JT-V20の写真
Victor JT-V20
SYNTHESIZED FM STEREO TUNER ¥160,000

1974年にビクターが発売したシンセサイザー方式のチューナー。国産シンセサイザーチュー
ナーの最も初期の製品で,オーレックス(東芝)のST-910と並んで国産初のシンセサイザー
チューナーとして話題になった製品でした。

JT-V20の最大の特徴は,上記のように同調機構に純電子式のシンセサイザー方式を取り入
れたことでした。従来のチューナーがバリコンとコイルの共振回路で必要とする周波数を取り出
のに対して,基準発振器からいろいろな周波数を合成しながら必要な周波数を取り出すため,
基準発振器が安定であるかぎりそれまでのチューナーで問題になっていたドリフト(同調ズレ)が
生じることがなく,機械的な可動部がないことから長期の信頼性も優れていました。
シンセサイザー回路の基準発振器には安定度のきわめて高い水晶発振器が搭載され,バリコン
の代わりに電圧を変えると静電容量が変わるダイオードであるバリキャップを信号選択回路に
搭載し,高安定度かつ純電子的に同調をとるようになっていました。
また,同調の中心に周波数がロックされる独自のオートストップ方式により,絶対的な安定性が
確保されていました。

シンセサイザー方式

周波数表示は,シンセサイザー方式ならではのLEDによる赤色のデジタル表示が搭載され,正確に
100kHzおきの周波数が表示されるようになっていました。また,従来の横行ダイヤルに慣れたユー
ザーのために,28個のLEDを横に並べて同調位置を表示する受信チャンネルインジケーターが搭載
されていたのは過渡期を示しているようで面白い部分です。(ラックスの5T50にもよく似た表示装置が
見られました。)信号強度も5段階でLEDで表示されるようになっていました。

シンセサイザー回路と直結されたフロントエンドには,相互変調,混変調に強く,しかも高感度なデュア
ルゲートMOS型FETを採用し,安定した動作を実現していました。
IF回路は,新開発のデュアル4レゾネーター型セラミック・フィルターと,4ポール・リニアフェイズ・フィル
ターを併用した構成で,優れた伝送特性と選択度を両立させていました。
MPX段には,PLL・ICを使用し,コイルを使用した回路がなく,温度変化や経時変化に強く,全周波数
帯域にわたって高いセパレーションと安定した動作を実現していました。

JT-V20の内部

パネル面は電源スイッチ以外は,すべてタッチスイッチのみで,電子的に同調するシンセサイザー方式
らしさを感じさせるものとなっていました。また,この時期に既にシンセサイザー方式だからこその小型
化がなされ,ペアを想定されたJA-S20と並べて設置することも考えた幅の狭い筐体となっていました。
選局操作は,UPあるいはDOWNスイッチに触れるだけで自動的にスキャンされて,放送電波のある位
置まで周波数が変化し,HIGH SPEEDスイッチで早送り操作もできるようになっていました。
2段のミューティングスイッチ,モノ/ステレオ自動切換・モノスイッチ,ハイブレンドスイッチも装備され,こ
れらもすべて軽い操作のタッチスイッチになっていました。また,電源スイッチも軽いタッチのマイクロスイ
ッチで,この電源スイッチを切った状態でもスタンバイの状態になっていて,メモリーが働いた状態を保つ
ようになっていました。
出力端子は固定(600mV)と可変(MAX1.5V)の2組が装備され,変わったところとして,ディスクリート
4ch放送に備えた検波出力端子(DET・OUT)も装備されていました。このあたりは4chに力を入れてい
たビクターらしいところでもありました。

JA-S20とJT-V20

以上のように,JT-V20は,ビクター初(国産初?)のシンセサイザーチューナーとして革新的な内容を持
ち,最上級機としてもしっかりした内容を持ったチューナーでした。シンセサイザーチューナーとしては1号
機ながらすでに操作性,受信性能等高い完成度を持っていたことは驚くべきことだと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



最先端をゆく技術の結晶
オール電子コントロール・
シンセサイザー・チューナー


◎発光ダイオードによる
 オール・デジタル表示
◎タッチ・チューニング,
 タッチ・コントロールの電子スイッチ
◎フロントエンドにはMOS型FET
◎音質と選択度を両立させた
 高性能IF回路
◎高信頼PLL・MPX回路
◎DET・OUT端子付き
◎2系統出力端子





●JT-V20規格●

受信周波数
76.0MHz〜89.9MHz
感度
1.8μV(IHF)
高調波歪率
0.15%(モノ),0.3%(ステレオ)
SN比
70dB
実効選択度
75dB
キャプチャーレシオ
1.0dB
イメージ妨害比 85dB
IF妨害比
90dB
スプリアス妨害比
95dB
ステレオ・セパレーション
45dB(1kHz)
AM抑圧比
60dB
サブキャリア抑圧比
65dB
ミューティング・レベル
8μV,16μV(2段)
アンテナ
300Ω(平衡)/75Ω(不平衡)
出力レベル
(400Hz・100%変調)
可変出力:1.5V以上
固定出力:0.6V
検波出力:0.1V
SCAキャリア抑圧比
70dB
消費電力
26.0W
電源
50/60Hz
寸法
240W×168H×400Dmm
重量
6.8kg


※本ページに掲載したJT-V20の写真,仕様表等は1974年11月の
 Victorのカタログよ り抜粋したもので,日本ビクター株式会社に著作
 権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等する
 ことは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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