M−5の写真
EXCLUSIVE M-5
MONAURAL POWER AMPLIFIER ¥430,000
パイオニアが1982年にエクスクルーシブブランドで発売した高級モノラルパワーアンプ。1台43万円ですから
ステレオ再生には86万円が必要な超高級機でした。それまでの同社の最高級パワーアンプM−4シリーズが
純A級動作による品位の高い音を特徴としていたのに対し,300WのハイパワーとA級動作の高音質を両立さ
せようとした意欲作だったことが印象的でした。                                     

M−5の最大の特徴は,出力トランジスターのコレクター電圧をコントロールすることでスイッチングを行わずに
動作させる,高効率A級動作のノンスイッチングアンプであることと,「Z1シリーズ」で初めて採用された「スー
パーリニアサーキット」によるノンNFBループ構成であることでした。                        
M−5は,ABクラス動作するノンスイッチングパワーアンプの出力に,純Aクラス動作のパワーアンプをシリー
ズに接続したもので,AクラスアンプのスムーズさとABクラスアンプの電源効率の良さを併せ持つアンプとし
て完成されていました。その結果,大出力アンプながら,冷却ファンを持たずに静粛な動作が可能になってい
ました。これら2つのアンプの回路動作はかなり複雑で,動作の確実さや安定度を厳しく要求するということで
したが,「スーパーリニアサーキット」によりNFBループを持たないことが,アンプの動作の安定性を高め,こ
れらの複雑な回路動作を可能にしたともいえるようです。この「スーパーリニアサーキット」は,トランジスター
の非直線性を逆モードの非直線性を持つトランジスターで打ち消そうとするもので,半導体素子の非直線性
が見事に対称性を持つことをうまく利用した方式でした。「Z1シリーズ」では,各増幅回路ごとに歪み補正を
行っていたのに対し,M−5では,出力段で発生する歪みの逆モードの歪みを電圧増幅段の「スーパーリニ
アサーキット」部で発生させ,トータルで歪みを打ち消すという,よりシンプルで確実な方法に発展していまし
た。                                                             

パーツやコンストラクションも高級機らしく贅沢なものでした。電源トランスは,大容量のトロイダルトランスを樹
脂ケースに封入し,炭化珪素を充填したものでしたが,これをゴムを介してシャーシに取り付けフローティングさ
せていました。これらにより,トランスそのものの低リーケージフラックスを樹脂ケースで防止し,炭化珪素の粉
末でフラックスを吸収させるという効果が得られ,トランスそのものの振動の影響も抑え込む徹底した対策とな
っていました。                                                        

放熱器は「サイレントラジエーター」と称して,振動による音への悪影響を抑えていました。そのために,フィン
の高さをランダムにした放熱器とし,さらに,フィンを厚くすることで強度を増し,無共振に近い構造としていま
した。写真に見える放熱器のうち電源部に近い大きい方は何と電源部用の放熱器で,その右に見える小さ
いフィンがパワートランジスタ−用の放熱器でした。巨大な電源部が発する熱量は相当なものであったよう
です。                                                            

主要部分の配線にはハンダを用いず全て圧着で行い,回路基板には純度99.99%の無酸素銅を何と厚
さ280μで用いたガラスエポキシ基板を用いて伝送ロスを低く抑えていました。パーツの面でも,フィルム
コンデンサーには,純オーディオ用に専用のフィルムコンデンサーを開発して搭載し,電源コードには,無
酸素銅を線材に使用した極太の4芯電源コードを採用していました。スピーカーターミナルは,極太ケーブ
ルも接続できる大型のターミナルとし,金メッキ加工の接触面を持っていました。プロテクションヒューズも
音質対策のため,口金に純銅を用い,導体抵抗を1/3に低減した特別製のオーディオ用ヒューズとしてい
ました。                                                         

このM−5が発売されたころ,知り合いの販売店で試聴したことを思い出します。いっしょに比較試聴した
アキュフェーズのかっちりした音とはまた違った,フワーッと広がりのある開放的な音がすごく印象に残っ
ています。このアンプも今でもお使いの方がいるのではないでしょうか。その音が今でも心に残っている1
台です。                                                         
 
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介しましょう。
 


 

陶酔の2文字が蓋をあけた。



 

◎広大なダイナミックレンジを再現する,
  300Wの大出力。
◎音の素顔を生み出すスーパーリニア
  サーキット搭載,無帰還アンプ。
◎鮮やかな表現力をみせるA級動作。
◎厳選され磨きあげられた
  部品・コンストラクションの数々。
  ●大容量トロイダルトランス
  ●サイレントラジエーター 
  ●オーディオ用フィルムコンデンサー
  ●オーディオ用4芯電源コード
  ●大型スピーカーターミナル
  ●ガラスエポキシ基板

 
 

●Specification●


実効出力 300W(20Hz〜20kHz,8Ω,THD0.05%)
入力感度 1V
入力インピーダンス 50kΩ
パワー表示 ピークレベルメーター
外形寸法 468W×203H×410Dmm
重量 25.6kg
消費電力 250W(電気用品取締法による)
※本ページに掲載したM−5の写真,仕様表等は1982年10月のEXCLUSIVEのカタログ
 より抜粋したもので,パイオニア株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等
 を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。      
  
  
★メニューにもどる          
  
 
★セパレートアンプPART2にもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。                      


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp