![]()
Victor M-3030
STEREO POWER AMPLIFIER ¥105,0001977年にビクターが発売したパワーアンプ。薄型プリアンプP-3030とのペアを想定されたパワーアンプ
ですが,薄型のP-3030とはまた違った,ヒートシンク,トランスむき出しのハードな外観が特徴的でした。
その外観には,電源部にこだわったM-3030の設計思想がよく表れていました。M-3030の最大の特徴は,A級B級独立電源+L・R独立電源にありました。1975年にトリオ(現ケンウッ
ド)が左右独立電源搭載のKA-7300の発売で巻き起こした「独立電源ブーム」の中で各社左右独立電源
のアンプを発売した中で,1976年にビクターはA級B級独立電源のプリメインアンプJA-S41を発売し高い
評価を得ました。M-3030にも,そのA級B級独立電源が採用されていました。
このA級B級独立電源は,B級動作を行う電力増幅段(出力段)と,それより前段の電圧増幅を行うA級増幅
段の電源をトランスから独立させ,さらにA級段の電源を定電圧化したもので,前後独立電源ともいうべきも
のでした。出力段の電源電圧の変動がそれより前段に影響をもたらして歪みを増加させることを防ぐ技術で
した。
さらに,M-3030では,B級増幅段(出力段)の電源をトランスから左右独立させたL・R独立電源として,A
級B級独立電源とプラスして,電源部による各増幅段の干渉を徹底して抑える設計になっていました。
左右独立電源構成を生かすためにアンプ自体の構造も,回路を明確に左右分割化したツイン・モノラル構成
として,基板パターンやアースラインその他によるクロストークを抑えていました。
これら強力な電源部に支えられ,電源インピーダンスは低く抑えられ,すぐれた過渡特性を実現し,低歪率で
の安定したハイパワー動作を可能にしていました。回路構成としては,信号経路内のコンデンサーの影響を少なくするために,入力部のカップリングコンデンサ
ーを取り去ったICL(インプット・コンデンサー・レス)の直結回路を採用し,ペアを想定されたP-3030との組
み合わせでは,全段ICL構成を実現していました。以上のように,M-3030は,ペアとなるP-3030とともに,リーズナブルな価格で充実した内容を実現した
パワーアンプでした。特にJA-S41以来のA級B級独立電源にL・R独立電源を加えた強力な電源部に支え
られ,安定感のある音を実現していました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎A級・B級独立電源からAB・LR独立電源へ。
◎ツイン・モノラル構成。
◎ダイレクト・カップリング(ICL)入力回路。
◎低歪率0.005%以下(1kHz),
ハイパワー100W+100Wと高効率電源。
◎機能部品と外観部品の融合,
パワフルなデザイン。
回路方式 | 信号回路=ダイレクト・カップリング(ICL)カスコード・ダブル差動同相帰還入力
パラレル・プッシュプルOCL出力 電源回路=A級・B級(左右専用)独立電源 |
実効出力 | 20Hz〜20kHz=100W+100W(8Ω),130W+130W(4Ω) |
高調波歪率
(20Hz〜20kHz,8Ω両チャンネル駆動) |
実効出力時=0.02%以下,0.005%(1kHz)以下
50W出力時=0.01%以下 1W出力時=0.01%以下 |
混変調歪率
(50Hz:7kHz=4:1,8Ω両チャンネル駆動) |
実効出力時=0.02%以下
50W出力時=0.01%以下 1W出力時=0.01%以下 |
出力帯域幅 | IHF両チャンネル駆動=5Hz〜55kHz(THD0.02%) |
周波数特性(1W出力時) | DIRECT入力=5Hz〜100kHz+0,−1dB
SUBSONIC入力=18Hz〜100kHz+0,−3dB |
入力感度/インピーダンス | レベルコントロールMAX時=0.9V/50kΩ |
SN比 | IHF-Aネットワーク,入力ショート=110dB
RMS=103dB |
出力端子 | SPEAKER=4Ω〜16Ω |
電源電圧 | 100V 50〜60Hz |
消費電力 | 243W(電気用品取締法基準)
550W(4Ω定格出力時) |
電源コンセント | 電源スイッチと非連動1個 |
寸法 | (W)420×(H)166.5×(D)300mm |
重量 | 19.2kg |
★メニューにもどる
現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。