![]()
Victor JP-S7
STEREO CONTROL AMPLIFIER ¥170,0001975年にビクターが発売したコントロールアンプ。ビクター独自の設計で低歪み,低ノイズを追求し
グラフィックイコライザー搭載で多彩な音質コントロール機能を持たせた個性的なコントロールアンプ
でした。パワーアンプJM-S7とペアを成すコントロールセンターとして個性的なデザインも目立って
いました。イコライザー回路は差動入力,A級プッシュプル出力の7石3段直結構成で,±59Vの高電圧動作
で,350mV(1kHz・RMS)におよぶ大許容入力と40dBのトータルゲインを得ていました。また,3
系統のPHONO入力切換えに機械接点を用いず,MOS FETとダイオードによる純電子スイッチを
採用していました。この純電子スイッチは,MOS型FETのゲート電圧を変えてソード,ドレイン間を
ON-OFFするもので,シールド線をスイッチまで引っ張ってゆく必要がなく,回路基板内で電子的に
処理でき,入力端子からイコライザー基板までのシールド線が皆無となり,機械接点の劣化,経時
変化がなく長期間にわたって性能が維持される利点がありました。ボリュームは4連スライド型で,入力部と出力バッファーアンプ部の双方で音量を絞り,残留ノイズを
低減する2連ボリュームを2個パラレルに連結した構成となっていました。スライド穴をサイドに設け
正面からはスライド穴が見えない大型フェーダーもデザイン上の大きな特徴となっていました。JP-S7の外観上も機能的にも大きな特徴が「SEA(Sound Effect Amplifier)」いわゆるグラフィ
ックイコライザー機能を搭載していることでした。ビクターは「SEA」の名称でグラフィックイコライザー
に力を入れ,優れた技術を見せていたブランドで,その面目躍如といった感じでした。JP-S7に搭載
された「SEA」は1オクターブ間隔の10素子のもので,新開発の「半導体L回路」を用いることで優れ
た性能を実現していました。この「半導体L回路」は,従来のグラフィックイコライザーと異なり,コンデ
ンサーとトランジスターの100%NFB回路の組み合わせで周波数特性を変化させるもので,コイルを
全く使わないためコア歪みや誘導ハムの心配がなく,許容入力も増大し,音質劣化の少ない多彩な
コントロールが実現していました。また,最高レンジの中心周波数を12kHz,16kHz,20kHzの3
段階に切換えることができ,最大12素子に匹敵するコントロール機能をもっていました。可変範囲は
±12dBで,2dBステップのクリック付スライドボリュームとなっていました。SEA自体のゲインは1で,
回路全体をスイッチでディフィートもできるようになっていました。SEA以外のフラットアンプ部は,低歪率で周波数特性に優れたインバーテッド・ダーリントン回路を主
体に構成されたもので,SEA同様にスイッチでディフィートすることもできるようになっていました。各
ステージは独立したブロック基板構成となっていました。
電源部は,レギュレーションがよく,リーケージフラックスの少ないカットコアトランスが搭載され,全ステー
ジへ定電圧回路を通して安定した電流を供給するようになっていました。
![]()
入出力は,PHONO入力3系統,TUNER,AUX2系統,TAPE2系統の入力と,出力として固定出力
のOUTPUT-1,2をもつなど,当時のアンプとしては豊富な入出力をもっていました。また,MM系統の
カートリッジに対しては,最適なロードを選べる負荷抵抗と負荷容量3段切換スイッチがフロントパネル下
部のポケット内に備えられていました。さらに,PHONO-2,3とAUX-1,2およびOUTPUT-2はリアパ
ネルのボリュームによってレベルアジャストが可能となっていました。
フロントパネル面のファンクションスイッチはSEA部を除いてすべてプッシュボタン,ボリューム,SEA等可
変させる部分はすべてスライド式という個性的な操作系を高精度なアルミダイキャストパネルに配したその
デザインは非常に個性的で目立つものでした。
![]()
以上のように,JP-S7は,ビクターらしさを前面に出した個性的なコントロールアンプでした。クリアで滑らかな
音と多彩な操作機能を両立させた印象に残るビクターの意欲作であったと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎電子スイッチによる
PHONO入力シールド線追放設計
◎高S/Nツイン・マスター・ボリューム
◎低歪率・広ダイナミックレンジの
半導体L回路10素子SEA
◎フラット・アンプのディフィート・スイッチ付き
◎カートリッジ・ロード3段切換えほか
充実した付属機構
◎ヘッドホンアンプ内蔵
◎カットコア・トランスの強力電源部
入力感度 | PHONO-1,2,3=2.0mV(2,3はレベルADJ付き)
TUNER=220mV 200mV(レベルADJ付き) TAPE-1,2(PLAY)=200mV |
入力インピーダンス | PHONO-1,2,3=33kΩ,47kΩ,100kΩ切換え
OFF,100PF,330PF切換え TUNER=70kΩ AUX-1,2=70kΩ TAPE-1,2(PLAY)=50kΩ |
最大許容入力 | PHONO-1,2,3=350mV(RMS・1kHz)
TUNER,AUX-1,2=35V |
定格出力 | OUTPUT-1,2=1.0V(2はレベルADJ付き)
TAPE-1,2(REC)=200mV |
出力インピーダンス | OUTPUT-1,2=4kΩ
TAPE-1,2(PIN)=80kΩ TAPE-1,2(DIN)=70kΩ |
全高調波歪率 | 5V出力時=0.05%(1kHz)
1V出力時=0.02%(1kHz) |
SN比(定格出力時) | PHONO-1,2,3=65dB(RMS)/75dB(IHF・Aショートサーキット)
TUNER=86dB(RMS)/96dB(IHF・Aショートサーキット) AUX-1,2=86dB(RMS)/96dB(IHF・Aショートサーキット) TAPE-1,2=86dB(RMS)/96dB(IHF・Aショートサーキット) |
周波数特性 | PHONO-1,2,3=RIAA偏差±0.3dB以内(20Hz〜20kHz)
TUNER=15Hz〜100kHz(+0,−1dB) AUX-1,2=15Hz〜100kHz(+0,−1dB) TAPE-1,2=15Hz〜100kHz(+0,−1dB) |
SEA中心周波数 | 32Hz,63Hz,125Hz,250Hz,500Hz,1kHz
2kHz,4kHz,8kHz,16kHz(12k/16k/20kHz切換え) |
SEA可変範囲 | ±12dB |
ディフィート回路 | SEAディフィートSW,14dBアンプ・ディフィートSW |
ラウドネス | 100Hz+8dB,10kHz+4dB(ボリューム−30dB時) |
ミューティング | −20dB |
フィルター | サブソニック=18Hz(−12dB/oct)
ハイカット=9kHz(−6dB/oct) |
ヘッドホン端子 | 適合負荷インピーダンス8〜2000Ω |
使用半導体 | 102トランジスター,28ダイオード,4IC |
定格消費電力 | 27W |
ACアウトレット | 電源SW連動2,非連動2 |
寸法 | 162.5H×578.0W×268.0Dmm |
重量 | 8.7kg |
※本ページに掲載したJP-S7の写真,仕様表等は1975年8月の
Victorのカタログより抜粋したもので,日本ビクター株式会社に著作
権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等す
ることは法律で禁じられていますのでご注意ください。
現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。