M-506の写真
ONKYO M-506
SERVO OPERATIONAL STEREO POWER AMPLIFIER
                                ¥170,000

1979年にオンキョーが発売したパワーアンプ。セパレートアンプのエントリーモデルとしてオンキョーが
出していたモデルで,プリアンプP-306とのペアを想定し,プリメインアンプのインテグラシリーズの少し
上のモデルとして使いやすい1台でした。

大きな特徴として,オンキョー得意のサーボ技術が生かされた,「Wスーパーサーボ方式」がありました。
これは,2つのサーボアンプがDCアンプの出力の+側,−側に接続されたもので,+側のサーボアンプ
は,音楽信号に重畳されてスピーカーに流れ込もうとする超低域成分をキャンセルする働きをし,−側の
サーボアンプは入力のアースと出力のアース側との間に存在するインピーダンス分,電源コンデンサの
内部抵抗や,リード線その他によるインピーダンス分に起因して発生する起電力(歪み成分)を抑え込む
働きをするものでした。以上のように,出力側の両端子をサーボコントロールすることで歪み成分を抑え
分解能を高める働きがあるということでした。

出力段は3段ダーリントン構成で,ハイfTパワートランジスタを使用することで,低負荷まで低歪みを得て
いました。さらに,低歪みを誇るオンキョー自慢のリニアスイッチング方式を採用していました。これは当時
スレッショルドから始まり,国産アンプの中で大流行した疑似A級アンプの一種ですが,特徴は可変バイア
スではないところにありました。通常B級動作のアンプは+側と−側のトランジスターの動作特性のつなぎ
目でクロスオーバー歪みが生じたり,切換時のスイッチングノイズが問題になったりします。そのため,この
ような問題のない(1個のトランジスターで+−両方の動作をする)A級アンプになぞらえたB級動作のアン
プが疑似A級アンプとしてたくさん出てきました。「スーパーA」「リニアA」「ノンスイッチング」など各社から出
た疑似A級アンプの多くは,出力トランジスターのバイアスを可変させてつなぎ目を少しずらして見かけ上つ
なぎ目の特性を直線にしたものがほとんどでした。このため,オンキョーの方式は少し変わっていたと言えま
す。オンキョーのリニアスイッチング方式は,スイッチング速度の速いトランジスターを使うことでスイッチング
歪みを解消し,クロスオーバー歪みは,バイアスを可変するのではなく,特殊な補正回路でバイアスを補正
して対処しようとする方式でした。従って基本的にはB級動作ですが,他社の疑似A級アンプ同様,歪みが
少なくなっていました。

M-506の内部

電源部は,巻線に工夫を凝らしたツイン・ワインド式大型トランスを2基搭載し,整流用のケミコンには,マルチ
タブ方式のローインピーダンス・ワイドレンジケミコンをプリント基板と直結させた低インダクタンス回路として使
用した左右独立型となっていました。各セクションへの給配電,アースライン等にはブス(母線)ラインを使用し
徹底したローインピーダンス化が図られていました。

さらに,オンキョーの優れたサーボ技術を生かし,温度変化によるパワー部の動作の不安定を防ぐために,オ
ートトラッキングバイアスと呼ぶ一種のサーボ回路を備えていました。出力段に3ポイント・センシングバイアス
回路を設け,プリドライバー部,ドライバー部,パワートランジスターの3カ所それぞれの温度差を検出し,フィー
ドバックしてバイアスをコントロールして動作の安定を図っていました。

保護回路には,モノシリックICを使用して安定性を向上させ,スピーカー端子に表れる直流リーク電圧,及びパ
ワー段の過電流を検出し,万一の場合リレー(銀接点・パラレル使用)を遮断して回路部品を守るようになってい
ました。スピーカー出力は2系統備えられ,切換はSP-1,-2専用の保護リレーを切り換えることでダンピングフ
ァクターの劣化を防いでいました。

大型のレベルメーターは,デザイン上のアクセントになっていましたが,ピークメーターとして,対数圧縮及びピー
クホールドを安定性の高いモノシリックICで行い,安定した動作を実現していました。また,オペアンプによる専
用のドライブ回路でドライブすることで高速応答性を実現していました。

以上のように,M-506は,セパレートアンプのエントリーモデルとしてP-306とグッドペアであるだけでなく,本
格的な内容を持った,癖のない音の使いやすいパワーアンプでした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。 
 


W・スーパーサーボとリニア・スイッチング。
まじり気のない音楽だけをパスさせる
高純度増幅器。
◎W・スーパーサーボ方式によるピュアトーン
◎低歪率リニア・スイッチング方式の採用
◎W・スーパーサーボの特性をフルに発揮させる
 大型電源部
◎温度差の影響を抑える
 オート・トラッキング・バイアス方式
◎音質を損なわず,安定動作を約束する保護回路
◎正確で見易い大型ピークメーターの採用
◎ヒヤリングで選んだ高純度パーツ類の使用
 
