピーダンス」スイッチにより,
1Ω負荷600W/ch,2Ω負荷400W/chの電力供給を実現し,全負荷対応を可能にし,低能率の平板ス
ピーカーやエレクトロスタティック・スピーカーも十分にドライブすることができるようになっていました。信号の入力増幅回路には,A級カスコード差動プッシュプル方式を採用し,高いリニアリティと動作の安定を確
保していました。最終段をドライブするドライブ段には,ノンスイッチングA級ドライブと等価なMOS FETによる
カスコード・プッシュプル方式とし,前段も「A級カスコード・プッシュプル」として,全体として安定した出力段を構
成していました。天然パーシモンのサイドウッドとアナログ・パワーメーターをシンメトリーに配置したシンプルで豪華な外観は,
アキュフェーズ伝統の強固な筐体を形成し,巨大な電源部とあわせ総重量47kgにも達する堂々たるパワーアン
プとなっていました。実際,現役で使用中の私も一人で移動・設置するには非常な苦労をしました。大型アンプだ
けにヒートアップには時間がかかりますが聴き込むうちに鮮度を増してくる音には満足させられます。大出力型な
がら,小音量時にも繊細で,全く荒さを感じさせないその音には高い完成度を実感しています。長らく愛用してい
る愛器NS-1000Mもバランス良く鳴らしてくれる1台でもあります。自分の所有するアンプをほめるのは恥ずか
しいものがありますが,名機の一つだと思っています。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎パワーユニット2組をブリッジ構成にした
完全バランス方式,徹底した音質重視 |
◎左右独立専用電源により正確な音場再現 |
◎4Ω=600W/ch,8Ω=400W/chの大出力 を保証する7-パラレル・プッシュプル×2の 強力出力ステージ |
◎1Ω=600W/ch,2Ω=400W/chを保証する 低インピーダンス駆動方式 |
◎性能を極限まで追い上げたカスコード・プッシュプル 差動入力段 |
◎小出力時のひずみ率と高域の安定性を改善した
「カスコードPP+MOS FETカスコードPP」ドライブ段 |
◎−60dB〜+3dB間のパワーを直読する
アナログ式大型パワーメーター |
◎入力インピーダンス40kΩバランス入力の他に
20kΩアンバランス・フォノジャックも装備 |
◎放熱用ファン取り付け可能 |
◎天然パーシモンのサイドボード |
●P-800 保証特性●
連続平均出力 (20〜20,000Hz) |
NORMAL LOAD INP.OPERATION(ひずみ率0.01%) 600W/ch 4Ω負荷 400W/ch 8Ω負荷 200W/ch 16Ω負荷 LOW LOAD INP.OPERATION(ひずみ率0.05%) 600W 1Ω負荷 400W 2Ω負荷 200W 4Ω負荷 |
全高調波ひずみ率 | 0.05% 1〜4Ω負荷 0.01% 4〜16Ω負荷0 |
IMひずみ率(EIA) | 0.003% |
周波数特性 | 20〜20,000Hz ±0dB (連続平均出力時,レベル・コントロールMAX) 0.5〜150,000Hz +0,−3.0dB (1W出力時,レベル・コントロールMAX) 0.5〜80,000Hz +0,−3.0dB (1W出力時,レベル・コントロール−6dB) |
ゲイン | 28.0dB |
負荷インピーダンス | NORMAL LOAD INP.OPERATION 4〜16Ω LOW LOAD INP.OPERATION 1〜4Ω |
ダンピング・ファクター(EIA 50Hz) | 200 |
入力感度(8Ω負荷) | NORMAL LOAD INP.OPERATION 2.25V(8Ω負荷 連続平均出力時) 0.12V(8Ω負荷 1W出力時) LOW LOAD INP.OPERATION 1.13V(2Ω負荷 連続平均出力時) 0.06V(2Ω負荷 1W出力時) |
入力インピーダンス | アンバランス20kΩ/バランス40kΩ |
S/N(A補正) | 125dB (連続平均出力時,入力ショート) 95dB (1W出力時 入力1kΩ) |
出力メーター | 対数圧縮ピーク表示型 −60dBから+3dB及び 出力直読目盛 |
使用半導体 | 158Tr,20FET,15IC,158Di |
電源及び消費電力 | 100V,17V,220V,240V 50/60Hz 消費電力 110W+110W 無入力時 550W+550W 電気用品取締法 740W+740W 8Ω負荷定格出力時 |
寸法・重量 | 幅481mm×高さ239mm(脚含む)×奥行489mm(リアパネル脚含む) 47.2kg |
Accuphase M-1000
MONOPHONIC POWER AMPLIFIER ¥630,000
アキュフェーズが1987年に発売したモノラルパワーアンプ。上記したようにP-800のベースとなったモデル
で,民生用としては最大級の1000W(8Ω)の大出力を実現していたモデルで,当時驚異の目で迎えられた
パワーアンプでした。
M-1000は,民生用として大出力だけでなく小出力時にも品位の高い音を実現するために,強力なパワー
ユニット2台をブリッジ構成として完全なバランスアンプを実現していました。P-800と同等規模でモノラルア
ンプという出力段は,コレクター損失(Pc)150Wの広帯域トランジスターをユニットあたり14-パラレルプッシ
ュプル,2ユニットの合計で28組,56個のトランジスターで構成され,総コレクター損失は,1000Wの出力
に対して8.4kWという圧倒的な余裕をもったものでした。これが,アルミムクの大型のヒートシンクに取り付
けられ,放熱ファンなしで使用することが可能になっていました。
M-1000も,1〜16Ω前後の広範なインピーダンスのスピーカーに対応するために,「ローロード・インピーダ
