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YAMAHA FX-1
NATURAL SOUND SPEAKER SYSTEM ¥585,0001977年にヤマハが発売したフロア型スピーカーシステム。本格的なフロア型システムとして正面から
ヤマハが取り組んで作り上げた力作で,ヤマハらしさがあふれた高級機として高い評価を得た1台でし
た。ウーファーには,38cm口径のJA-3805を新開発し,搭載していました。このJA-3805は,コーン紙
にコルゲーション付のコニカルタイプ,ノンプレスコーンを採用し,ウレタン製ロールエッジで支えた構造
としていました。ボイスコイルは,銅リボン線を耐熱性のNOMEXボビンに18mm幅に巻いた口径100
mmの大口径ロングボイスコイルとしていました。また,ボイスコイルネック部には,亜鉛の補強リングを
装着し,ボイスコイルボビンのたわみによる歪みを抑えていました。磁気回路は内磁型で,90φ×40φ
×40mm・重量1.5kgの大型アルニコマグネットを採用し,ダークタイル鋳鉄製の壺型ヨークに収めた
構造となっていました。このような磁気回路の重量は6.7kgにも達し,大型のウーファーに強力な磁気
制動をかけていました。
この強力なウーファーを支えるフレームはアルミ合金製・2.65kgものがっしりとしたものが採用され,
ユニット全体での重量は9.5kgにも達していました。
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スコーカーには,ベリリウムダイヤフラムを採用したリアローディング型エクスポネンシャルホーンユニット
JA-6602を搭載していました。このJA-6602は,NS-1000Mのベリリウムドーム形ユニットで開発
された電子ビーム真空蒸着法ならではの,直径66.6mmという大口径のものを採用し,硬くて軽いベリ
リウムの採用により,厚さわずか75μ,自重わずか700mgという非常に軽量なダイヤフラムとなってい
ました。エッジには,再生帯域での直線性を確保できる硬質ジュラルミン製のタンジェンシャルエッジを
採用していました。ボイスコイルには,軽量なアルミリボン線を使用していました。磁気回路は,85φ×
45φ×45Hの大型アルニコマグネットを使用し,ダクタイル鋳鉄製のポットヨークや純鉄製のアウターポ
ール,センターポールを持つ壺型磁気回路となっていました。また,センターポール外周には銀リングを
装着して,ユニットの低インピーダンス化を図っていました。イコライザ,スローとには,ムクの亜鉛から削
り出した高精度のものが使用され,バックカバーには,13mm厚のアルミ合金製の強固なものが使用さ
れるなど,贅沢で強固な作りのスコーカーのドライバユニットは,自重8.7kgに達するものでした。
ホーンは,肉厚8mmのアルミ合金製のエクスポネンシャルホーンで,全長273mm,開口径103mmの
ショートカット・ストレートタイプとなっていました。カットオフ周波数は200Hzで,ドライバーユニットに十分
な制動をかけていました。また,指向性の改善のため,スラントプレートタイプのアコースティック・レンズ
を採用していました。
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トゥイーターには,ベリリウムダイヤフラムを使用したスフェリカルホーン型ユニットJA-4202が搭載され
ていました。ダイヤフラムは,振動板の面積が広くとれ実効質量を小さくとれるリング型とされ,外径50
mm,内径30mmのV字型で,ベリリウムをヤマハ自慢の電子ビーム真空蒸着法で50μ厚,200mgの
軽量に仕上げたものでした。ボイスコイルには軽量のアルミリボン線を使用し,42φの大口径ながら,わ
ずか200mg,振動板の総重量としても500mg以下の軽量なものとなっていました。磁気回路は,45φ
×10φ×30mm・重量0.49kgのアルニコマグネットを採用し,他のユニット同様,ダクタイル鋳鉄製ヨ
ーク,純鉄製アウターポール,センターポールを使用した壺型磁気回路としていました。ホーンは,指向
特性をよくするために,特殊なスフェリカル(Spherica=球状)ホーンを使用し,開口部を29φと小口径
化していました。ホーンそのものはスコーカー同様にエクスポネンシャルホーンでショートカットタイプとな
っていました。
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ネットワークも贅を尽くしたものが搭載されていました。ウーファー回路には大型ケイ素鋼板によるE型コア
を使用し,中・高域用には空芯コイルタイプ低歪率インダクタを使用していました。そして,コンデンサには
低誘導損失・低歪率のMM型コンデンサを採用していました。また,インダクタやコンデンサをモールドして
振動による悪影響を防止していました。
レベルコントローラーのアッテネーターには,新開発の無誘導連続可変型を使用し,耐久性と音質を向上
させていました。レベルコントロール回路はこの新開発のアッテネーターとステップダウン式を併用するこ
とで音質を改善し,低域にはウーファーのインダクタンスを補償する定抵抗回路を採用していました。
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キャビネットは,内容積144リットルの大型のバスレフ・フロア型で,バッフル板には25mm厚のダグラス
