FX-711の写真
Victor FX-711
FM/AM COMPUTER CONTROLLED TUNER
                         ¥49,800

1987年にビクターが発売したシンセサイザーチューナー。ビクターは,1974年,オーレックスのST-910
ほぼ同じ頃,国産初のシンセサイザーチューナーJT-V20を発売したブランドでした。これまでも多くのシンセ
サイザーチューナーを発売し,高いコストパフォーマンスを誇っていましたが,このFX-711は,それまでのビク
ター製チューナーとはデザインを大きく変え,手頃な価格ながら,多機能と高性能を両立したチューナーでした。

FX-711の大きな特徴は,コントロール系マイコンなどからのデジタルノイズのアナログ部への干渉を防ぐため
の対策を徹底してとったことでした。そのために,チューナーとしては初めて,11系統ものフォトカプラーによる
光伝送をデジタル部とアナログ部の信号伝送ラインに採用し,デジタルノイズのアナログ部への混入をシャット
アウトしていました。さらに,コントロール部,オプティカルリンク部,アナログ部を基板ごと独立分離し,特に,デ
ジタルノイズを発生するコントロール部基板はシールドが施され徹底して干渉を封じ込めていました。

FX-711の内部

また,音圧や外部振動による音質劣化を排除するために,筐体の振動対策も行われ,厚さ3mmもの頑丈なベ
ースをフロントエンド部と電源部の下に配置し,電源部の慣性質量のアップとフロントエンド部の剛性を高めて,
SN比を向上させていました。

フロントエンド部は5連型で,RF部,MIXER部には,デュアルゲートMOS FETを搭載し,優れたSN比と妨害
除去特性を実現していました。検波段には,高S/N,低歪みのPLL方式を採用していました。アナログ部は不
安定要素のコイルを持たないコイルレス化を図り,パーツの厳選が図られた高音質のアクティブLPF(ローパス・
フィルター)を搭載していました。また,マイコンの働きにより,アンテナ,DX/LOCAL,WIDE/NARROW,
STEREO/MONOなど各種受信状態を自動的に最適な状態に設定する「レセプション・サーボ」機能を搭載し
ていました。

ディスプレイ部も充実が図られ,受信周波数,受信モードなどの表示に加え,プリセットしたFM/AM局に,6文
字以内のアルファベットで数字・記号をインプットして表示できる「ブロードキャスティングメモリー」を採用し,放送
局名等を書き込めるようになっていました。また,FM/AMランダムに20局までプリセットできるようになっていま
した。電界強度の表示は高精度な1dBステップのデジタル表示となっていました。
アンテナ端子も多局化時代に対応して同軸2系統を装備していました。

選局機能も充実していました。10キーを使ってダイレクトに周波数を入力しての選局機能,FM/AMランダムに8
局までタイマーのON/OFFにより,次々と順に呼び出せる「タイマー予約対応プログラムメモリー」,
を5秒間ずつ次々に受信していく「プリセット・スキャン」,自動的に放送局受信する「オートチューニング」機能,自
動選局時の放送局検出レベルを5dB単位で調整できる「ストップレベル可変機能」,放送局を周波数順に自動的
にプリセット・メモリーする「オートメモリー機能」などが搭載されていました。

以上のように,FX-711は,価格を超えた充実した内容を持つ。コストパフォーマンスの高いチューナーでした。
デザイン的には,一見ケンウッドを思わせるものがありちょっとびっくりさせられましたが,音の方も明るく力強い
音を持った実力機でした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 
 


光の音を聴いた。
彼方まで
見わたせる景色の中で,
透明な感動に触れた。
◎デジタルノイズの混入をシャットアウト。
 無干渉思想を目指した光伝送方式。
◎ピュア伝送を追求した3ブロック構造。
◎振動による音質劣化を排除する,厚さ
 3mmの高剛性ツインベース。
◎FM多局化時代に対応。 RF相互変調
 特性に優れた高性能5連フロントエンド。
◎きめ細かな音質重視設計。
◎放送局名を,文字でインプットできる
 ブロードキャスティングメモリー。
◎FM/AMランダムに20局までプリセット。
 しかも10キーを使って一発選局。
◎2系統のコアキシャル・アンテナ入力
 端子装備。
◎タイマー予約対応,プログラムメモリー。
●FX-711 主な仕様●
 
 

●FMチューナー部●

受信周波数 76.0〜90.0MHz
実用感度 0.9μV/75Ω(10.3dBf)
50dBクワイティング感度 モノーラル 1.5μV/75Ω(14.8dBf)
ステレオ  22μV/75Ω(38.1dBf)
S/N
(85dBf入力時)
モノーラル 99dB(IHF-A)
ステレオ  91dB(IHF-A)
全高調波歪率 モノーラル 0.005%(1kHz)
ステレオ  0.009%(1kHz)
キャプチャーレシオ 1.0dB
実効選択度 75dB(±400kHz)NARROW
イメージ妨害比 120dB
IF妨害比 120dB
ステレオセパレーション 65dB(1kHz)
周波数特性 20〜15,000Hz±0.3dB

●AMチューナー部●

受信周波数 522〜1629kHz
実用感度 10μV(外部アンテナ)
250μV/m(ループアンテナ)
全高調波歪率 0.3%
S/N 52dB
選択度 60dB(±9kHz)

●電源部・その他●

電源電圧 AC100V(50,60Hz共用)
消費電力 14W(電気用品取締法基準)
最大外形寸法 435W×101H×295Dmm
重量 5.2kg
※本ページに掲載したFX-711の写真,仕様表等は1988年11月の
 Victorのカタログより抜粋したもので,日本ビクター株式会社に著作権
 があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等すること
 は法律で禁じられていますのでご注意ください。 
 

★メニューにもどる       
 
 
 

★チューナーのページにもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp