Accuphase P−300L
STEREO POWER AMPLIFIER ¥330,000
アキュフェーズが1973年,創立第1号のパワーアンプとして発売したP−300の流れを汲む,P−300シリーズの
第4世代に当たるモデルです。このP−300シリーズは,プリアンプのC−200と共に,アキュフェーズの中で最も
長い歴史を誇るモデルでした。(1991年に,P−360が発売になるまでの18年間!)そのすぐれた音質と機能性
が長い間高く評価されていたことはよく知られています。このP−300シリーズはモデルチェンジの度に時代の先端の技術を導入し,完成度を高めていきました。初代の
P−300では,当時の国産アンプの水準を大きく超え,海外機にしか見られなかった150W/chのハイパワー
を実現しました。(このパワー値がP−300の名称につながっている。)それから3回のモデルチェンジを経てこの
P−300Lが1984年に登場しました。その間,「全増幅段プッシュプル駆動」をベースに,DC化,低負荷インピ
ーダンス対応,バランス入力対応というように改良が重ねられ,パワー段の強化(出力も170Wにアップ),ドライブ
段のMOS−FET化など時代に対応して高性能化が進められていきました。音の方も,初代のP−300が,どちら
かというとアメリカンサウンドともいうべきやや力強い感じがあったのに対して,次第に完成度を高め,音の方も洗練
され,整然として透明感のある日本的とも言えるアキュフェーズサウンドをつくっていきました。(この整然とした音が
嫌いという人もいますが,私は個人的に好きです。)出力段は,トランジスター10個による5パラレルプッシュプルで,出力170W/ch(8Ω)を実現しています。大型ト
ロイダル電源トランスと47,000μF×2のコンデンサーによる強力電源部とあわせ,2Ω負荷での駆動も可能に
し,300W/ch(2Ω)を実現していました。
小出力時の音質を重視して,プリドライブ段は理想的と言われる「A級カスコードプッシュプル」とし,出力段の前段,
ドライブ段には,パワーMOS FETによる「カスコード・プッシュプル」として入力段の「カスコード・ブートストラップ・
プッシュプル回路」と合わせて,全段プッシュプル駆動を実現し,裸特性を高めていました。このモデルから,600Ω平衡入力を備え,プロ機,海外機等の広い範囲のプリアンプに対応できるようになりまし
た。もちろん,同社のC−200LやC−280の平衡出力装備を考えたものだと思われますが。このパワーアンプは
アキュフェーズらしく多機能で,スイッチの切り替えでBTL駆動が可能となっており,そのときの出力は,500W
(8Ω),600W(4Ω)となりました。また,入出力とも3系統ずつ備え,そのうち1系統はフロントパネル内にあり,
各種機器のテスト等もしやすくなっていました。このP−300Lは,名機としての18年間の歴史の中での1世代ですが,完成度が高く音の良い使いやすいパワ
ーアンプでした。C−200Lと組み合わせたときの音は実に中庸をいくもので,整然とした素晴らしい音でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
全段プッシュプル構成。 |
ステレオ=170W/ch(8Ω) |
モノフォニックで500W(8Ω)を保証する |
5−パラレル・プッシュプル・パワーステージ。 |
低負荷インピーダンス対応設計により, |
2Ω(ステレオ=300W/ch)の超低負荷 |
インピーダンスも完全駆動。 |
◎5−パラレル・プッシュプル・出力段で
8Ω=170W/ch,2Ω=300W/chを保証。 |
◎極限的なリニアリティー,高域特性,小信号レベルの
低ひずみを実現した 「カスコードPP+MOS FETカスコードPP」ドライブ段 |
◎カスコード・ブートストラップ差動プッシュプル入力回路 |
◎DCサーボ方式直結アンプを構成。 |
◎ケーブルを延長しても誘導雑音を受けない
600Ω平衡入力を装備。 |
◎ブリッジ接続により500W/8Ω,600W/4Ωの
純粋モノフォニックアンプ化。 |
◎ホールド機能付き対数圧縮型ピーク・パワー・メーター |
◎フロント・パネルの入出力端子 |
●P−300L 保証特性●
連続平均出力 | ステレオ仕様時(両チャンネル同時動作)
300W/ch 2Ω負荷 250W/ch 4Ω負荷 170W/ch 8Ω負荷 85W/ch 16Ω負荷 モノフォニック仕様時(ブリッジ接続) 600W 4Ω負荷 500W 8Ω負荷 340W 16Ω負荷 (20〜20,000Hz ひずみ率0.01%) |
全高調波ひずみ率 | ステレオ仕様時(両チャンネル同時動作)
0.01% 2〜16Ω負荷 モノフォニック仕様時(ブリッジ接続) 0.01% 4〜16Ω負荷0 |
IMひずみ率(EIA) | 0.003% |
周波数特性 | 20〜20,000Hz +0,−0.2dB
(連続平均出力時,レベル・コントロールMAX) 0.5〜250,000Hz +0,−3.0dB (1W出力時,レベル・コントロールMAX) 0.5〜100,000Hz +0,−3.0dB (1W出力時,レベル・コントロール−6dB) |
ゲイン | 28dB |
負荷インピーダンス | 2〜16Ω ステレオ仕様時
4〜16Ω モノフォニック仕様時(ブリッジ接続) |
ダンピング・ファクター(EIA 50Hz) | 300 ステレオ仕様時
150 モノフォニック仕様時(ブリッジ接続) |
入力感度(8Ω負荷) | ステレオ仕様時
1.5V(連続平均出力時) 0.12V(1W出力時 EIA) モノフォニック仕様時(ブリッジ接続) 2.5V(連続平均出力時) 0.12V(1W出力時 EIA) |
入力インピーダンス | 20kΩ不平衡/600Ω平衡 |
S/N(A補正) | 120dB
(連続平均出力時,入力ショート) 100dB (1W出力時 入力1kΩ) ステレオ・モノフォニック仕様時共 |
ステレオ・ヘッドホーン | 低出力インピーダンス型
適合インピーダンス:4〜100Ω |
サブソニック・フィルター | 10Hz −18dB/oct |
出力メーター | 対数圧縮ピーク指示型 −40dBから+3dB及び
出力直読目盛 ピークホールド切替付 |
使用半導体 | 56Tr,12FET,8IC,78Di |
電源及び消費電力 | 100V,117V,220V,240V 50/60Hz 消費電力 78W 無入力時 550W 電気用品取締法 560W 8Ω負荷定格出力時 |
寸法・重量 | 幅445mm×高さ160mm(脚含む)×奥行373mm
23.0kg |
※本ページに掲載したP−300Lの写真,仕様表等は1984年のAccuphaseのカタログ
より抜粋したもので,アキュフェーズ株式会社に著作権があります。したがって,これらの
写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
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