M-25の写真
PIONEER  M-25
STEREO POWER AMPLIFIER ¥200,000

1977年にパイオニアが発売したパワーアンプ。前年に発売された「20シリーズ」のパワーアンプ
M-22が純A級動作であったのに対し,「Magni- Wide Power Range」 を標榜して,DC化,
AB級動作で,高出力,広帯域,低歪みを追求した1台でした。

M-25は,3Wまでをノッチング歪みやクロスオーバー歪みが根本的に発生しないA級動作でカバー
し,それ以上の出力では連続的にB級動作に移行して最大120W+120W(5〜30,000Hz・8Ω
歪み率0.01%以下)という大出力を実現していました。このため,一般的な使用状態での音楽出
力レベルの90%以上はA級動作でカバーされ,ピーク時にはB級動作が受け持つことになっていま
した。

B級動作時のクオリティは,パワートランジスターとして新開発のRET(Ring Emitter  Transistor)
を採用した広帯域設計により確保されていました。RETは,高周波特性に優れた小電力用トランジス
ターを数百個並列合成したもので小電力用トランジスターの高速スイッチング特性を損なうことなく破
壊強度を上げて大電力化を図ったものでした。構造的には,エピタキシャル・プレーナー型トランジス
ターで,ベース電極の周囲にドーナツ状のリングを形作ってエミッターが配列されているため,リング
エミッター・トランジスターと呼ばれ,通常のパワートランジスターに比べ,スイッチング特性が極めて
優れ,信号の応答性が良く,キャリア蓄積(スイッチング歪み)が少ないという特性を持っており,大出
力素子ながら優れた高域特性を持っていました。

RET

アンプ回路全体としては,DCアンプ構成が採用されていました。NFB回路にコンデンサーを持たず
超低域まで優れた過渡特性や位相特性が実現されていました。
また,優れた低域特性を確保するための電源部も充実が図られていました。電源トランスはL・R独
立の2トランス構成と,22,000μF×4の大容量コンデンサーによる大型の電源部が構成され,
5Hzの超低域でも,0.01%以下の低歪みでフルパワー再生が可能となっていました。

M-25の上面
M-25の底部からの内部

パーツ,コンストラクションの面でも,しっかりと配慮がなされていました。
アースラインからホットラインまでの配線は超低インピーダンス設計とされていました。電源コンデ
ンサーからスピーカー端子までのアース側に,幅12mm厚さ1mmの純銅板を使用して電力ロスを
低減し,大電流が流れる整流器からスピーカー端子までのホットラインには,抵抗値が従来の太線
の1/4となる極太14番線(直径2.03mm撚り線)が使用されていました。また,各回路基板の銅
箔は厚さ70μmと従来の倍の厚さになっていました。さらに,並列になる2個のパワートランジスタ
のコレクターを幅12mm,厚さ1.2mmの純銅板ショートバーで接続され,低インピーダンス化が図
られていました。
電源トランス,保護回路のリレーをはじめ,L・R独立,左右対称形の設計が徹底され,配線の引き
回しも配慮がなされ,優れたセパレーション特性が実現されていました。
スピーカー端子や入力ピンジャックをはじめ,基板上の端子類まで金メッキが施され,接触抵抗の
増加が抑えられていました。保護回路のパワーリレーも,小電流用と大電流用ふたつの接点を持
つ親子リレーが採用され,接点の劣化を抑えていました。

以上のように,M-25は,パーツ,コンストラクションなどオーソドックスに物量と技術が投入された
実力機で,パイオニアらしい明るく癖のない音を持ち,つなぐプリアンプやスピーカーへの対応性が
広い,使いやすいパワーアンプとなっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹 介します。



”Magni Wide Power Range”
”Class AB”
パワーアンプ概念を変えます。
超広帯域 低歪率
 フルパワー再生・AB級動作。


◎5Hz〜30kHzの超広帯域で
 高調波ひずみ0.01%,
 出力120W+120Wを保証。
 忠実な音楽再生への指向です。
◎超高域までの低ひずみハイパ
 ワーを求めて,新開発パワー
 トランジスターRETを採用。
◎DCアンプ構成と大型電
 源部の搭載で,超低域も
 低ひずみハイパワー設計。
◎音楽のダイナミックレンジを大切に
 A級からB級へ,B級からA級へと
 自然に移行するAB級動作。
◎アースラインからホットラインまで,
 超低インピーダンス設計。
 微少ひずみを排除しています。
◎105dB(1kHz)の高セパレー
 ションを実現,左右チャンネル
 独立コンストラクション。
◎すぐれた特性を長期にわたり
 安定にたもつ,金メッキ端子や
 親子接点リレーの採用。




●M-25の仕様●

回路方式 初段差動カレントミラー負荷3段ダーリントン,
パラレルPP,純コンプリメンタリーOCL
(AB級動作,DCアンプ構成)
実効出力
(両チャンネル駆動)
120W+120W(5Hz〜30kHz,THD0.01%,8Ω)
120W+120W(5Hz〜80kHz,THD0.05%,8Ω)
120W+120W(5Hz〜20kHz,THD0.02%,4Ω)
高調波歪率
(5Hz〜30kHz,8Ω)
実効出力時 :0.01%
60W出力時:0.01%
1W出力時 :0.007%
混変調歪率
(50Hz:7kHz=4:1,8Ω)
実効出力時 :0.006%
60W出力時:0.005%
1W出力時 :0.005%
出力帯域幅
(IHF,両チャンネル駆動)
5Hz〜45kHz(歪率0.01%)
5Hz〜100kHz(歪率0.05%)
周波数特性
(1W出力時)
5Hz〜200kHz+0,−1dB
入力端子
(感度/入力インピーダンス)
INPUT:1V/50kΩ
出力端子 SPEAKER:4〜16Ω
ダンピングファクター
(20Hz〜20kHz,8Ω)
100
SN比
(IHF-Aネットワーク,ショートサーキット)
120dB
チャンネルセパレーション
1kHz:105dB
100kHz:70dB
使用半導体 トランジスタ55,ダイオード他53
電源電圧 100V 50/60Hz
消費電力
(電気用品取締法)
280W
外形寸法 420W×153H×370Dmm
重量 22.5kg


※ 本ページに掲載したM-25の写真,仕様表等は1977年4月の
 PIONEERのカタログより抜粋したものでパイオニア株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載
 ・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

  
 
 
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