●主な定格●

■アンプ部■


実効出力 120W+120W(8Ω,20Hz〜20kHz)
160W+160W(4Ω,20Hz〜20kHz)
ダイナミックパワー 180W+180W(8Ω,1kH
全高調波歪率(T.H.D) 0.003%以下(実効出力時,20Hz〜20kHz)
0.003%以下(60W出力時,20Hz〜20kHz)
混変調歪率(SMPTE法) 0.003%以下(70Hz:7kHz=4:1)
パワーバンドウィズス 5Hz〜100kHz(IHF−3dB THD0.2%)
利得 26.3dB
周波数特性 1Hz〜100kHz(+0,−1.5dB)
S/N 120dB(IHF-Aネットワーク)
入力感度 1.5V
入力インピーダンス 47kΩ
スピーカー負荷インピーダンス 4〜16Ω
ダンピングファクター 180(8Ω,1kHz)
出力端子 SPEAKER SYSTEM-1
SPEAKER SYSTEM-2
HEADPHONES
トランジェントキラー動作時間 5sec/100msec(POWER ON/OFF) 

■メータ部■


レンジ切換 ×1(0dB=120W)/×0.1(0dB=12W)
指示範囲 −40dB〜+4dB
指示精度 0±1dB,−10±2dB,−20±3dB
応答速度 100μsec(−∞→0dB)
復帰速度 1sec(0dB→−20dB)

■その他■


使用半導体 2FET,47Tr,6IC,40Di
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 190W(電気用品取締法)
AC出力 600W MAX(POWERスイッチ非連動)
寸法 450W×174H×400Dmm
重量 18.5kg


M-506Rの写真
ONKYO M-506R
SERVO OPERATIONAL STEREO POWER AMPLIFIER
                                ¥170,000

1981年,M-506はM-506Rにモデルチェンジを受けました。基本的な部分は受け継がれ,パワーアップが
図られるとともに,デザイン的にも,メーター部に変更が加えられ,精悍なデザインとなっていました。

M-506Rの最大の改良点は,「スーパーサーボ・インテグラル」方式の搭載でした。これは,M-506のWスー
パーサーボをより強化したものでした。スピーカーのボイスコイルが振動することにより起電力が発生するオンキ
ョーが称した「マイクロフォン効果」による歪み,つまり反対チャンネルの音圧がスピーカーに影響を与え,発生し
た起電力が歪みの原因となる「時間差歪み」を抑えるものでした。
M-506では,電流増幅段のリニアリティをNFにより補正し,さらにNFで補正しきれない部分を超低域用の+側
サーボとアースライン用の−側サーボのWスーパーサーボで補正していました。M-506Rのスーパーサーボ・イ
ンテグラル方式では,出力段の出口から電流増幅段だけにリニアリティの補正回路による正・負帰還をかけて,
この段のリニアリティを大幅に向上させ,時間差歪みを抑え込んでいました。

M-506Rの内部

以上のように,M-506Rは,M-506に改良を加え,バランスのとれた音の使いやすいパワーアンプとしていま
した。そして,セパレートアンプのエントリーモデルとして高い評価を得ていました。当時,行きつけのオーディオ
店でもプリメインアンプの高級機の少し上をねらう人に安心して薦められる1台として位置づけられていたことを思
い出します。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


音像密度がきわだつ
スーパーサーボ・インテグラル方式,
先進の技術が,インテグラの歴史に
また華やかな一頁を加えました。
◎スーパーサーボ・インテグラル方式の採用
◎低歪率,高効率のリニアスイッチング方式
◎見やすく,正確な大型ピークメーター採用
◎高信頼性で安定動作を保証する保護回路
◎最高の性能をフルに発揮させる大型電源部
◎オートトラッキング・バイアス方式の採用
 
●主な定格●

■アンプ部■


実効出力 130W+130W(8Ω,20Hz〜20kHz)
170W+170W(4Ω,20Hz〜20kHz)
ダイナミックパワー 200W+200W(8Ω,1kH
全高調波歪率(T.H.D) 0.003%以下(実効出力時,20Hz〜20kHz)
0.002%以下(65W出力時,20Hz〜20kHz)
混変調歪率(SMPTE法) 0.003%以下(70Hz:7kHz=4:1)
パワーバンドウィズス 5Hz〜100kHz(IHF−3dB THD0.2%)
利得 30dB
周波数特性 1Hz〜100kHz(+0,−1.5dB)
S/N 120dB(IHF-Aネットワーク)
入力感度 1V
入力インピーダンス 47kΩ
スピーカー負荷インピーダンス 4〜16Ω
ダンピングファクター 180(8Ω,1kHz)
出力端子 SPEAKER SYSTEM-1
SPEAKER SYSTEM-2
HEADPHONES
トランジェントキラー動作時間 5sec/100msec(POWER ON/OFF) 

■メータ部■


レンジ切換 ×1(0dB=130W)/×0.1(0dB=13W)
指示範囲 −40dB〜+4dB
指示精度 0±1dB,−10±2dB,−20±3dB
応答速度 100μsec(−∞→0dB)
復帰速度 1sec(0dB→−20dB)

■その他■


使用半導体 8FET,49Tr,6IC,48Di
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 230W(電気用品取締法)
AC出力 600W MAX(POWERスイッチ非連動)
寸法 450W×174H×422Dmm
重量 18.5kg


M-506RSの写真
ONKYO M-506RS
SERVO OPERATIONAL STEREO POWER AMPLIFIER
                                ¥188,000

1983年,M-506RはさらにM-506RSにモデルチェンジを受けました。基本的な部分は受け継がれ,さらにパワー
アップが図られたほか,サイドウッドが付けられ,デザイン上の高級感も増していました。

最大の改良点は「スーパーターボ方式」の採用でした。これは,「デルタターボ回路」と「ターボフィルター回路」から
構成され,電源トランスに起因する変調雑音を取り除くことで,動的ダイナミックレンジの拡大,分解能の向上等,音
質を改善したものでした。

「デルタターボ回路」は,ダイオードをデルタ結線した形をしており,ダイオードのはたらきにより,電源トランスの両端
の電圧に対する電圧変動と信号回路のアースポイントへの変調雑音の流れ込みを抑えるはたらきをするものでした。
「ターボフィルター回路」は,電源トランスのところにCRによる特殊フィルターを入れたもので,このCRとトランスのイン
ダクタンスにより,等価回路のフィルターを構成し,変調雑音成分を抑えた充電エネルギーをケミコンに送り込むはた
らきをするとともに,外部のAC電源に乗っている種々の雑音等が入り込むのを防ぐはたらきをするものでした。

M-506RSの内部

M-506RSは,506シリーズの最終形として,スーパーサーボインテグラル方式,リニアスイッチング方式等,基本的
な技術を受け継ぎ,さらに技術の積み上げが行われた完成度の高いアンプとなっていました。音も偏りの少ないバラン
スのとれた完成度の高さが印象的でした。
 

 
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


数々のスーパーテクニックを盛り込んで,
また大きく完璧の域に近づきました。
新技術の数々が,
音の常識に挑戦します。
◎圧倒的なエネルギー感としなやかさ,
 新開発スーパーターボ方式の採用。
◎時間差歪を抑え,明確な音像定位を実現
 するスーパーサーボインテグラル方式。
◎A級増幅匹敵のクロスオーバー歪特性を
 実現したリニア・スイッチング方式採用。
◎最高の性能をフルに発揮させる
 2トランス,大型電源部を採用。
◎見易く,指示の正確な大型ピークメーター。
◎安定した動作を保証する
 オートトラッキング・バイアス方式。
◎高信頼性保護回路を使用。
 
●主な定格●

■アンプ部■


実効出力 140W+140W(8Ω,20Hz〜20kHz)
190W+190W(4Ω,20Hz〜20kHz)
全高調波歪率(T.H.D) 0.003%以下(実効出力時,20Hz〜20kHz)
0.0015以下(70W出力時,20Hz〜20kHz)
混変調歪率(SMPTE法) 0.003%以下(70Hz:7kHz=4:1)
パワーバンドウィズス 5Hz〜100kHz(IHF−3dB THD0.2%)
利得 30dB
周波数特性 1Hz〜100kHz(+0,−1.5dB)
S/N 120dB(IHF-Aネットワーク)
入力感度 1V
入力インピーダンス 47kΩ
スピーカー負荷インピーダンス 4〜16Ω
ダンピングファクター 180(8Ω,1kHz)
出力端子 SPEAKER SYSTEM-1
SPEAKER SYSTEM-2
HEADPHONES
トランジェントキラー動作時間 5sec/100msec(POWER ON/OFF) 

■メータ部■

レンジ切換 ×1(140W),×0.1(14W)
指示範囲 −40dB〜+4dB
指示精度 0±1dB,−10±2dB,−20±3dB
応答速度 100μsec(−∞→0dB)
復帰速度 1sec(0dB→−20dB)

■その他■


 
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 400W(電気用品取締法)
AC出力 500W MAX(POWERスイッチ非連動)
寸法 480W×174H×422Dmm
重量 20.5kg
※本ページに掲載したM-506,M-506R,M-506RSの写真,仕様表等は1979年
 11月,1981年9月,1983年9月のONKYOのカタログより抜粋したもので,
 オンキョー株式会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,
 引用等をすることは法律で禁じられていますのでご注意ください。
 
★メニューにもどる           
 
 

★セパレートアンプPART3にもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。                      


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp