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Lo-D HCA-9000
STEREO PRE AMPLIFIER ¥200,000ローディー(日立)が1977年に発売したプリアンプ。1976年頃より各メーカーの間で流行していた
薄型の筐体を持ったプリアンプで,あのHMA-9500,HMA-9500mkUとペアを想定したモデル
でした。薄型の筐体ですが,電源部,パーツなど贅を尽くした設計で,価格を超える内容を持った実
力機でした。HCA-9000は,プリアンプとして回路を最小限にシンプル化し,MCヘッドアンプ,イコライザアンプ,
フラットアンプという3ブロックで構成し,各回路ブロックを構成するパーツを厳選し,高品質なものを使
用することで,高音質を追求していました。また,各回路ブロックは,入力にカップリングコンデンサや
帰還回路の大容量コンデンサを持たないICL DC構成としていました。MCヘッドアンプは,初段に高gm低雑音のFETを4並列接続した差動回路とし,次段はカレントミラー
回路を持つ差動回路,終段はピュアコンプリメンタリーによるSEPP出力段という3段構成で,入力感
度250μVでSN比76dBという優れた高SN特性を実現していました。多様なMCカートリッジにマッチ
するよう2段階(100Ω,30Ω)の入力インピーダンス切換も装備していました。イコライザ回路は,RIAA素子に厳選されたメタライズドポリエステルフィルムコンデンサを使用し,±1%
誤差の金属被膜抵抗など高品質のパーツによって構成されたNF型で,RIAA偏差±0.2dB,±42V
の高電圧を負荷して最大出力20V以上という高いリニアリティを実現していました。
また,MM型カートリッジに対して,入力LOADの4段階(100Ω,22kΩ,47kΩ,100KΩ/100pF
200pF,300pF,400pF)切換を装備していました。
フラットアンプは,電源コンデンサーを2個バック・ツー・バックにして使用し,最大出力20V以上の高いリ
ニアリティを持っていました。HCA-9000では,コンデンサの使い方に,種類等には注意が払われ,特に,位相補償用コンデンサに
は,500V耐圧のスチロールコンデンサを使用し,音質的に特に影響の高い回路には,2個シリーズにし
て配置されていました。
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電源部に,薄型の筐体の中に高効率・低磁束漏れの大型のトロイダルトランスを搭載し,定電圧電源は
NF型として電源インピーダンスを下げ,すべてのアンプに各一組定電圧電源を使用する6系統独立給電
方式を採用していました。出力側にはさらに,大容量コンデンサと音質的に優れたメタライズドポリエステ
ルフィルムコンデンサを並列接続し,音質を向上させていました。以上のように,HMA-9500にも通じるような,シンプルかつパーツに贅を尽くした設計により,価格を超え
た中身を持ったプリアンプとなっていました。優美というより質実剛健な設計により,色づけの少ない歯切
れのよい音を持っていました。ブランドのせいか,あまり話題にはなりませんでしたが実力派の名機の1つ
だと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎高効率,低漏れ磁束のトロイダルトランス
◎6系統独立給電方式の採用
◎位相補償用に500(V)耐圧のスチロール
コンデンサを使用
◎全段ICL DCアンプ構成
◎入力感度250μVでSN比76dBの優れた値を
獲得したMCヘッドアンプ
◎イコライザー回路はRIAA偏差±0.2dB
◎高リニアリティのフラットアンプ
◎前面操作PHONOセレクター
回路方式 | MCヘッドアンプ ICL DC構成
イコライザーアンプ ICL DC構成NF形 フラットアンプ ICL DC構成 |
入力感度/インピーダンス | PHONO-1・2(MM) 2.5mV/100Ω,22kΩ,47kΩ,100KΩ
/100pF,200pF,300pF,400pF PHONO-1・2(MC) 0.25mV/30Ω,100Ω TUNER 150mV/47kΩ AUX 150mV/47kΩ TAPE-1・2 150mV/47kΩ |
出力レベル/インピーダンス | REC OUT 150mV/600Ω(最大20V以上)
OUT PUT 1V(最大20V以上)/30Ω(0〜−40dB) |
PHONO最大許容入力
(1kHz,RMS THD0.01%) |
PHONO-1・2(MM) 350mV
PHONO-1・2(MC) 35mV |
高調波ひずみ率
(20Hz〜20kHz) |
PHONO-1・2(MM) 0.005%以下(AT REC OUT LEVEL 1V)
0.005%以下(AT REC OUT LEVEL 4V) PHONO-1・2(MC) 0.01%以下(AT REC OUT LEVEL 1V) 0.005%以下(AT REC OUT LEVEL 4V) TUNER,AUX 0.005%以下(AT REC OUT LEVEL 1V) 0.003%以下(AT REC OUT LEVEL 4V) |
周波数特性 | PHONO-1・2 RIAA±0.2dB(20Hz〜20kHz)
TUNER,AUX +0,−1dB(5Hz〜100kHz) TAPE-1・2 +0,−1dB(5Hz〜100kHz) |
SN比
(IHF-Aネットワーク) |
PHONO-1・2(MM) 90dB(AT INPUT LEVEL 2.5mV)
PHONO-1・2(MC) 76dB(AT INPUT LEVEL 0.25mV) TUNER/AUX/TAPE-1・2 100dB(AT INPUT LEVEL 150mV) |
フィルター遮断特性
(PHONO入力のみ) |
6dB/oct(15Hz) |
混変調ひずみ率
(60Hz:7kHz=4:1) |
0.002%以下(AT OUT PUT LEVEL 7V) |
残留雑音 | 5μV以下 |
使用半導体 | FET×24,トランジスタ×81,ダイオード×61 |
電源 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 45W |
ACアウトレット | 2(電源スイッチ連動 150W MAX)
2(電源スイッチ非連動 400XW MAX) |
外形寸法 | 435W×80H×377Dmm |
重量 | 8.4kg |
※本ページに掲載したHCA-9000の写真,仕様表等は1980年5月のLo-Dのカタログ
より抜粋したもので,日立家電販売株式会社に著作権があります。したがって,これらの
写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
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