ンス」スイッチを備えていました。4Ω以上の高インピーダンス負荷のスピーカーに有効な電力を送り込むに
は出力素子を高電圧でドライブする必要があり,低インピーダンス時には,ドライブ電圧を下げて電流供給能
力を向上させる必要があります。そこで,供給電圧を切り替える「ローロード・インピーダンス」スイッチにより,
1Ω負荷1,600W,2Ω負荷1,100W電力供給を実現し,全負荷対応を可能にし,低能率の平板スピーカー
やエレクトロスタティック・スピーカーも十分にドライブすることができるようになっていました。
信号の入力増幅回路には,P-800にも受け継がれたA級カスコード差動プッシュプル方式を採用し,高いリニ
アリティと動作の安定を確保していました。最終段をドライブするドライブ段には,ノンスイッチングA級ドライブ
と等価なMOS FETによるカスコード・プッシュプル方式とし,前段も「A級カスコード・プッシュプル」として,全
体として安定した出力段を構成していました。
電源部は,独立トランスによる2電源構成を採用していました。1個でも大出力ステレオ機が構成できるほど
の大容量(1.5kVA)のトロイダルトランスを独立で合計2個搭載し,電源コードから独立という徹底した設計
になっていました。内部写真では1個に見えますが,トランスが上下に2段重ねで搭載されていました。これら
を並列接続し,合計3kVAという強力な電源部となっていました。これにより,アンプ側から見た電源インピー
ダンスは1/2になり,最大電力量は2倍,また,フィルターコンデンサーも66,000μF×2という大容量と等
価になりました。
天然パーシモンのサイドウッドにゴールドパネルのアキュフェーズ伝統のデザインで,出力メーターはM-100
以来のアナログメーター,デジタル表示併用型になっていました。
アナログメーターは,dB目盛と等価電力(W)の目盛のあるピークメーターで,デジタルメーターは,スピーカー
に供給されている電圧と電流の真値を検出し,アナログ乗算器によって瞬時に電力を求め,表示するという方
式で,4桁表示となっていました。レンジ切替は最大2W,20W,200W,2000W,10000Wの5ポジション
で,ホールドタイムは0.5秒,3秒,75分(CDの最大演奏時間に適合),無限大の4ポジションとなっていまし
た。
以上のように,M-1000は,創立当初からハイパワーアンプを作り続けてきたアキュフェーズが開発した大出
力アンプで,1000Wという大出力にしては音の荒さもなく,使いやすい大きさに抑えた設計のうまさが感じられ
る1台でした。音的には,チャンネル当たりのトランジスターの多さから想像するのとは逆に,P-800よりもソリ
ッドな傾向があるモデルでした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
連続平均出力 (20〜20,000Hz) |
NORMAL LOAD INP.OPERATION(ひずみ率0.01%) 1,800W 4Ω負荷 1,000W 8Ω負荷 500W 16Ω負荷 LOW LOAD INP.OPERATION(ひずみ率0.05%) 1,600W 1Ω負荷 1,100W 2Ω負荷 550W 4Ω負荷 |
全高調波ひずみ率 | 0.05% 1〜4Ω負荷 0.01% 4〜16Ω負荷0 |
IMひずみ率(EIA) | 0.003% |
周波数特性 | 20〜20,000Hz ±0dB (連続平均出力時,レベル・コントロールMAX) 0.5〜150,000Hz +0,−3.0dB (1W出力時,レベル・コントロールMAX) 0.5〜80,000Hz +0,−3.0dB (1W出力時,レベル・コントロール−6dB) |
ゲイン | 28.0dB |
負荷インピーダンス | NORMAL LOAD INP.OPERATION 4〜16Ω LOW LOAD INP.OPERATION 1〜4Ω |
ダンピング・ファクター(EIA 50Hz) | 200 |
入力感度(8Ω負荷) | NORMAL LOAD INP.OPERATION 3.56V(8Ω負荷 連続平均出力時) 0.12V(8Ω負荷 1W出力時) LOW LOAD INP.OPERATION 1.87V(2Ω負荷 連続平均出力時) 0.06V(2Ω負荷 1W出力時) |
入力インピーダンス | アンバランス20kΩ/バランス40kΩ |
S/N(A補正) | 125dB (連続平均出力時,入力ショート) 95dB (1W出力時 入力1kΩ) |
アナログ式出力メーター | 対数圧縮ピーク表示型 −60dBから+3dB及び 出力直読目盛 |
ディジタル式出力メーター |
形 式:電力の真値表示型 表示範囲:レンジ切り替えにより0.001W〜9,990Wを 直読 有効桁数:3.5桁 レ ン ジ:2 0.001〜1.999W 20 0.01〜19.99W 200 0.1〜199.9W 2000 1〜1,999W 10000 10〜9,990W 確 度:2kw未満 3%±5カウント 2kw以上 3%±50カウント ホールドタイム:0.5秒,3秒,75分,∞ |
使用半導体 | 99Tr,13FET,31IC,142Di |
電源及び消費電力 | 100V,17V,220V,240V 50/60Hz 消費電力 120W+120W 無入力時 600W+600W 電気用品取締法 800W+800W 8Ω負荷定格出力時 |
寸法・重量 | 幅481mm×高さ239mm(脚含む)×奥行489mm(リアパネル脚含む) 47.2kg |
※本ページに掲載したP-800,M-1000の写真,仕様表等は1989年のAccuphase
のカタログより抜粋したもので,アキュフェーズ株式会社に著作権があります。したがっ
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