P-303の写真
ONKYO Integra P-303
ULTIMATE STEREOPHONIC PREAMPLIFIER
                           ¥80,000


1976年にオンキョーが発売したプリアンプ。非常に薄型の筐体ですが,当時いくつかのメーカーが
アンプのセパレート化の1つの形として,シンプルな機能のアンプを用途に合わせて組み合わせて使
う「システムアンプ」を提唱していました。オンキョーも「Integra SYSTEM AMP」として発売してい
ました。P-303はその中のプリアンプにあたり,機能のシンプル化と薄型のスマートな外観が特徴的
でした。

P-303の大きな特徴は,システムアンプの一員として必要最小限の回路により高純度な増幅をめざ
したことと,コンストラクションや電源供給の上で,L・Rチャンネル,各回路ブロックのセパレーション
をきちんと確保していたことでした。
全体の構成は,MCアンプ,イコライザアンプ,フラットアンプ,バッファアンプからなり全ステージとも
NPNとPNPを組み合わせて裸特性を改善した,A級完全上下対称プッシュプル方式が採用されてい
ました。そして,入力は,PHONO(MM,MC),TUNER,TAPEの4系統のみとされ,トーンコントロ
ール等のコントロール機能は一切省略され,多系統の入出力機能や周波数調整等の機能は他のシ
ステムユニットに任せて回路のシンプル化が図られていました。

P-303の内部

内部の配置は,「DLC(デュアル・ライン・コンストラクション)」と称され,L・Rチャンネルを完全に分離
するとともに低信号レベルの入力側から高信号レベルの出力側まで,各ブロックを信号の経路に合わ
せて一直線に並べ,L・Rチャンネル間,各ブロック間の干渉を抑え,回路動作の純化が図られていま
した。また,シールドケースにはアルミ材を全面的に採用し,特に小出力の信号を扱うMCアンプ部に
は2重シールドが施されていました。
さらに,回路間の相互干渉を抑えるため,電源部を含めた給配電ラインの低インピーダンス化と電源
の安定供給化が図れる,純度の高い銅板製のマルチ・スプレイ・ブスラインが搭載されていました。ブ
スアースラインには,抵抗値0.0027Ω/cmの銅板,±B電源供給用のブスホットラインには,0.008
Ω/cmの銅板が使用され,各回路ブロックのブランチをそれぞれ直接ローインピーダンスの供給幹線に
直結する直結給電方式となっていました。
そして,電源回路には定電圧電源を2重に通したダブル。スタビライザ回路が採用され,その内部に使
われるケミカル・コンデンサには,特にオーディオ用を目的とした低損失,低リーケージで歪特性や温度
特性に優れたオーディオ信号用コンデンサを素材から内部構造まで新開発・新設計のものが使用され
ていました。

イコライザアンプ部は,初段は差動3段8石構成で,差動アンプ部には,高耐圧,超ローノイズPCT方
式シリコン・エピタキシャル型トランジスター(2SC1681,2SA841)が使用され,信号系のローインピ
ーダンス化とあいまって83dBの高SN比を実現していました。RIAA定数回路には,周波数特性や過渡
特性に優れtanδの小さな無誘導アルミ箔構造のポリプロピレン・フィルム・コンデンサーのG級(容量
誤差±2%以内)を用いることによりRIAA偏差±0.2dB以内(20Hz〜20kHz)という高精度な特性を
確保していました。
MCアンプには,超ローノイズトランジスタをトリプルプッシュプルで使用した6石構成の低入力インピー
ダンス型MCアンプが搭載され,70dBのSN比を実現していました。

ボリュームコントロールには,フラットアンプの前後で連動してコントロールできる4連精密アッテネーター
型ボリュームが搭載され,ボリュームを絞り込んだときのSN比,ギャングエラーやステップエラー,歪特
性などに優れた性能を実現していました。

フラットアンプ部には,NFループ内のコンデンサを完全に除去するため,DCアンプ構成の広帯域回路
が採用されていました。初段差動増幅回路には,2個のローノイズ・トランジスタのチップを組み込んだ
デュアルトランジスタが採用され,熱平衡特性に優れ,直流増幅率比1±0.02というバランスよく安定
なDCアンプが実現していました。

パワースイッチのON/OFF時に発生するクリックノイズに対しては,新開発のブレイク型リードリレーを
使用したトランジェントキラー回路が採用され,従来のとは異なり,信号経路に直接入らずシャント型に
組み込まれ,通常使用時のリレーの接触抵抗等による影響を抑えていました。

以上のように,P-303は,回路のシンプル化と各ブロックのセパレーションを高めるというオーソドック
スな手法で音質を高めたコストパフォーマンスの高い1台でした。機能は非常にシンプルですが,システ
ムアンプとして多機能にも発展できるという使いでのある1台でもありました。そのシンプルな外観同様
に純度の高い中高域のすっきり伸びたクリアな音は高い評価を得ました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



必要最少源の構成で
高忠実度伝送に徹した
アルティメイト・プリアンプ


◎D.L.C. 直結給電方式
 ●直結給電方式
 ●デュアル・ライン・コンストラクション(D.L.C.)

◎A級完全上下対称型プッシュプルアンプ
◎低雑音・高S/Nイコライザアンプ
◎前後連動方式精密アッテネーター型ボリューム
◎リードリレー使用のトランジェントキラー回路
◎低雑音・高性能MCアンプ搭載
◎広帯域DCアンプ構成の段間増幅回路
◎無誘導カップリング・コンデンサ
◎多機能化システム・アンプ方式




●Integra P-303定格●

入力感度・入力インピーダンス PH-MC(50Ωドライブ) 100μV:10Ω
PH-MM           2.5mV:30k/50k/100kΩ
TUNER,TAPE-PLAY  150mV:50kΩ
ACCESSORY-RCV   1.5V:82kΩ
定格出力・インピーダンス TAPE-REC  150mV:12kΩ
ACCESSORY-SEND 1.5V:100Ω
OUTPUT  1.5V(最大15V):600Ω
PHONO最大許容入力
(THD0.05%)
MC(1kHz/10kHz)  13mV/63mV rms
MM(1kHz/10kHz) 330mV/1600mVrms 
周波数特性 PH-MM 20Hz〜20kHz(±0.2dB)
TUNER,TAPE 3.5Hz〜200kHz(+0,−1.5dB)
全高調波歪率(THD)
(3V出力時)
PH-MC(20Hz〜20kHz)  0.03%以下
PH-MM(20Hz〜20kHz)  0.006%以下
混変調歪率 0.01%以下(定格出力時,SMPTE(70Hz:7kHz=4:1))
S/N
IHFネットワーク入力シャント
PH-MC(入力50Ω)   70dB
PH-MM(入力シャント) 83dB
TUNER,TAPE(入力シャント)100dB
入出力極性 PH-MC 逆相
PH-MM 同相
TUNER,TAPE,ACC-RCV  同相
使用半導体 52Tr,29Di
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 20W(電気用品取締法)
AC出力 3-SW,1-UNSW TOTAL1100VA
寸法 450W×83H×370Dmm
重量 7.5kg

U-30の写真
ONKYO Integra U-30
SYSTEM UNIT ¥68,000

P-303を含む「Integra SYSTEM AMP」のシリーズには,システムユニットのU-30が発売されていま
した。U-30は,セレクターをはじめ各種切換スイッチ類とピークメーターを1つにまとめたもので,P-303
と組み合わせることで,システムの多機能化を図ることができました。また,セレクターは必要な部分だけ
を使用することができるようになっていました。

U-30をP-303と組み合わせることで,入出力系統が,フォノ3系統,チューナー3系統,テープデッキ2系
統(相互ダビング可),プリアンプ出力2系統が可能となり,モード切換もSTEREO(NORMAL,REVERSE)
MONO(L+R,L,R)が可能となりました。また,パワーアンプM-505との接続で,パワーアンプ出力セレ
クトを用いることで,スピーカーシステムが2系統となるようになっていました。
また,ヘッドホン端子も備えられ,ヘッドホンの使用も可能となりました。

