M-505の写真
ONKYO  Integra M-505
ULTIMATE STEREOPHONIC POWER AMPLIFIER
                            ¥120,000


1976年にオンキョーが発売したパワーアンプ。当時いくつかのメーカーがアンプのセパレート化の
1つの形として,シンプルな機能のアンプを用途に合わせて組み合わせて使う「システムアンプ」を提
唱していました。オンキョーも「Integra SYSTEM AMP」として発売していました。M-505はその
シリーズ中のパワーアンプで,シンプルで精悍な外観も特徴でした。

パワー段は,特性の揃ったNPN-PNPトランジスタを使ったピュアコンプリメンタリー回路で,3段ダ
ーリントン接続によってドライブ段のカレントミラー回路の負担を軽減し,歪みを低減していました。
終段は,パワーに余裕のあるTO-3トランジスターをパラレルプッシュプルにして,リニアリティのよ
い領域で使用することで,0.0014%(1kHz,8Ω,−3dB(50W)出力)という低歪みを実現して
いました。
出力段をドライブするドライブ段では,位相反転に接合容量の小さい,fTの高い高耐圧トランジスター
を用いたカレントミラー回路で,低歪みで電源電圧変動の影響を受けにくい回路となっていました。
初段FET差動アンプは,温度特性のよい定電流回路のアクティブロードで,良好な同相除去比が
確保され,さらにカスケード接続されたトランジスターの低入力インピーダンスによって帰還容量ミラー
効果による高域特性の劣化も抑えていました。また,エミッタフォロアが次に配置することでインピー
ダンス変換が行われ,初段で,2MHzまでの高域周波数特性が実現していました。

また,初段のFETは,ローノイズ・モノシリック・デュアルFETで,1個のペレットの上に2個のFETを
作りだしたもので,温度特性やその他の特性が同一に近く,同一ペレット上であるため温度差もき
わめて少ないなど,ペア特性がきわめて優れていました。このため,差動素子のバラツキによる直
流ドリフトが起こりにくく,M-505は完全DCアンプ構成とされていました。
さらに,ハイパワーとDCアンプとしての安定性を保つために,アルミダイカスト製の大型のヒートシ
ンクがL・R独立で搭載され,温度特性の安定化が図られていました。

M-505の大きな特徴は,「D.L.C.直結給電方式」でした。コンストラクションや電源供給の面で,L・R
チャンネル,各回路ブロックのセパレーションをきちんと確保し,相互干渉を防いで動的歪みが抑
えられていました。「DLC(デュアル・ライン・コンストラクション)」は,その名の通り,全面的にL・Rチ
ャンネルの回路を独立化し,モノアンプ2チャンネル構成となっているものでした。
そして,電源部を含めた給配電ラインを徹底的にローインピーダンス化することで電源部と各回路
を直結した状態に近づけていました。

M-505の内部

各回路への給配電ラインには,超ローインピーダンスのマルチ・スプレイ・ブスラインが採用され,配
電用の極太電線(断面積5.5mm2)で電源部に接続されていました。各段のNFブロックでは,それ
ぞれのブランチを各ポイント毎に直接ブスホットラインに直結し,各段個別に給電する方法がとられ
ていました。アースラインも1mm厚のブスアースラインが使用され,給配電ラインのローインピーダン
ス化が徹底されていました。

電源部は,左右完全独立型で,大型ラミネートコアを使用した電源トランス2個と新開発の大容量の
オーディオ用ケミカルコンデンサー(18,000μF)4個により構成され,良好なレギュレーションを確
保し,電源部全体としてローインピーダンス化が図られていました。全体の蓄積エネルギーは148ジ
ュールにもなり,立ち上がりの鋭い音にもしっかり対応できる余裕ある電源部でした。

保護回路として,DCアンプとしての安全性を考慮して,出力の直流電流とパワートランジスターの過
電流を電子的に検出してスピーカーを切り離すスピーカー・リレーが装備されていました。DC検出部
は,左右独立となっており,左右のDC極性が違っている場合でも入力からの直流流入を防ぐために
動作するようになっていました。電源トランスには,L・Rそれぞれに高精度の温度スイッチと温度ヒュ
ーズが組み込まれ,過負荷や故障による異常な温度上昇を検知して電源を切り,スピーカー・リレー
をOFFにするようになっていました。

機能として,ローフィルターが装備され,後面パネルのスイッチによって低域のカットオフ周波数がDC
0.15Hz,10Hzと切り換えられるようになっており,DCアンプとしての使用,直流リークのあるプリア
ンプとの接続での使用,ディスク再生時のサブソニックフィルタとしての使用などができるようになって
いました。また,後面パネルには,L・R独立のレベルボリュームも装備されていました。

以上のように,M-505は,「Integra SYSTEM AMP」のパワーアンプとしてだけでなく,単体パワー
アンプとしても本格的な設計がなされた内容のものとなっていました。オンキョーらしく明るく力強い音
をもった実力派の1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



力強い重低音再生と,
豊かな表現力を
両立させたDCアンプ


◎D.L.C.直結給電方式
●マルチ・スプレイ・ブスライン
●新開発オーディオ用ケミカル・コンデンサ
●大型電源部採用のD.L.C.方式

◎完全DCアンプ採用
◎大型ダイカスト・ヒートシンク
◎万全を期した保護回路
◎2段切換ローフィルタ
◎左右独立レベル・ボリューム
◎回路の特徴

●ピュアコン3段ダーリントン・パラプッシュ出力回路
●カレントミラー採用のドライブ段
●カスケード接続の定電流ドライブ






●Integra M-505定格●

定格出力 105W+105W(20Hz〜20kHz両ch駆動8Ω)
160W+160W(20Hz〜20kHz両ch駆動4Ω)
ダイナミックパワー 160W+160W(8Ω,1kHZ)
全高調波歪率 0.05%以下(定格出力時,20Hz〜20kHz)
0.01%以下(50W出力時,20Hz〜20kHz)
0.01%以下(1W出力時,20Hz〜20kHz)
混変調歪率(SMPTE) 0.01%以下(定格出力時70Hz:7kHz=4:1)
パワーバンドウィズス 5Hz〜100kHz(IHF−3dB THD0.2%)
周波数特性 DC〜150kHz(+0,−1.5dB)
位相特性
+0,−30degree以内(DC〜100kHz)
S/N 110dB(IHF-Aネットワーク,入力シャント)
ダンピングファクター 100(8Ω)
負荷インピーダンス 4〜16Ω
入力インピーダンス 100kΩ
利得
25.5dB
定格入力電圧
1.5V
使用半導体
2FET,45Tr,31Di
電源
AC100V 50/60Hz
消費電力
170W(電気用品取締法)
430W(最大消費電力)
寸法
450W×165H×322Dmm
重量
17kg

※本ページに掲載したM-505の写真,仕様表等は1977年5月
 のONKYOのカタログより抜粋したもので,オンキョー株式会社
 に著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載
 引用等をすることは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 
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