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TRIO L-07C
STEREO CONTROL AMPLIFIER ¥100,0001977年にトリオ(現ケンウッド)が発売したコントロールアンプ。測定器的なシンプルで機能的な外観に
信号の伝送特性を高めることをめざす設計が徹底された1台で,当時,リファレンスとしてよく用いられて
いた高い評価を受けていたコントロールアンプでした。プレーヤー等の機器から入力された信号をできるだけ最短距離でストレートに伝送しようとする設計が特
徴で,モノラルパワーアンプL-07Mとのコンビネーションで,スピーカーとの関係も見直そうとしたもので
した。モノラルパワーアンプL-07Mをスピーカーの側に設置してスピーカーコードを短縮化してスピーカー
コードによる音質劣化を抑え,コントロールアンプL-07Cとの間を長いケーブルでつなぐというシステムを
想定していました。このような,スピーカーコードの音質への影響にこだわった設計は,後の「Σドライブ」
との連続性も感じられます。初段は,カスコード差動増幅,終段はコンプリメンタリープッシュプルで,100%NFBをかけた増幅回路の
バッファーアンプをトーンコントロールアンプの後に設置した構成になっていました。
出力インピーダンスを10Ω以下ときわめて低く設定し,180pF/mのシールド線を20m接続しても,周波
数特性は500kHzで0.1dBしか落ちない特性を確保し,高域でのロスを抑えていました。さらにトーンコン
トロールアンプとバッファーアンプの中間にアッテネーターを入れ,これをラダー型としてインピーダンスを一
定として回路の動作条件を一定にし,歪みを極小に抑えていました。残留雑音は3μV以下で,ゲイン最
小の状態でパワーアンプL-07Mを接続してもトータルでの雑音の増加はほぼゼロに抑えられていました。イコライザーアンプは,MMカートリッジ用,MCカートリッジ用それぞれ専用に設けられ,切換スイッチを通
らずにプレーヤーシステムの出力をダイレクトにつなげるようになっていました。さらに,カートリッジ負荷の
切換回路は,効果に比べて伝送系の性能劣化の恐れが大きいと考えられて省略され,インピーダンスは
カートリッジの動作条件に近く信号レベルが下がらない値として,MC用600Ω,MM用50kΩに固定して
設定されていました。MMカートリッジ用イコライザーアンプは,初段にFETを使ったカレントミラーつきカスコード差動アンプとして
ダイナミックマージンを大きくとり,増幅度を安定させ,定電流負荷ダーリントンドライブ回路に信号を供給,
終段はコンプリメンタリープッシュプルというパワーアンプ並の構成になっていました。信号源インピーダン
スに左右されないFETの特性により,カートリッジのインピーダンスによらず,SN比83dB(2mV時),入
力換算雑音0.14μV,−137dBVの低雑音,低歪みの特性を実現していました。MCカートリッジ用には,ワンNFBループ内をハイゲインにしたMC専用のイコライザーアンプがPHONO2
ポジションに搭載されていました。ゲインはMMに比べて20dBアップ,感度0.2mVに設定されていました。
基本回路はMM用とほぼ同じで,FET差動2段として増幅度を安定化していました。さらに,MC用として
は初のICL(インプット・コンデンサー・レス)方式として入力コンデンサを介さずに増幅されるようになってい
ました。特性として,入力換算雑音0.1μV,−140dBVを実現していました。イコライザーアンプの後段には,イコライザからの出力をパワーアンプをドライブできるレベルまで増幅する
20dBのフラットブーストアンプが設置されていました。L-07Cでは,このアンプのNF回路を利用してトーン
コントロール回路を形成していました。トーンコントロールは,スイッチにより抵抗とコンデンサーを切り換え
る方式をとり,ワンステップが正確に1.5dBずつ変化するように設定され,トータル±7.5dBの変化量が
得られるようになっていました。また,フラットポジションにすると,コンデンサーなどのトーン素子が完全に
回路からはずれ,余分な増幅素子やスイッチが信号経路に含まれず音質を損なわないようになっていまし
た。L-07Cには音量調節のための通常のボリューム(マスターボリューム)以外にゲインアッテネーターが搭
載されていました。このアッテネーターにより,トータルゲインを設定すれば,音量コントロールが回転範囲
の中点付近にあって操作しやすい,小音量で聴く時の残留ノイズが少なく抑えられる,ゲインコントロール
のないパワーアンプと接続しても使いやすいなどの特長がありました。
このゲインアッテネーターは,変化特性は無段階で,−30dBまで直線変化し,連動誤差は±0.3dB以内
の高精度なものでした。また,このアッテネーターはラダー型で,通常のボリュームと異なり,インピーダン
スが一定しているため回路の交流動作が安定し,ツマミの位置によらず低歪みを実現していました。
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内部構成は,増幅回路を1枚のプリント基板上に構成され,プリント基板の中心線で左右のチャンネル回路
を分割,入力端子から出力端子まで信号の流れに沿って配置されていました。そして,この中心線の位置に
同じく信号の流れに従ってスイッチやボリュームなどを配置し,しかもこれらのスイッチやボリューム類は内部
でシールドする構造となっていました。これらの内部構成により,回路間やその部品どうし,また配線や回路
ループなどによって生じるクロストークが徹底して抑えられていました。以上のように,L-07Cは,信号の伝送特性を最大限に高めようとした設計がなされ,抜けが良くストレートな
音はトリオらしいもので,人気モデルとなりました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎ローインピーダンス出力回路
◎MMカートリッジ用イコライザーアンプ
◎MCカートリッジ用イコライザーアンプ
◎トーンコントロール回路
◎マスターボリュームとゲインアッテネーター
◎信号の流れに従った平面分割構造
入力感度/入力インピーダンス/SN比 | PHONO1(MMカートリッジ用):2.0mV/50kΩ/83dB
PHONO2(MCカートリッジ用):0.2mV/600Ω/65dB TUNER :140mV/50kΩ/110dB AUX :140mV/50kΩ/110dB TAPE PLAY :140mV/50kΩ/110dB |
出力レベル/出力インピーダンス | TAPE REC:140mV/100Ω
OUT PUT :定格出力1V/10Ω以下 定格負荷 50kΩ |
許容最大入力(1kHz) | PHONO1:350mV
PHONO2:35mV |
周波数特性 | TUNER・AUX・TAPE PLAY:20Hz〜50kHz +0dB,−0.1dB
10Hz〜200kHz +0dB,−0.5dB 3Hz〜500kHz +0dB,−2dB PHONO1 RIAA偏差: 20Hz〜20kHz ±0.2dB PHONO2 RIAA偏差: 50Hz〜20kHz ±0.2dB 20Hz −0.8dB |
全高調波歪率 | TUNER・AUX・TAPE PLAY:20Hz〜20kHz出力1V時 0.003%
20Hz〜20kHz出力7V時 0.005% 20Hz〜20kHz出力10V時 0.01% PHONO1:VR−20dBGAIN−10dB出力1V時20Hz〜20kHz 0.003% PHONO2:VR−20dBGAIN−10dB出力1V時20Hz〜20kHz 0.009% |
トーンコントロール | BASS 100Hz±7.5dB
TREBLE 10kHz±7.5dB |
サブソニックフィルター | 18Hz 12dB/oct |
チャンネルセパレーション | 100dB(AUX ショートサーキット) |
電源電圧 電源周波数 | 100V 50Hz/60Hz |
定格消費電力(電気用品取締法に基づく表示) | 50W |
電源コンセント | 電源スイッチ連動 3コ/300W
電源スイッチ非連動 1コ/100W |
寸法 | 480W×100H×332Dmm |
重量 | 7.0kg |
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TRIO L-07CU
HIHG SPEED STEREO CONTROL AMPLIFIER
¥160,0001978年,L-07Cの後継モデルL-07CUが発売されました。デザイン的にはより精悍で高級感のあるもの
となりました。「ハイスピード・コントロールアンプ」と称され,より伝送系の特性の向上がめざされていました。基本的な回路構成等はL-07Cと同一で,パワーアンプまでのオーディオケーブルを延長できる10Ωの超低
インピーダンスの出力回路,MM・MC専用のイコライザー回路が搭載されていました。
MM用イコライザー回路は,初段に低雑音のFETを用いた高ゲインのカレントミラーつき差動アンプ。2段目は
初段のゲインを落とさないためエミッタフォロアーを設け,3段目はカレントミラーつき差動アンプ。終段はピュア
コンプリメンタリーSEPPという構成になっていました。
MC用イコライザー回路は,ワンNFBループ内をハイゲインにしたMC専用のイコライザーアンプがPHONO2ポ
ジションに搭載されていました。回路的にはFET入力差動2段として入力換算雑音0.06μV,−144dBVを
実現していました。トーンコントロール回路,内部の左右独立の平面構成等もL-07Cから引き継がれ,内部の相互干渉が徹底し
て抑えられていました。プリント基板には,温度や湿度によらず安定した特性をもつガラスエポキシ基板が採用
されていました。
ボリュームコントロールは,L-07Cにあった左右独立のゲインアッテネーターが省かれ,一般的なボリュームコ
ントロールとバランスボリュームによる構成となっていました。マスターボリュームとバランスボリュームには,厚
みが均一で平滑性が0.2μ以下ときわめて滑らかな抵抗体であるコンダクティブプラスティックを採用した新しい
抵抗体が使用された新型ボリュームが搭載され,低内部雑音,高信頼性を確保していました。
その他パーツの面では,イコライザーアンプにポリプロピレン系の高性能フィルムコンデンサーが使用され,安定
した特性と低歪みを実現していました。また,位相補正などの小容量コンデンサーには,誘導体には硬度のある
スチロールフィルムを使用し,電極箔を何層にもサンドイッチしてインダクタンス成分を極小にした新開発の積層
スチロールコンデンサーを使用していました。以上のように,L-07CUは,L-07Cの内容を引き継ぎながらさらに改良が加えられ,ハイスピードを標榜する
だけあってクリアで抜けの良い音をもった実力機でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
まず,ハイスピード化する。
回路の純粋さがあらわれた!
●トランジェントレスポンスの大幅な改善
●ライズタイム0.1μs
●1Hz〜3.5MHz +0dB,−3dBのワイドレンジ
●積層スチロールコンデンサー
◎ローインピーダンス出力回路
◎SN比90dBMMカートリッジ用イコライザーアンプ
◎MCカートリッジ用イコライザーアンプ
◎トーンコントロール回路
◎左右独立した増幅回路
◎ガラスエポキシ・プリント基板
◎新抵抗体コンダクティブプラスティックを使用した
マスターボリュームとバランスボリューム
◎高性能フィルムコンデンサー
入力感度/入力インピーダンス/SN比 | PHONO1(MMカートリッジ用):2.5mV/50kΩ/90dB
PHONO2(MCカートリッジ用):0.2mV/600Ω/70dB TUNER :140mV/25kΩ/108dB AUX :140mV/25kΩ/108dB TAPE PLAY :140mV/25kΩ/108dB |
出力レベル/出力インピーダンス | TAPE REC:140mV/100Ω
OUT PUT :定格出力1V/10Ω以下 定格負荷 50kΩ |
許容最大入力(1kHz) | PHONO1:450mV
PHONO2:40mV |
周波数特性 | TUNER・AUX・TAPE PLAY:1Hz〜3.5MHz +0dB,−3dB
PHONO1(MM) RIAA偏差: 20Hz〜20kHz ±0.2dB PHONO2(MC) RIAA偏差: 50Hz〜20kHz ±0.2dB |
全高調波歪率 | TUNER・AUX・TAPE PLAY:20Hz〜20kHz出力1V時 0.004%
20Hz〜20kHz出力3V時 0.003% 20Hz〜20kHz出力10V時 0.006% PHONO1:VR−30dB出力3V 20Hz〜20kHz 0.004% PHONO2:VR−30dB出力3V 20Hz〜20kHz 0.008% |
トーンコントロール | BASS 100Hz±7.5dB
TREBLE 10kHz±7.5dB |
サブソニックフィルター | 18Hz 12dB/oct |
チャンネルセパレーション | 100dB(AUX ショートサーキット) |
トランジェントレスポンス ライズタイム | VR MAX:0.1μS(±0.1V/±1V/±2.5V)
VR−6dB:0.2μS(±0.1V/±1V/±2.5V) |
電源電圧 電源周波数 | 100V 50Hz/60Hz |
定格消費電力(電気用品取締法に基づく表示) | 50W |
電源コンセント | 電源スイッチ連動 3コ/300W
電源スイッチ非連動 1コ/100W |
寸法 | 480W×100H×340Dmm |
重量 | 8.2kg |
※本ページに掲載したL−07C,L-07CUの写真,仕様表等は1977年1月,1979年
2月のTRIO(KENWOOD)のカタログより抜粋したもので,ケンウッド株式会社に著作
権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じ
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