L−01Tの写真
KENWOOD L−01T
非磁性体・2電源FMチューナー ¥160,000
FMチューナーでは絶大な技術力を誇り,入門機から高級機まで幅広いラインナップを持っていた
トリオ株式会社(現ケンウッド)が,1979年に発売した高級チューナーです。この年,高級機であ
るLシリーズのみケンウッドブランドとして発売されるようになりました。プリメインアンプのL−01A
とともに,そのケンウッドブランドの第一段の製品でした。前年に発売された最高級機KT−9900
から多くの技術を受け継いだ高性能と,その未来的なデザインが目を引きました。         

このチューナーの最大の特徴は,非磁性体構造にありました。先にアンプで言われるようになった
信号系の近くに磁性体が存在することにより発生するマグネティックディストーションを排除するため
に,サブパネルと背面パネルには新強化ナイロン,サイドフレームにはアルミケース,底板はウッド
フロントパネルにはアクリルといったように磁性体である鉄を構造体から徹底して除いた作りになっ
ていました。
                          
2つ目の特徴は,2電源構成となっていたことです。局部発振回路の電源を検波部やMPX回路の
電源と分離した独立電源オシレーターとして,相互の干渉を抑えていました。局部発振回路用電源
は20VA,それ以外のRF増幅回路,検波回路,MPX回路用電源に24VAというチューナーのトラ
ンスとしてはけた外れの大容量のトランスを採用して2電源を構成していました。チューナーの電源
部としては異例に巨大なものでした。

3つ目の特徴は,ダイレクトコンバージョンシステムでした。これは,入力信号をRF増幅段を通さずに
直接ミキサー段へ入力するもので,十分な入力があるときや大入力の隣接局があるときには優れた
ひずみ特性と2信号特性を実現するものでした。放送局が遠く入力信号が弱いときには,スイッチで
RF増幅段を通るように切り換えることもでき,周波数直線高精度7連バリコンやRF段へのMOS型
FETの採用と相まって優れた受信性能を実現していました。

パルス検波方式,サンプリングホールドMPXなどの技術はKT−9900から受け継ぎ,さらに磨き上
げられ,高性能化されていました。(詳しくはKT−9900のページを参照)ケンウッドチューナの 最高
峰L−02Tへと続くモデルで,その未来的なデザインと優れた性能は名機の一つに数えてもおかしく
ないと思います。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

 


FMは音場までも再現するように
なった,非磁性体チューナー。  
L−01T
 

 
◎非磁性体チューナーL−01T
◎電源部を介した音質の劣化を許さない
  独立電源オシレーター
◎IMや大入力特性にすぐれた
  ダイレクトコンバージョンシステム
◎受信特性にすぐれたRFノーマルポジション
◎FM復調を解決したパルスカウント検波
◎SN比を大幅に改善するダブルコンバート方式
◎新感覚のチューニングシステム
  シンクロタッチチューニング
◎クリーンサブキャリアシステムと
  パイロットキャンセラー
◎低出力インピーダンス
◎強力で安定した電源部
               
              
 

●主な規格●
 

●FM部●

受信周波数範囲 76MHz〜90MHz
アンテナインピーダンス(A,B2系統) 75Ω不平衡
感度 NORMAL(75Ω) 
    DIRECT(75Ω)
10.3dBf(新IHF) 0.9μV(IHF) 
20.7dBf(新IHF)   3μV(IHF)
SN比50dB感度  
NORMAL(MONO) 
NORMAL(STEREO) 
DIRECT(MONO) 
DIRECT(STEREO)
15.8dBf(新IHF) 1.7μV(IHF) 
37.2dBf(新IHF) 20μV(IHF) 
26.7dBf(新IHF)  6μV(IHF) 
48.1dBf(新IHF) 70μV(IHF)
高調波ひずみ率 
   
    
         
MONO    100Hz       0.02%(WIDE) 0.04%(NARROW) 
        1kHz        0.02%(WIDE) 0.15%(NARROW) 
        6kHz        0.04%(WIDE)  0.2%(NARROW) 
        15kHz       0.04%(WIDE) 0.05%(NARROW) 
        50Hz〜10kHz 0.04%(WIDE)   0.3%(NARROW) 
STEREO  100Hz      0.03%(WIDE)   0.3%(NARROW) 
        1kHz       0.03%(WIDE)   0.2%(NARROW) 
        6kHz       0.05%(WIDE)   0.3%(NARROW) 
        15kHz      0.18%(WIDE)   1.3%(NARROW) 
        50Hz〜10kHz 0.08%(WIDE)  0.4%(NARROW)
SN比(100%変調)   86dB(MONO) 80dB(STEREO)
キャプチャーレシオ 0.9dB(WIDE) 2.5dB(NARROW)
選択度(IHF) NARROW 65dB(±300kHz) WIDE 45dB
ステレオセパレーション 
  
WIDE     1kHz         60dB 
         100Hz〜10kHz   48dB 
         15kHz        45dB 
NARROW  1kHz         47dB 
         100Hz〜10kHz   35dB
周波数特性 15Hz〜15kHz  +0.2dB −0.5dB
イメージ妨害比    120dB
IF妨害比       120dB
スプリアス妨害比  120dB
AM抑圧比 65dB
サブキャリア抑圧比  70dB
出力レベルおよび出力インピーダンス FM 1kHz 100%変調 VARIABLE   0〜1.5V/150Ω 
                FIXED        0.75V/150Ω
マルチパス出力 垂直出力   0.1V  1kΩ 
水平出力   0.3V 10kΩ

●電源部その他●

電源電圧・電源周波数 AC100V  50Hz/60Hz
定格消費電力(電気用品取締法に基づく表示) 50W
最大外形寸法 440(W)×136(H)×452(D)mm
重量 9.1kg
※本ページに掲載したL−01Tの写真,仕様表等は1980年9月のTRIO(KENWOOD)
 のカタログより抜粋したもので,ケンウッド株式会社に著作権があります。したがって,こ
 れらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意くださ
 い。   
 

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