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ONKYO P-306
SERVO OPERATIONAL STEREO PREAMPLIFIER
¥100,0001979年にオンキョーが発売したプリアンプ。セパレートアンプのエントリーモデル的存在として高い評価を
得ていた1台で,精悍なデザインの中に,オンキョーならではのサーボ技術を投入した使いやすいプリアン
プでした。オンキョーもこのモデルには力を入れ,プリメインアンプのインテグラシリーズの少し上をねらい,
改良を続けながらロングセラー機となりました。大きな特徴として,オンキョー得意のサーボ技術が生かされた,「Wスーパーサーボ方式」がありました。
これは,付属のスーパーサーボコードによりメインアンプと接続するもので,アウトプットアンプの+側入力端
子が有害な超低域成分を検出して抑圧し,−側サーボアンプが,メインアンプとの接続コード自体の抵抗分
やインダクタンス分,接触抵抗等により発生する有害な成分をキャンセルすることで,チャンネル間の干渉,
セパレーション劣化等を除き,クリアな音を実現しようとするものでした。
そして,プリアンプ全体しては,イコライザアンプとアウトプットアンプの2つから成るシンプルなデュアル・ダイ
レクトアンプ構成となっていました。イコライザは,サーボを生かし,MC用ステップアップトランス等を搭載せずに,イコライザアンプのゲインアップ
でMM型からMC型まですべてのカートリッジに対応した,ワンステージ方式のシンプルな構成のイコライザア
ンプとなっていました。初段差動アンプ部には,2つの超ローノイズ,ハイGm FETをアルミケースで熱結合処
理した物を搭載し,熱的バランスをとるとともに,外来熱雑音を抑えていました。また,差動部をパラ接続するこ
とで,インピーダンスを下げ,SN比の向上が図られていました。この差動アンプは,ミラー帰還容量を抑えるた
めにカスコード接続にして広い周波数特性を実現し,2段目差動アンプと3段目カレントミラー付差動アンプで
大きな裸ゲインをとし,それに部分帰還を用いて,ハイゲインアンプとして優れた安定性と低歪率を確保してい
ました。さらに,終段はA級プッシュプルにより,高域の負荷に対しても無理なく低歪みで次段アンプに信号を
伝送できるようになっていました。
また,MM型カートリッジに加え,MC型カートリッジに対応するために,最適負荷インピーダンスは,47kΩ,3
〜10Ω,10〜40Ωの3ポジションから選択できるようになっていました。アウトプットアンプは,スーパーサーボ方式により,出力端の出力コンデンサがカットされた構成となっていまし
た。低域時定数がサーボ回路のみで決定されるため,低インピーダンス負荷の場合にも低域に不足をきたすこ
とのない一種の低域補償型となっていました。
また,トーンコントロールは,トーンアンプを持たない回路の単純化を図った「ダイレクトトーン方式」が採用され
パッシブ素子のみで構成され,信号経路内にコンデンサが入らない設計により,ディフィートしなくても,音質へ
の影響がないトーンコントロール回路となっていました。
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電源部は,左右チャンネル間を完全に独立させて給電し,前後段間での干渉を防ぐために,給電系全体の
ローインピーダンス化が図られていました。電源電圧の安定供給のために左右独立したNF型定電圧安定
回路を搭載し,給電ラインのローインピーダンス化を図るために,銅板製ブス(母線)ラインで各回路ブロック
を直結する構造をとっていました。内部の部品配置,線の引き回しの音質への影響を考慮して,リモートコントロールスイッチによるダイレクト切
換を採用し,信号経路の最短化と信号線引き回しの低減を図っていました。また,回路のシールド材をはじめ
各部品にいたるまで必要な部分はすべて銅,アルミ,真鍮等の非磁性体を使用して,磁気フラックスを防い
でいました。そのほか,各パーツには検討が加えられ,特性的に余裕のあるものが用いられていました。背面
の入力ピンジャックには金メッキが施され,接触抵抗の低減をはかっていました。以上のように,P-306は,オンキョーがインテグラシリーズで積み上げてきたオーソドックスな技術を投入し,
プリメインとは違ったセパレートならではの余裕ある筐体と構造を持たせた,同社のセパレートアンプのエントリー
モデルともいえるプリアンプでした。オンキョーらしい明るく躍動感のある音をもち,人気モデルとなりました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎MC-MMコンパチブル・バリアブルゲインイコライザ
◎驚異の分解能を可能にした新開発W・スーパーサーボ
◎パッシブ素子だけで構成,ダイレクトトーン方式
◎負荷の変動が音質に影響を与えないアウトプットアンプ
◎ブロック間の干渉を防ぐブス・バーによる直結給電方式
◎高次高調波の影響を抑える非磁性体材料の採用
◎あらゆるカートリッジに適合するカートリッジ・セレクター
◎裏録音を可能にするレコーディング・セレクター方式
◎最高性能を発揮させるための部品配置
◎吟味しつくされた高精度パーツの使用
入力感度,入力インピーダンス | PHONO-MC 130μV(100Ω/330Ω)
PHONO−HIGH GAIN MC 2.5mV(100Ω) PHONO-MM 2.5mV(47kΩ,100kΩ) TUNER,AUX 150mV(47kΩ) TAPE-PLAY 150mV(47kΩ) |
定格出力電圧,出力インピーダンス | TAPE-REC 150mV(2.2kΩ)
OUTPUT 1.5V最大20V(220Ω) |
PHONO最大許容入力 | MC(THD0.05% 1k/10k) 17mV/82mV
MM,HIGH MC(THD0.05% 1k/10k) 300mV/1400mV |
周波数特性 | MC 4Hz〜150kHz(+0.2,−3dB)
MM 1.8Hz〜170kHz(+0.2,−3dB) TUNER,AUX,TAPE 0.8Hz〜170kHz(+0,−3dB) |
全高調波歪率(THD)
20Hz〜20kHz,VOL:−3dB 出力電圧:3V |
MC 0.01%以下
MM 0.003%以下 TUNER,AUX,TAPE 0.003%以下 |
混変調歪率 | 0.003%以下(定格出力時,SMPTE法(70Hz:7kHz=4:1)) |
S/N
IHFネットワーク入力シャント |
MC 69dB
MM 86dB TUNER,AUX,TAPE 100dB |
トーンコントロール | BASS ±8dBMAXat70Hz(VOL:−20dB)
TREBLE ±8dBMAXat20kHz(VOL:−20dB) |
フィルター特性 | HIGH CUT 7kHz 6dB/oct
SUBSNIC CUT 15Hz/20Hz 6dB/oct |
ミューティング | −20dB |
トランジェントキラー動作時間 | POWER ON/OFF 7sec/100msec |
使用半導体 | 6FET,47Tr,4IC,37Di |
電源 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 20W(電気用品取締法) |
AC出力 | POWERスイッチ連動2,非連動1 TOTAL1000W MAX |
寸法 | 450W×99H×407Dmm |
重量 | 7kg |
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ONKYO P-306R
SERVO OPERATIONAL STEREO PREAMPLIFIER
¥100,0001981年,P-306はP-306Rへとモデルチェンジされました。外観,内部とも改良が加えられ,セパレート
アンプのエントリー機としての地位を固めていきました。P-306Rの最大の改良点は,「スーパーサーボ・インテグラル」方式の搭載でした。これは,P-306のW
スーパーサーボをより強化したもので,新たに「スーパースタビライザ」が搭載されていました。「スーパーサ
ーボ・インテグラル」方式では,スピーカーからの音圧によってアンプ自体が揺さぶられ,再生音を濁らせると
いうオンキョーが称するところの「マイクロフォニックノイズ」も考慮されていました。そのため,重量約3kgの
スーパースタビライザをシャーシ構造材として全体を強化するために取付けていました。このスーパースタビ
ライザにより,重量の増加による耐振性の向上,各プリント基板をガッチリ固定することにより基板自体の振
動の抑制などの効果が得られるというものでした。さらに,スーパースタビライザは,特殊なカーボン粒子に
よる導電層が形成され,アンプ内部の空間電荷の均一化によ音の純度を高める効果があるとされていまし
た。
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その他,パーツ等の細かな見直しが図られ,改良が行われていました。特に,コンデンサに次いで音質に影
響を与えるという抵抗器には,新開発の音質改善型抵抗器が大幅に使用されていました。この抵抗器は,
周波数特性,歪み特性に優れ,導電体コート層は帯電荷分布の均一化や磁気特性の改善が図られたもの
でした。以上のように,P-306Rは,P-306をベースに改良が行われ,プリメインアンプの少し上という手頃で使い
やすいプリアンプとして人気を得ました。癖のないバランスのとれた音が安心して聴ける1台でした。当時
アルバイト店員をしていたオーディオ店でも,プリメインアンプの高級機を狙う客層にも安心して薦められる
1台として位置づけていたことを思い出します。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎シンプル構成のデュアルダイレクト方式
◎新開発のスーパーサーボ・インテグラル方式
●高純度再生を目指すスーパースタビライザ
●出力コンデンサレス方式
●パワーアンプとの距離をゼロにするスーパーサーボコード
◎格段に直結給電,干渉を抑える直結給電方式
◎高品位再生を約束するダイレクト・トーン方式
◎高次高調波の影響を抑える非磁性体構造
◎性能をフルに引き出すカート・セレクター
◎裏録音もできるレコーディングセレクター
◎高忠実度再生に欠かせぬ主要部品の配置
◎あらゆる点から配慮された高性能部品採用
◎高性能の特殊音質改善型抵抗器の使用
入力感度,入力インピーダンス | PHONO-MC 130μV(100Ω/330Ω)
PHONO−HIGH GAIN MC 2.5mV(100Ω) PHONO-MM 2.5mV(47kΩ,100kΩ) TUNER,AUX 150mV(47kΩ) TAPE-PLAY 150mV(47kΩ) |
定格出力電圧,出力インピーダンス | TAPE-REC 150mV(2.2kΩ)
OUTPUT 1.5V最大20V(220Ω) |
PHONO最大許容入力 | MC(THD0.05% 1k/10k) 17mV/82mV
MM,HIGH MC(THD0.05% 1k/10k) 300mV/1400mV |
周波数特性 | MC 4Hz〜150kHz(+0.2,−3dB)
MM 1.8Hz〜170kHz(+0.2,−3dB) TUNER,AUX,TAPE 0.8Hz〜170kHz(+0,−3dB) |
全高調波歪率(THD)
20Hz〜20kHz,VOL:−3dB 出力電圧:3V |
MC 0.008%以下
MM 0.002%以下 TUNER,AUX,TAPE 0.0015%以下 |
混変調歪率 | 0.003%以下(定格出力時,SMPTE法(70Hz:7kHz=4:1)) |
S/N
IHFネットワーク入力シャント |
MC 69dB
MM 86dB TUNER,AUX,TAPE 100dB |
トーンコントロール | BASS ±8dBMAXat70Hz(VOL:−20dB)
TREBLE ±8dBMAXat20kHz(VOL:−20dB) |
フィルター特性 | HIGH CUT 7kHz 6dB/oct
SUBSNIC CUT 15Hz/20Hz 6dB/oct |
ミューティング | −20dB |
トランジェントキラー動作時間 | POWER ON/OFF 7sec/100msec |
使用半導体 | 8FET,49Tr,4IC,37Di |
電源 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 26W(電気用品取締法) |
AC出力 | POWERスイッチ連動2,非連動1 TOTAL1000W MAX |
寸法 | 450W×99H×403Dmm |
重量 | 9.5kg |
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ONKYO P-306RS
SERVO OPERATIONAL STEREO PREAMPLIFIER
¥110,0001983年には,P-306RSにモデルチェンジされました。内部回路,構造等はP-306Rから継承され,デザイン的
にも基本的に同じですが,サイドウッドがついたのが大きな変化でした。最大の改良点は「スーパーターボ方式」の採用でした。これは,「デルタターボ回路」と「ターボフィルター回路」から
構成され,電源トランスに起因する変調雑音を取り除くことで,動的ダイナミックレンジの拡大,分解能の向上等,音
質を改善したものでした。
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「デルタターボ回路」は,ダイオードをデルタ結線した形をしており,ダイオードのはたらきにより,電源トランスの両端
の電圧に対する電圧変動と信号回路のアースポイントへの変調雑音の流れ込みを抑えるはたらきをするものでした。
「ターボフィルター回路」は,電源トランスのところにCRによる特殊フィルターを入れたもので,このCRとトランスのイン
ダクタンスにより,等価回路のフィルターを構成し,変調雑音成分を抑えた充電エネルギーをケミコンに送り込むはた
らきをするとともに,外部のAC電源に乗っている種々の雑音等が入り込むのを防ぐはたらきをするものでした。
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以上のように,さらに改良を受けたP-306RSは,このシリーズの最終型として高い完成度を持ち,セパレートアンプ
のエントリーモデルとして,高い評価を得ました。オンキョーらしいクリアでバランスのとれた明るい音をもっていました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎透明感プラスしなやかさ,完成度を一段と高めた
スーパーターボ電源の採用。
◎外部要因による音質上の問題を一挙に解決した
スーパーサーボインテグラル方式。
●外部振動の影響を抑える働き
●低域不足を解消する出力コンデンサーレス方式
●パワーアンプとの距離をゼロにするスーパーサーボコード
◎音の透明度を一段と引きたてるシンプル構成,
デュアル・ダイレクトアンプ方式。
◎各ステージにダイレクト給電,
干渉を抑える直結給電方式の採用。
◎高品位再生を約束,ダイレクト・トーン方式。
◎MCカートリッジの性能をフルに引き出すことの
できるカートリッジ・セレクター。
◎CDプレーヤーの出力がダイレクトに入力できる
CDポジション付セレクター。
◎裏録音もできるレコーディング・セレクター。
入力感度,入力インピーダンス | PHONO-MC 130μV(100Ω/220Ω)
PHONO−HIGH GAIN MC 2.5mV(100Ω) PHONO-MM 2.5mV(47kΩ,100kΩ) TUNER,AUX 150mV(47kΩ) TAPE-PLAY 150mV(47kΩ) |
定格出力電圧,出力インピーダンス | TAPE-REC 150mV(560Ω)
OUTPUT 1V最大20V(220Ω) |
PHONO最大許容入力 | MC(THD0.05% 1k/10kHz) 17mV/82mV
MM,HIGH MC(THD0.05% 1k/10kHz) 300mV/1400mV |
周波数特性 | MC 4Hz〜150kHz(+0.2,−3dB)
MM 1.8Hz〜170kHz(+0.2,−3dB) TUNER,AUX,TAPE 0.8Hz〜170kHz(+0,−3dB) |
全高調波歪率(THD)
20Hz〜20kHz,VOL:−3dB 出力電圧:3V |
MC 0.008%以下
MM 0.002%以下 TUNER,AUX,TAPE 0.0015%以下 |
混変調歪率 | 0.003%以下(定格出力時,SMPTE法(70Hz:7kHz=4:1)) |
S/N
IHFネットワーク入力シャント |
MC 69dB
MM 86dB TUNER,AUX,TAPE 100dB |
トーンコントロール | BASS ±8dBMAXat70Hz(VOL:−20dB)
TREBLE ±8dBMAXat20kHz(VOL:−20dB) |
フィルター特性 | HIGH CUT 7kHz 6dB/oct
SUBSNIC CUT 15Hz/20Hz 6dB/oct |
ミューティング | −20dB |
トランジェントキラー動作時間 | POWER ON/OFF 7sec/100msec |
使用半導体 | 8FET,49Tr,4IC,37Di |
電源 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 26W(電気用品取締法) |
AC出力 | POWERスイッチ連動2,非連動1 TOTAL1000W MAX |
寸法 | 480W×100H×403Dmm |
重量 | 10.5kg |
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