ファー合板,他には25mm厚高密度パーティクルボードを使用した堅固なもので,キャビネットの重量は46
kg,システム全体では76kgに達するものとなっていました。仕上げは,黒艶消しポリエステルウレタン塗
装仕上げで,ブラジリアンローズウッドのアクセントラインをつけた風格あるものとなっていました。以上のように,FX-1は,ヤマハが海外製のフロア型システムに負けない本格的フロア型システムを作り
上げようとした熱意がこもった,ユニットを始めとして贅沢な作りの高性能スピーカーでした。ダイナミックで
新鮮さを感じるくらいクリアな音は,ヤマハならではの個性を主張していたように思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎プログレッシブなオーディオを求めた
新開発38cmウーファー
◎ベリリウムダイヤフラム採用の
リアローディングホーンスコーカ
■Beダイヤフラムによる軽量振動系と
アルニコマグネットによる強力な磁気回路
■アルミ合金製エクスポネンシャルショートカット
ストレートホーン
◎ベリリウムリングダイヤフラム採用
スフェリカルホーンツイータ
◎贅沢な素材を用いた歪の少ない
ネットワーク・レベルコントローラ
◎堅固で美しいキャビネット
型式 | 3ウェイバスレフフロア型 |
使用ユニット | 低音JA-3805:38cmコーン型
中音JA-6602:6.6cmBeドーム振動板ショートホーン型 高音JA-4202:5cmBeリング振動板スフェリカルホーン型 |
定格入力 | (Weighted White Noise)100W RMS |
最大入力 | 200W |
インピーダンス | 8Ω |
出力音圧レベル | 94dB/W・m |
最大出力音圧レベル | 117dB/1・m at200W |
再生周波数帯域 | 30Hz〜20kHz |
クロスオーバー周波数 | 低音−中音:800Hz,12dB/oct
中音−高音:7.5kHz,12dB/oct(中音),18dB/oct(高音) |
レベルコントロール | 中,高音連続可変型 |
外装仕上げ | 黒艶消しポリエステルウレタン塗装 |
外形寸法 | 600W×880H×540Dmm |
重量 | 76kg |
●JA-3805仕様●
型式 | 38cmコーン型 |
公称インピーダンス | 8Ω |
再生周波数帯域 | 20〜2000Hz |
使用周波数帯域 | 20〜800Hz |
定格入力 | 100W RMS(単体,専用BOX入り) |
最大入力 | 200W(単体,専用BOX入り) |
出力音圧レベル | 94dB/W・m |
最大出力音圧 | 117dB/W・m(200W) |
外形寸法 | 421φ×384φ×152H |
重量 | 9.5kg |
ボイスコイル口径 | 100mm |
バイスコイル線 | 銅リボン |
マグネット | アルニコ1.5kg |
磁束密度 | 12,500ガウス |
総磁束 | 275,000マックスウェル |
振動板 | 322φストレートコーン |
エッジ | ウレタンロール |
fo | 20Hz(単体) |
●JA-6602仕様●
型式 | ホーン型 |
公称インピーダンス | 8Ω |
再生周波数帯域 | 400〜12000Hz |
使用周波数帯域 | 800〜7500Hz |
定格入力 | 10W RMS(単体) |
最大入力 | 20W(単体) |
出力音圧レベル | 107dB/W・m |
最大出力音圧 | 120dB/W・m(20W) |
外形寸法 | ドライバー:165φ×140.7H
ホーン:158φ×131×273L |
重量 | 11.5kg |
ボイスコイル口径 | 66.6mm |
バイスコイル線 | アルミリボン |
マグネット | アルニコ1.34kg |
磁束密度 | 18,500ガウス |
総磁束 | 146,000マックスウェル |
振動板 | 66.6φベリリウムドーム |
エッジ | アルミ合金タンジェンシャル |
ホーンカットオフ周波数 | 200Hz |
ホーン形状 | エクスポネンシャル・ストレート |
●JA-4202仕様●
型式 | ホーン型 |
公称インピーダンス | 8Ω |
再生周波数帯域 | 4,000〜20,000Hz |
使用周波数帯域 | 7,500〜20,000Hz |
定格入力 | 10W RMS(単体) |
最大入力 | 20W(単体) |
出力音圧レベル | 107dB/W・m |
最大出力音圧 | 120dB/W・m(20W) |
外形寸法 | 148φ×121×80H |
重量 | 3kg |
ボイスコイル口径 | 42.6mm |
バイスコイル線 | アルミリボン |
マグネット | アルニコ0.49kg |
磁束密度 | 18,500ガウス |
総磁束 | 74,500マックスウェル |
振動板 | 50φ〜30φベリリウムV字型リング |
ホーンカットオフ周波数 | 1.44kHz |
ホーン形状 | エクスポネンシャル・スフェリカル |
※本ページに掲載したFX-1の写真,仕様表等は1978年2月の
YAMAHAのカタログより抜粋したもので,日本楽器製造株式
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