U-30を核としたシステム図

ピークメーターは,パワーアンプ及びプリアンプの出力がモニターできるメーターで,メーター・セレクトの切換で
パワーアンプの出力はwattで,プリアンプの出力はdBでそれぞれ読み取ることができるようになっていました。
メーターの応答速度は100μsecで,感度は100W/10W,10V/1Vと2段階で切換えることができるように
なっていました。

システムアンプの中に入れた際に音質の劣化を抑えるために,P-303同様に音質重視の設計がなされ,L・R
のセパレーションを重視したD.L.C.方式がとられていました。U-30の接続により容量の増加を極力抑えるため
ピンジャックのできるだけ近くで切換える構造がとられ,スピーカー切換もリレーと太線が使用され,ダンピング
ファクターへの影響も抑えられていました。さらに,ピン端子はすべて接触抵抗が少なく酸化しにくい金メッキが
施されていました。




●Integra U-30定格●

切換部
PHONO
3系統
TUNER
3系統
TAPE
2系統(相互ダビング可)
MODE
STEREO(NORM,REV),MONO(L+R,L,R)
PRE OUT
2系統
SPEAKER
2系統
ピークメーター部
指示切換
PRE OUT(1V,10V),SPEAKER(100W,10W)
指示範囲
−40dB〜+5dB
指示誤差
 +5〜−10dB:±1dB
−10〜−30dB:±2dB
−30〜−40dB:±3dB
感度切換
1V/10V/100W(8Ω)/10W(8Ω) 0dB点
周波数特性
20Hz〜20kHz ±1dB
応答速度
100μsec
復帰速度
1.0sec
使用半導体
4IC,9Tr,25Di
電源
AC100V 50/60Hz
消費電力
17W
寸法
450W×83H×360Dmm
重量
6kg

E-30の写真
ONKYO  Integra E-30
AUDIO EQUALIZER ¥105,000

「Integra SYSTEM AMP」のシリーズには,さらにf特的色付けなどができるオーディオイコライザーが
発売されていました。素子数はオクターブ刻みで9素子で,さらに最低域は3段階に切換が可能で,可変
ポイントは,全部で11ポイントとなっていました。
左右独立可変で,変化量が正確に設定できるスイッチング式の回転コントローラーにより精密な調整が
行えるようになっていました。最大変化量は±5dB(0.5dBステップ)と±10dB(1dBステップ)の2段切換
で,多素子化とQ変化方式の採用により,素子間の周波数特性のつながりもなめらかに確保されていまし
た。また,時定数回路には,歪の少ない半導体インダクターを使用していました。

システムアンプの中に入れた際に音質の劣化を抑えるために,P-303同様に音質重視の設計がなされ,
L・Rのセパレーションを重視した全段A級プッシュプル回路とD.L.C.方式がとられ,最大15Vrmsのダイナ
ミックレンジと0.01%の低歪みを実現していました。
その他の機能として,ローカットフィルター,完全ディフィートスイッチも備えられ,全ピンジャックには金メッ
キ処理が施されていました。



●Integra E-30定格●

出力電圧/インピーダンス
定格:1.5V/600Ω
最大:15V/600Ω
入力感度/インピーダンス
1.5V/100kΩ
周波数特性
5Hz〜100kHz(+0,−1.5dB)
全高調波歪率
(3V出力時,20Hz〜20kHz)
0.01%以下
混変調歪率
(定格出力時,SMPTE70Hz:7kHz=4:1)
0.01%以下
S/N
(IHF Aネットワーク入力シャント)
100dB以上
中心周波数
32/45/63Hz切換,125Hz,250Hz,500Hz
1kHz,2kHz,4kHz,8kHz,16kHz
レベルコントロール可変範囲
−5dB〜+5dB(0.5dBステップ)
−10dB〜+10dB(1dBステップ)
ローカットフィルター
15Hz,30Hz
トランジェントキラー動作時間
8sec/100msec(POWER ON/OFF)
使用半導体
68Tr,28Di
電源
AC100V 50/60Hz
消費電力
28W
寸法
450W×83H×360Dmm
重量
6.5kg


 
※本ページに掲載したP-303,U-30,E-30の写真,仕様表等は
 1977年5月のONKYOのカタログより抜粋したもので,オンキョー
 株式会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を無断
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