HMA-8300の写真
Lo-D HMA-8300
STEREO POWER AMPLIFIER ¥140,000

1976年にローディー(日立)が発売したパワーアンプ。比較的コンパクトな筐体ながら,ピークパワー
400W+400Wを実現していたアンプで,動作切換型アンプの走りともいえる画期的な1台でした。

HMA-8300の最大の特徴は,「ダイナハーモニー方式」にありました。これは,「2段差動増幅全段
直結4電源高能率純コンプリメンタリーOCL・E級ドライブ方式」というもので,通常±2電源でドライブ
されている出力段に,低圧電源,高圧電源の各々±2電源(合計4電源)を搭載し,小出力時には,
低圧電源が働き,大出力時には高圧電源が働くように,自動的に音楽レベルに合わせて,切り換え
るシステムで,ローディーは,これを通常B級アンプの3倍の効率を持つということで,「E級ドライブ方
式」と称していました。
この方式は,ローディーが音楽信号の解析を行い,実際に大出力を要するのは,音楽再生の中の約
1.4%であり,残りの98%あまりは小出力であるという結果から生まれたもので,音楽のピークに対
しては大出力,通常は小出力アンプとして働かせることで,大出力時は効率がいいが,小出力時には
効率が低くなるという大出力アンプの欠点を,高低2つの電源を切換えることで克服したという,当時と
しては画期的なものでした。この方式は,かなり後の1980年代に入って,トリオ・ケンウッドのDLD方
式や,パイオニアのプリメインアンプにもよく似た方式が採用された例が見られ,その意味で,非常に
先進的な技術であったといえると思います。ローディーは,この方式のために,100万分の1秒という
超高速スイッチング素子を開発し,スイッチング歪みの問題も回避していました。また,A級ドライバー
回路にはカレントミラー回路が採用され,低歪みを実現していました。

電源部は,約9kgの重量級電源トランスを搭載し,22,000μF/42V,2個と,10,000μF/80V
2個の計64,000μFのコンデンサを使用していました。また,このコンデンサをアルミ電極箔の数か
所から電極を引き出す多端子構造にすることなどで,高周波までの交流インピーダンスを下げていま
した。

機能としては,0.01W〜600W以上まで表示できる大型の外磁型ピークパワーメーターを搭載して
いました。また,アナログディスクのそりなどから発生する可聴帯域外の有害振幅をカットするサブソニ
ックフィルターを装備していました。

以上のように,HMA-8300は,効率よくかつ高音質で大出力アンプを実現した「ダイナハーモニー方
式」という画期的な技術を開発・搭載した名機でした。歪み感少なくダイナミックな音を実現していまし
た。
 

 
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 
 


Dynaharmony.ダイナハーモニー
(E級動作)新方式・・・
ローディーは,今日もオリジナルな
技術を磨いています。

ピークパワー400W+400W
全高調波歪率0.005%を実現
ダイナハーモニー方式パワーアンプ

◎ダイナハーモニー方式を採用して,ピークパワー
 400W+400Wを実現。
◎追従性,視認性にすぐれたピーク指示
 大形パワーメーター採用。
◎可聴帯域外の低域をカットする
 サブソニックフィルター
◎ワイドでダイナミックな音を生む大容量電源
◎音響用に十分配慮したスピーカーリレー


 
HMA-7300の写真
Lo-D HMA-7300
STEREO POWER AMPLIFIER ¥140,000

HMA-8300発売の翌年,1977年には,HMA-7300が登場しました。HMA-7300では,
HMA-8300で開発された「ダイナハーモニー方式」にA級動作プッシュプル回路を採用し,
「A級ダイナハーモニーアンプ」となっていました。

HMA-7300では,20W+20Wまでは,A級動作をし,それ以上では,E級ドライブとなって
定格100W+100W,ダイナミックパワーは300Wを実現していました。
A級ドライバー回路には,HMA-8300同様にカレントミラー回路が採用され,パワー段は,3
段ダーリントン構成となっていました。A級動作範囲では,パラレルプッシュプル出力段により
0.002%(20W出力時,1kHz)という低歪みを実現していました。

以上のように,HMA-7300は,もう一つの魅力を持った「ダイナハーモニー方式」のパワーア
ンプでした。
 
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 
 


Aクラスの妙なる音質と
ダイナハーモニーの豪快なパワーの
調和を。
A級ダイナハーモニーパワーアンプ。
◎全高調波ひずみ率
 0.002%(A級動作20W出力時1kHz)
 0.005%(E級動作50W出力時1kHz)
を達成した低ひずみ設計
◎追従性,視認性に優れた
 ピーク指示大形パワーメーター装備
◎高域特性まで考慮に入れた
 迫力ある音を生む強力電源部
◎安心な保護回路

●Specifications●


 
HMA-8300
HMA-7300
回路方式 2段差動増幅全段直結4電源
高能率純コンプリメンタリーOCL
(ダイナハーモニー方式)
2段差動増幅全段直結4電源
高能率純コンプリメンタリーOCL
(A級ダイナハーモニー方式)
ダイナミックパワー 800W(IHF8Ω) 300W(IHF8Ω)
実効出力(両ch駆動) 20Hz〜20kHz
 200W+200W(8Ω,THD0.1%)
 200W+200W(4Ω,THD0.1%)
1kHz
 220W+220W(8Ω,THD0.1%)
(20Hz〜20kHz)
 A級動作時:20W+20W(8Ω)
 E級動作時:100W+100W(8Ω)
全高調波歪率
(20Hz〜20kHz)
実効出力時  :0.1%以下
100W出力時:0.05%以下
1W出力時  :0.05%以下
実効出力時 :0.05%以下
50W出力時:0.005%以下
20W出力時:0.002%以下
混変調歪率   (70Hz:7kHz=4:1)
 実効出力時 :0.015%
 50W出力時:0.015%以下
 10W出力時:0.03%以下
出力帯域幅 5〜30,000Hz(IHF8Ω) 5Hz〜25,000Hz(IHF両ch駆動)
周波数特性 5〜80,000Hz+0,−1dB 5Hz〜100,000Hz+0,−1dB
入力感度/インピーダンス 1V/50kΩ 1V/50kΩ
負荷インピーダンス 4〜16Ω  
スピーカー   プッシュスイッチA/B
ダンピングファクター 50 (20Hz〜20kHz,8Ω)
100(1kHz,8Ω)

100(1kHz,8Ω)
チャンネルセパレーション 80dB(1kHz,8Ω)  
S/N(IHF,Aネットワーク) 110dB 110dB
使用半導体 IC2個
トランジスタ40石
ダイオード47個

トランジスタ51石
ダイオード71個
電源電圧 AC100V 50/60Hz AC100V 50/60Hz
定格消費電力 210W(電気用品取締法) 170W(電気用品取締法)
外形寸法 435W×182H×404Dmm 435W×182H×408Dmm
重量 24kg 24kg
※本ページに掲載したHMA-8300,HMA-7300の写真,仕様表等は1977年
 5月のLo-Dのカタログより抜粋したもので,日立家電販売株式会社に著作権が
 あります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で
 禁じられていますのでご注意ください。
 
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