P-388の写真
ONKYO  IntegraP-388
STEREO PREAMPLIFIER ¥220,000

1992年に,オンキョーが発売したプリアンプ。1986年発売のP-308の上級機にあたるプリアンプ
で,それまでオンキョーの主流だったブラックパネルからゴールドパネルに変わり,内容的にも6年間
の技術的積み上げがしっかり盛り込まれたプリアンプでした。

P-388の大きな特徴は,完全なバランス増幅をめざした「スーパーバランスサーキット」の搭載にあり
ました。「スーパーバランスサーキット」は,ダブル差動増幅回路を採用することにより,入力回路に,平
衡・不平衡回路やトランスなどの変換回路を通すことなく,外来ノイズやコモンモード・ノイズの影響を排
した理想的なバランス増幅ができるようになっていました。さらに,オンキョー自慢のサーボ技術を生か
したダブルスーパーサーボを搭載し,アンプのオフセット・ポイントを一定に保ち,超低域ノイズの発生を
抑えるとともに,出力端子のグランド側の配線など共通インピーダンスによって発生するノイズや電源リ
ップル成分をキャンセルし,出力信号の基準点を入力信号の基準点と等価とするという超安定動作を
させ,安定した動作のバランスアンプを実現していました。

P-388では,フラットアンプ部に「スーパーバランスサーキット」が採用され,平衡,不平衡の入出力に
対応し,安定してダイレクトな増幅が可能となっていました。
また,フォノ入力は,MM/MCそれぞれ専用のフォノイコライザー回路が搭載され,入力端子も専用と
され,変換回路が排除されていました。これにより,カートリッジ入力からプリアンプ出力までに通過する
接点数は,ライン系と全く同じで,最少の接点数となり,理想的なシンプルな増幅系が実現していました。

P-388の信号経路

シャーシ内部では,信号経路の短縮化・単純化がしっかりと行われていました。バランス入力用,アンバ
ランス入力用の切換回路をそれぞれ独立させ,インプットセレクターの操作によって,マイクロプロセッサー
に信号を送り,総合的にコントロールするようになっていました。また,アンバランス入力用の切換回路は
入力端子付近に,バランス入力用の切換回路はマスターボリューム直前に配され,配線の引き回しを避
け,理想的な信号経路を実現していました。さらに,ローレベル部の配線についても,最短距離化するた
めに,マスターボリュームがシャーシ中央のフラットアンプ入力部に置かれ,延長シャフトを介してフロント
パネルから操作するようになっていました。
さらに,フロントパネル内に収納したデジタルコントロール部,各ステージに電源を供給するパワーサプラ
イ部,信号経路を最短距離で結ぶようにした各アンプ部をそれぞれに完全にシールドした3BOX構造が
採用され,電源ノイズなどがアンプ部の各ステージに悪影響を及ぼさないようしっかりとシールドが施され
ていました。

P-388の内部

P-388では,ボリューム,インプットセレクターが手元でコントロールできるリモコン機能が搭載されて
いました。このリモコン機能では,音質を犠牲にすることなく実現するために,ボリュームとインプットセ
レクターはいずれもモーターでドライブするメカニカル方式がとられ,半導体スイッチによるもののよう
な非直線歪が発生することなくリモートコントロールが可能となっていました。

電源部は,負荷変動の影響のない「スーパーリニア電源」と「シャントレギュレーター」を組み合わせた
「スーパーシャントパワーサプライ」を採用した安定化電源回路を搭載していました。MC用イコライザー
アンプ,MM用イコライザーアンプ,Lchフラットアンプ,Rchフラットアンプに供給する電源回路を完全
独立させた構成で,配線インピーダンスの影響を受けない安定した電源供給を可能とし,発生する交
流フラックスノイズも皆無で,他の回路への悪影響も排除されていました。
電源トランスには,磁気リーケージフラックス(磁気誘導による歪み)を抑えた「LASERトランス」を搭
載していました。この「LASERトランス」は,これも1989年のA-817XG,A-701XGで開発,初搭載
されたもので,外周部の幅が標準よりも広い新型のEIコアを採用し,外周部の磁気抵抗を減少させて
コアから磁気が洩れにくい構造とするとともに,コアの外周を硅素鋼板シールド材によって厳重にシー
ルドし,かつコアの周囲にも十二分にシールドを施し,フラックスの漏れを,従来のトランスに比べて
1/30に低減したものでした。P-388には,フラットアンプ用,イコライザーアンプ用,制御回路用それ
ぞれに,完全に独立してLASERトランスを搭載した3トランス構成がとられ,信号を扱うアンプ部への
影響をシャットアウトするとともに,各ステージ間の干渉を排除していました。

パーツの面でも,厳選して採用されていました。マスターボリュームには,従来のボリュームに比較して
−40dBの低歪率を誇るカーボン抵抗によるカスタム・メイド高音質4連ボリュームを採用していまいした。
その他,ドイツ。メーダーシュタイン社の高音質フィルムキャパシタ,高精度大型カーボン抵抗(3/4W型)
銅箔厚70ミクロンの高音質基板,ダイキャスト製XLRタイプ3Pコネクター,金メッキ削り出しピンジャック
超低インピーダンスの電源用ケミコン,極太キャプタイヤACコードなどが採用されていました。

以上のように,P-388は,1986年のP-308以来の久しぶりに発売されたプリアンプで,プリメインアンプ
やコストパフォーマンスにすぐれたセパレートアンプを継続して開発してきたオンキョーらしい,薄型ながら
充実した内容を持つ1台でした。無理のないバランスのとれた滑らかな音を持ったコストパフォーマンスに
すぐれたプリアンプでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



シンプル&ダイレクトな
完全バランス増幅。
−”スーパー・バランス・サーキット”−

回路,電源,コンストラクションの
全てにわたって,
至高のシンプル&ダイレクト,
アイソレーションを追求した
バランス増幅プリアンプです。


◎ダイレクトに増幅する”スーパー・バラ
 ンス・サーキット”構成フラットアンプ
 &MM/MC専用フォノイコライザー
◎シンプル&ストレート。
 ダイレクト・シグナルフロー・コンストラ
 クション採用。
◎超低インピーダンスを実現する
 ”スーパー・シャント・パワーサプライ”
 を各部独立して採用。
◎ピュアな信号伝送を可能にする
 超低リーケージ・フラックスの
 3”LASER”トランス採用。
◎ノイズを完全にシャットアウトするため,
 マイコン部,電源部を完全シールド。
 独立3BOX構造の採用。
◎音質改善と機能性を両立させる
 モータードライブ方式リモコン採用。
◎よりよい音質を追求するために,
 高音質部品を厳選して採用。




●Integra P-388の主要定格●

入力感度,入力インピーダンス PHONO-MC           160μV/100Ω
PHONO-MM           2.5mV/47kΩ
CD,TUNER,LINE,TAPE-PLAY   150mV/15kΩ
定格出力電圧,出力インピーダンス OUTPUT BALANCED   1V/200Ω 最大10V
OUTPUT UNBALANCED 0.5V/100Ω 最大5V
TAPE-REC  150mV/560Ω
PHONO最大許容入力 MC(THD0.05% 1kHz)  13mV
MM(THD0.05% 1kHz) 200mV
周波数特性 MC RIAA偏差 TAPE REC 20Hz〜20kHz ±0.2dB
MM  RIAA偏差 TAPE REC 20Hz〜20kHz ±0.2dB
CD OUTPUT BALANCED・UNBALANCED
                    0.8Hz〜170kHz +0,−3dB
全高調波歪率(THD)
20Hz〜20kHz,VOL:−30dB
出力電圧:3V
PHONO MC       0.005%以下
PHONO MM      0.0008%以下
BALANCED CD    0.0005%以下
混変調歪率 0.003%(定格出力時,SMPTE(70Hz:7kHz=4:1)
SN比
OUTPUT=BALANCED
A・weighted,入力ショート
PHONO MC      81dB(0.5mV入力)
PHONO MM      92dB(5mV入力)
BALANCED CD   105dB(150mV入力)
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 50W(電気用品取締法)
AC出力 POWERスイッチ連動2,非連動1 
           連動:800W,非連動:200W 
寸法 475W×90H×418Dmm
重量 9.2kg


※本ページに掲載したP-388の写真,仕様表等は1992年6月の
 ONKYOのカタログより抜粋したもので,オンキョー株式会社に
 著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用
 等をすることは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 
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