P-308の写真
ONKYO P-308
STEREO PREAMPLFIER ¥130,000

1986年にオンキョーが発売したプリアンプ。型番から考えてオンキョーのセパレートアンプのエント
リーモデルP-306シリーズの後継機と考えられますが,CD登場から3年,CDが主流の時代となっ
て,「リアル フェイズ デジタル アンプ」と称し,デジタルオーディオにより本格的に対応した設計が
施されたプリアンプでした。

P-308の1つ目の特徴は,CDやDAT,PCM・VCRなど接続ソースの増加に対応した多機能化を図
りつつ,「DIRECT IN&DIRECT OUT」と称し,回路構成のシンプル化を図っていたことでした。CD
入力などライン系入力は,INPUT SELECTORで選択された後,ミューティング,バランスボリューム
MODEなどを経ないで,ダイレクトにマスターボリューム→フラットアンプに送り込まれるようになってい
ました。トーンコントロールは,バッシブ素子だけでボリューム回路の一部を用いて構成し,トーン用の
アンプを持たないオンキョー伝統の「ダイレクト・トーン方式」が採用され,CD再生時のアンプはフラット
アンプのみのシンプルな構成となっていました。また,トーンコントロールには,通常のTREBLEとBASS
だけでなく,BASS側は低域をコントロールするCONTRABASSに切り換えられるようになっていました。
さらに,入力側も出力側も最短距離での直結配線が行われ,シンプル化による高純度伝送を実現して
いました。
入力側は,PHONO,CD,TUNER,LINE-1,2,TAPE-1,2,3の8入力セレクターと,TAPE-1専用,
TAPE-2,&3の独立ダブルRECセレクターが装備され,出力側は,OUTPUT-1,OUTPUT-2(VARI
-ABLE)の独立2系統出力で,それぞれMODEスイッチが付属し,3Dスーパーウーファー用,センター
チャンネル再生用の出力が取り出せるようになっていました。また,OUTPUT-2では左右独立の
出力アッテネーターが設けられ,バランス併用として,バランスボリュームは省かれ,回路のシンプル化
と機能の両立が図られていました。

P-308の内部

全体の回路構成は,入力直結のツイン・FET入力段,ツイン・プッシュプル出力段をもつスーパーサー
ボアンプ構成となっていました。比較的小電流で2V程度の定電圧を得る素材として,温度係数や発生
ノイズの点で有利なLEDがバイアスに投入されるなど細かな配慮もあり,1桁近い大幅な歪み低減が
実現されていました。また,イコライザーアンプは,微少な入力信号を扱うため,入力段をサーマルスタ
ビライザー付のダブル・ツインFET構成として,さらにローノイズ化が図られていました。MM,MCとも
カートリッジに合わせてインピーダンスを切り換えられる2ポジションのカートリッジセレクターが搭載さ
れていました。

2つめの特徴として電源ブロックの各種の改良,強化が行われていたことでした。●ACラインからのノ
イズ侵入の徹底排除,●サテライト電源によるローインピーダンス給電,●各アンプ用にそれぞれ別巻
線,専用のブロック給電といった対策が行われていました。特に,電源からのノイズ侵入排除のために
電源トランスの1次〜2次間にノイズセパレーターが設けられ,1次側から侵入してくるコモンモードノイ
ズが排除されていました。ノーマルモードノイズは,チャージノイズフィルターにより取り除かれていました。
ノイズが排除されたクリーンなACラインは,整流・平滑ブロックにより直流に変換され,定電圧回路によ
り安定化が行われていました。また,電源トランス,チャージノイズフィルター,整流・平滑ブロックは,ア
ンプ回路から分離され,シールドケースで覆われ,DCラインのみ取り出して定電圧回路に給電され,電
源部の電磁的な干渉も排除されていました。

3つめの特徴として,デジタル信号に起因する妨害やノイズへの対策が強化されていたことでした。その
ためにシグナル・インフェイズトランス(S・I・T)が搭載されていました。このS・I・Tは,外部から侵入する
コモンモードのイズを除去するだけでなく,さらに機器間をつなぐピンコードのアースラインで生じるL〜R
間の干渉を排除してセパレーションを高める効果も持っていました。そのため,S・I・Tは,入力側,出力
側の双方に挿入され,ピンコードで接続される機器からのノイズの侵入を防ぐだけでなく,セパレーション
良好なプリ〜パワー間の左右独立伝送を実現していました。

以上のように,P-308はセパレートアンプのエントリーモデルながら,本格的な内容を持つコストパフォー
マンスの高いプリアンプでした。P-306RSに比べおとなしい音になっていましたが,癖がなく落ち着いた
音はパワーアンプに広い対応力を持つ使いやすさを持っていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



アナログの完成度も確かめてください。
<デジタル・リファレンス>のインテグラ。


CD時代のプリアンプ
リアルフェイズ<デジタル>アンプ


DIRECT IN & DIRECT OUT
シンプル化と高度化によって,
高純度伝送を追求しました。


◎DIRECT IN−DIRECT OUT
  シンプル化によって高純度伝送を追求しました。
◎シンプル化と多機能を両立。
  8入力,ダブルRECセレクター対応。
◎超低歪率設計
  純粋な増幅を可能にした高性能回路を搭載。
◎3別巻線専用電源回路
◎S・I・Tのもう1つの効果
  L・R独立伝送を実現します。




●主な定格仕様●

入力感度,入力インピーダンス PHONO-MC           160μV(100Ω/220Ω)
PHONO-MM           2.5mV(47kΩ,100kΩ)
CD,TUNER,LINE,TAPE-PLAY     150mV(20kΩ)
定格出力電圧,出力インピーダンス TAPE-REC  150mV(560Ω)
OUTPUT    1V最大6V(160Ω)
PHONO最大許容入力 MC(THD0.05% 1kHz)  13mV
MM(THD0.05% 1kHz) 210mV
周波数特性 MC 4Hz〜150kHz(+0.2,−3dB)
MM 1.8Hz〜170kHz(+0.2,−3dB)
CD,TUNER,LINE,TAPE 0.8Hz〜170kHz(+0,−3dB)
全高調波歪率(THD)
20Hz〜20kHz,VOL:−3dB
出力電圧:3V
MC              0.003%以下
MM             0.0008%以下
CD,UNER,LINE,TAPE 0.0005%以下
混変調歪率 0.003%以下(定格出力時,SMPTE(70Hz:7kHz=4:1))
SN比
IHFネットワーク入力ショート
MC             76dB(320μV)
MM             90dB(5mV)
CD,TUNER,LINE,TAPE 106dB
トーンコントロール
(VOL:−20dB)
BASS   ±10dBMAX(at20Hz)
BASS SELECTOR (ターンオーバー周波数)
 BASS 400Hz(BOOST/CUT)
 CONTRABASS 200Hz(BOOST)
TREBLE ±8dBMAX(at20kHz)
フィルター HIGH CUT FILTER  7kHz 6dB/oct 
ミューティング −20dB
トランジェントキラー動作時間 POWER ON/OFF 7sec/100msec
使用半導体 8FET,49Tr,4IC,37Di
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 22W(電気用品取締法)
AC出力 POWERスイッチ連動2,非連動1 
           連動:800W,非連動:200W 
寸法 465W×103H×403Dmm
重量 8.5kg

※本ページに掲載したP-308の写真,仕様表等は1986年6月の
 ONKYOのカタログより抜粋したもので,オンキョー株式会社に
 著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用
 等をすることは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 
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