M-508の写真
ONKYO  M-508
STEREO POWER AMPLIFIER ¥170,000

1986年にオンキョーが発売 したパワーアンプ。セパレートアンプのエントリーモデルとしてオンキョーが
ロングセラーを続けていたパワーアンプM-506シリーズの上級機とも後継機とも見られるパワーアン プ
で,超弩級機M-510の技術も生かされたコストパフォーマンスの高い1台でした。

M-508の最大の特徴は,「パワー・インフェイズトランス(P・I・T)」を搭載していたことでした。スピーカー
駆動電流がスピーカーの特性によって位相の乱れを起こし,その位相のずれた電流が,フラックス,アー
ス,B電源などを通じて増幅部へ帰ってくることになり,入力信号も乱してしまいます。このスピーカーを駆
動している電流の位相のずれたものが増幅部へ帰ってくることを防ぐために電流の経路に新たにもう一つ
入れられたトランスが「パワー・インフェイズトランス」でした。これは,超弩級パワーアンプM-510で開発さ
れたもので,プラス側にある波形の電流が流れると,それによって, マイナス側に,ちょうど逆位相で波形
の同じ電流が流れるようになっています。マイナス側を流れる電流はプラス側に逆位相で同じ波形の電流
を流させる働きをします。逆位相で同じ波形の電流がプラス側とマイナス側に流れれば,波形の山,谷は
互いに打ち消し合って平坦になるということで,「パワー・インフェイズトランス」の中では,プラス側とマイナ
ス側の電流がお互いにコントロールし合って,電流に乗ってきた余計は成分だけをキャンセルするという仕
組みでした。この働きをさせるために,オンキョーは試行錯誤を重ね,インピーダンスが非常に低くて結合
度が高いという特別なトランスを作り上げたというものでした。

電源トランスとして,L・R独立でEIコアの電源トランスを搭載し,上記のようにL・R専用のP・I・Tを加えた4
トランス構成とし,10,000μFの大型ケミコン8本を搭載した強力な電源部としていました。L・Rch専用
の2つのP・I・Tは,アンプの位相特性を高めるとともに,P・I・Tは,ACラインから侵入するコモンモードノイ
ズの排除というもう1つの役割も果たしていました。

M-508の内部

強力な大容量電源からのダイレクト給電を受けたトリプルプッシュプルのパワー部は,定格出力200W+
200W(8Ω)のハイパワーを実現していました。さらに,低インピーダンス負荷においても安定した動作を
可能とし,690W+690W(2Ω),460W+460W(4Ω),270W+270W(8Ω)というダイナミックパ
ワーを実現していました。
スイッチング速度の速いトランジスターを使うことでスイッチング歪みを解消し,クロスオーバー歪みは,バ
イアスを可変するのではなく,特殊な補正回路でバイアスを補正して対処しようとする,オンキョー伝統の
リニアスイッチング方式によりクロスオーバー歪み,スイッチング歪みを抑え,LEDを採用した低ノイズバイ
アスの設定,スピーカーの+,−両端をサーボコントロールするWセンシングサーボ回路なども採用され,
THD0.002%以下という低歪みを実現していました。

入力端子は,DIRECTとVARIABLEの2系統が搭載され,ダイレクト端子は,入力〜アンプ回路に直結と
なるようになっていました。バリアブル端子は,高精度マルチブラシの左右独立のレベルコントロールが備
えられ,CDダイレクトが可能で,レベルコントローラーの上のLEDの点灯で使用状態が確認できるように
なっていました。

以上のように,M-508はしっかりした電源部をベースに,位相の正確さを徹底して求めた上級機M-510
の技術,オンキョーが積み上げてきた電源まわりのサーボ技術が十分に生かされた実力派のパワーアン
プでした。音は,P-308と組み合わせるとバランスがとれたオーソドックスな音でしたが,単体では,オン
キョーらしい明るく力強い音を持ち,プリアンプ次第で楽しめる音を持ったアンプでもありました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



アナログの完成度も確かめてください。
<デジタル・リファレンス>のインテグラ。

CD 時代のパワーアンプ
リアルフェイズ<デジタル>アンプ


左右独立4トランス,
200W+200Wのクオリティパワーを
実現,位相を正しく再生して,
リアルな音場空間を構築します。

◎正確な位相・音場感情報を再生する

  リアルフェイズ<デジタル>アンプ構成。
◎ 左右独立4トランスの強力電源部
  200W+200W(8Ω)のハイパワー実現。
◎T・ H・D0.002%の超低歪率。
  しかもローレベルのリニアリティも秀逸です。
◎CD ダイレクト可能,2系統入力端子。




●主な定格仕様●



■アンプ部■

実効出力 200W+200W(8Ω,20Hz〜20kHz)
240W+240W(6Ω,20Hz〜20kHz)
290W+290W(4Ω,20Hz〜20kHz)
全高調波歪率(T.H.D) 0.002%(定格出力時,20Hz〜20kHz,8Ω)
混変調歪率 0.003%(70Hz:7kHz=4:1)
パワーバンドウィズス 5Hz〜100kHz(IHF−3dB THD0.2%)
利得 32dB
周波数特性 1Hz〜100kHz(+0,−1.5dB)
S/N比 124dB(IHF-Aフィルター入力ショート)
入力感度 1V
入力インピーダンス 20kΩ
ダンピングファクター 140(8Ω,50Hz)
入力端子
VARIABLE×1,DIRECT×1
出力端子 SPEAKERS×2



■メーター部■

レンジ切換 ×1(0dB=200W),×0.1(0dB=20W)
指示範囲 ×1レンジ  :0.01W〜500W
×0.1レンジ:0.001W×50W
指示精度 0±1dB,−10±2dB,−20±3dB
応答速度 100μsec(−∞→0dB)
復帰速度 1sec(0dB→−20dB)




■その他■

電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 500W(電気用品取締法)
ACアウトレット 100W(電源スイッチ非連動)
寸法 465W×187H×426Dmm
重量 25kg


※本ページに掲載したM-508の写真,仕様表等は1986年6月
 ONKYOのカタログより抜粋したもので,オンキョー株式会社に
 著作権
があります。した がってこれらの写真等を無断で転載,引用
 等をす
ることは法律で禁じ られていますのでご注意ください。
 
★メニューにもどる            
 
 

★セパレートアンプPART4にもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた 方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。                       


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp