![]()
ONKYO Grand Scepter GS-1
SUPER HIGH FIDELITY HORN SPEALER SYSTEM
¥1,000,000(1本)オンキョーが1984年に発売した超高級スピーカーシステム。「グラン・セプター」の名の通り,オンキョーの
歴史の中でも最高級機で,超弩級のスピーカーシステムだったのがこのGS-1でした。GS-1の最大の特徴は,オールホーン型のシステムであることでした。GS-1でさらに特徴的であったのは
ホーン型の特徴である高能率をねらうのではなく,むしろ高能率化やワイドレンジ化を犠牲にしても,歪みの
徹底した低減を図っていたことでした。そのために,ホーンの形状・材質からコンプレッション・ドライバーの性
能まで徹底した解析が行われ,高純度な音が実現されていました。特に,GS-1では,「時間を正しく再生す
る」という考えのもと,すべての周波数帯域,特に低音域の時間遅れをなくすためのオールホーンシステムと
なっていました。全体のコンストラクションは,インシュレーターで低音再生ブロックと中高音再生ブロックに分けられた構造に
なっていました。さらに,低音ブロックは,低域ホーン部と低域コンプレッションドライバーユニット部からでき
ていました。低域ユニットは2つ搭載され,エンクロージャー内部は2つに分かれており,それぞれ40リットル
ずつの独立したバックキャビティをもっていました。中高音ブロックは音の軸を合わせるための傾き調整機構
を備えていました。
![]()
2本の低域ユニットは,公称口径28cmですが,実口径23cmのコーン型で,比較的口径が小さいユニットで
すが,これに直径10cmという大口径ボイスコイルを組み合わせ,マグネットにもこの当時入手可能であった
ものの中でも最大級の直径220mmのものを搭載し,Q=0.3という低い値に設定し,トランジェントを向上さ
せて低域の遅れをなくしていました。しかし,この結果低域の周波数特性は200Hz付近からだらだらと下が
りはじめる特性になるため,LR構成のパッシブ形イコライザによって低域特性を補正していました。この補償
回路を挿入することにより音圧レベルは12dB低下することになり,ウーファー部の本来の能率が100dB/m
なので,家庭用としてはやや低めの88dB/mということになっていました。また,イコライザをアンプ側に外付
けして100dB/mの高能率システムとしても使えるようになっていました。
![]()
![]()
この強力な駆動系によりウーファーのボイスコイルの動きは強力に制動されますが,さらに,振動板に対して
ホーンロードをかけて動きをコントロールし,トランジェントをさらに改善していました。つまりウーファー部のホー
ンは,能率ではなくトランジェント改善の効果を持たせたものとなっていました。
この低域ホーンは,ホーンによる歪み,「ホーン臭さ」といわれるものを取り除くために,多くの試作が繰り返さ
れて完成されたものでした。ホーン内部での音の反射の乱れによる歪み(オンキョーは「マルチパス・ゴースト
歪み」と呼んでいた)をなくすために,断面の面積変化,断面の形状の変化,側壁の傾斜の変化のすべてが
なめらかであるように設計され,スロート部の形状は円形で,それをなめらかに変化させて途中はスーパー楕
円,開口部は長方形という特殊な形状になっていました。さらに,ホーン自体の振動によって発生する時間遅
れの残響音(オンキョーでは「リバーブ歪み」と呼んでいた)をなくすために,FRPと鉄橋などに使われるダンプ
材と拘束材として鉄板などをサンドイッチ状に重ねるという「ダンプドFRP積層ホーン」という特殊な材質と構造
を採用していました。
![]()
中高域ユニットは,ボイスコイルからボビンまで一体成型した窒化チタン材の65mm径ダイヤフラムを搭載し,超精
密成型によりユニット全体として優れた特性を実現していました。中高域部のホーンも,低域部と同様に「ダンプド
FRP積層ホーン」を搭載していました。エンクロージャーは,3mmの米末単板6枚貼り合わせの上に鉄橋などに使われるダンプ材を貼り,さらに鉄板で拘
束するという構造をとり,エンクロージャーの不要な振動が桁違いに抑えられたというものでした。
中高域ブロック内にネットワークは分散配置され,また,端子板も取り付けられていました。この端子板での接続を
かえることによって,通常のネットワーク経由のシステムとして使用したり,専用の外部イコライザを使っての高能率
システムとして,あるいは,バイアンプドライブを行ったりと,多様な使いこなし方ができるようになっていました。
![]()
以上のように,グランセプターGS-1は,オンキョーが凝りに凝って作りだした野心作でした。巨大ヘッドホンという
声もありましたが,その歪み感のない音場感のしっかりした音は独自の世界を持っていたように思います。その優
秀性は海外でも評価され,発売後数年経ってから,フランスのハイファイ協会によるジョセフレオン賞を受賞したと
いう独自の個性を評価された名機でもありました。オンキョーを代表する1台といえると思います
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
「時間領域」に踏み込んで,
厳密にしかも音楽的に解析した,
究極の再生のための原器
オールホーンスピーカーシステム,
グランセプター。
●主要定格●
形式 | 2ウェイ・ホーン型スピーカーシステム |
使用ユニット | 低域:28cmユニット(W3060A)2本による
ツイン・ドライブ・ホーン 高域:ホーン型トゥイーター(TW502801A) |
インピーダンス | 8Ω |
最大入力 | 300W |
瞬間最大入力 | 2000W |
クロスオーバー周波数 | 800Hz |
出力音圧レベル | 88dB/W/m
100dB/W/m(外部イコライザ使用時) |
再生周波数範囲 | 20〜20,000Hz |
エンクロージャー内容積 | 40リッター×2 |
外形寸法 | 630W×1060H×615Dmm
(サランネット含む) |
重量 | 117kg(WOOFER部77kg,TWEETER部40kg) |
※本ページに掲載したGrandScepterの写真,仕様表等は1984年10月の
ONKYOのカタログより抜粋したもので,オンキョー株式会社に著作権があ
ります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律
で禁じられていますのでご注意ください。
現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。