Accuphase
P-300
STEREO POWER AMPLIFIER ¥195,000
1973年にケンソニック(現アキュフェーズ)が発売したパワーアンプ。1972年にケンソニック株式
会社として発足したアキュフェーズブランドの製品第1号として
C-200とともに発売されたのがパ
ワー
アンプのP-300で,
当時,海外の高級機に負けない性能の本格的セパレートアンプの登場として話
題になり,その性能の高さから,高い評価を得ることとなりました。
P-300の回路構成における最大の特徴は,C-200と同様に,入力から出力まで,全増幅段が全段直
結完全対称プッシュプル方式を採用していることでした。これにより,NFBをかける前の裸特性の大幅
な向上が図られ,この設計はその後のアキュフェーズのアンプに引き継がれていきました。
そして,当時はアメリカ製を中心とする海外製品の独壇場であったハイパワーアンプの分野に国産アン
プとして初めて登場した意義深い1台でもありました。
P-300は,ファーストアンプ,フィルターユニット,ドライブアンプ,パワーアンプの全部で4ブロック構成
となっていました。入力端子からの信号は,まずレベルコントロールを通りファーストアンプに入るように
なっていました。ファーストアンプは,6石構成で,初段が4石構成のディファレンシャルアンプ(差動アン
プ),次段が2石のプッシュプル出力段という構成になっていました。それに続くサブソニック・フィルター
ユニットは,2石構成のPNP,NPNトランジスターによるプッシュプル・エミッタフォロアーで構成された
アクティブ・フィルターとなっていました。ドライブアンプは,8石構成で,初段が4石のディファレンシャル
アンプで,次段が2石のレベルシフトアンプとなっていました。この段には,1石構成のバイアス安定化回
路と2石構成のパワーリミット回路も設けられていました。
パワーアンプ(出力段)は,8石構成の純コンプリメンタリー方式で,パワードライバーとNPN,PNPのト
リプルプッシュプル回路から成り立っていました。
電源部は,中央に配置された大型の電源トランスと40,000μF×2の大容量のフィルムコンデンサー
からなる強力なもので,150W×2(8Ω)のハイパワーにも十分なエネルギーの供給を可能にすると
ともに,小出力時,中出力時にも量感のある音質が実現されていました。
P-300も,ペアとなるC-200と同様に,パワーアンプとして多機能な設計となっていました。スピーカー
出力はリアパネルに3系統,フロントのサブパネル内に1系統の4系統,入力は,リアパネル,フロントサ
ブパネルに各1系統の2系統が備えられ,それぞれスイッチで切替えられるようになっていました。
また,超低域の不要入力や,超高域の不要入力をカットするためのバンド・パス・フィルターも装備されて
いました。これは,17Hz(18dB/oct),24kHz(18dB/oct)のフィルターで,不要なノイズ成分をカット
できるもので,ON-OFF切替えができるようになっていました。さらに,150W(8Ω)の大出力のP-300
ならではの機能として,高能率スピーカー等で必要以上のパワーを制限するパワーリミッター(FULL,50%
25%)のスイッチが設けられていました。
フロントパネルには,アキュフェーズらしくパワー・メーターが装備され,0dB,−10dB,−20dBとレンジを
スイッチで切替えられるようになっていました。
以上のように,P-300は,ハイパワーと高音質,多機能な使いやすさなど多くの要素を満足させようと,ア
キュフェーズがパワーアンプの1号機として完成させた意欲作でした。そして,1号機でありながら高い完成
度を示していました。ハイパワーと多機能をC-200に合わせた比較的コンパクトな筐体に納めたあたりも,
設計の妙を感じさせるものでした。「アメリカのアンプのような」と称された力強さを持った音も特徴で,今で
もこの音を好むファンも多いとききます。そして,P-300は,P-300S(1977年),P-300X(1980年),
P-300L(1984年),P-300V(1987年)とモデルチェンジを受けながらロングセラーモデルとなりました。